17283.jpg
「暴力の根絶に努める」柔道指導で失神、全柔連が被害者と和解 相談対応など改善約束
2021年02月09日 14時02分

指導中の事故をめぐり、福岡市の親子が全柔連(全日本柔道連盟・東京都文京区、山下泰裕会長)を訴えていた裁判で、両者が2月9日、東京地裁で和解した。父親らが同日、会見で明らかにした。

全柔連が暴力の根絶に努めること、コンプライアンスホットラインについての関係規則を1年以内に改正すること、通報を受けたとき、双方の意見を十分に聴取すること。改善に向けた取り組みの内容をウェブサイトに掲載するなどして、透明性を持たせることなどが盛り込まれた。慰謝料330万円の請求は放棄した。

「今回の和解はスタートラインにも立っていない。全柔連が1年後に対応策を決めてからが本当のスタートだと思っている。今度こそ、暴力を根絶できるように実効性のある対策を全柔連にもとめたい」

指導中の事故をめぐり、福岡市の親子が全柔連(全日本柔道連盟・東京都文京区、山下泰裕会長)を訴えていた裁判で、両者が2月9日、東京地裁で和解した。父親らが同日、会見で明らかにした。

全柔連が暴力の根絶に努めること、コンプライアンスホットラインについての関係規則を1年以内に改正すること、通報を受けたとき、双方の意見を十分に聴取すること。改善に向けた取り組みの内容をウェブサイトに掲載するなどして、透明性を持たせることなどが盛り込まれた。慰謝料330万円の請求は放棄した。

「今回の和解はスタートラインにも立っていない。全柔連が1年後に対応策を決めてからが本当のスタートだと思っている。今度こそ、暴力を根絶できるように実効性のある対策を全柔連にもとめたい」

●中学時代、指導者からの技で2度失神

全柔連を訴えていたのは、福岡市の石阪正雄さん(50)と勇樹さん(20)の親子。

勇樹さんが中学2年生(13歳)だった2014年10月、福岡市の柔道場で指導者からかけられた「片羽絞め」という技で、2度も失神させられて「迷走神経性失神及び前頸部擦過傷」との診断を受けた。失神のショックで柔道をやめざるをえなかったという。

正雄さんは、この柔道場と住所をともにする福岡県柔道協会に相談するも、対応を受けられなかったことから、全柔連の内部通報制度「コンプライアンスホットライン」に通報。全柔連は、親子や指導者への聞き取りなど十分な調査をしないまま、県柔道協会からの報告を受けて「問題とすべき事実は確認できない」とした。

親子は、2019年4月19日、全柔連を相手取り、計330万円の慰謝料をもとめて東京地裁に裁判を起こしていた。提訴会見では、通報した被害者と加害者に聞き取りすらしない全柔連のホットラインの姿勢を批判した。

●違法性はすでに認められている

この訴訟の前に、親子は指導者らに損害賠償請求訴訟を起こしている。

福岡地裁は、技を使ったことの違法性を認め、指導者に慰謝料の支払いを命じた(福岡高裁は控訴・附帯控訴を棄却する判決)。

2018年6月、指導者の最高裁への上告申し立てが却下されたことで、4万4000円の支払いを命じる判決が確定している。

●和解の内容

会見では、和解の内容が発表されるとともに、和解条項の評価は、実際に全柔連がどのように変革されるかで決まることが強調された。

代理人の宮島繁成弁護士は「地方の中学生だとしてもかろんじず、ひとつひとつの通報に丁寧に耳を傾け、中立な態度で取り組むべき」とした。

正雄さんは「いろいろな事件がありながら、組織として変わってこない歴史をもつ全柔連という巨大な敵に立ち向かえた」と話す。

とはいえ、和解によって、全柔連が変わることには期待を寄せている。

改善がみられない場合は、申し入れなどを起こすことも考えている。

●息子からのLINE

和解の成立をLINEで報告すると、勇樹さんから「長い間お疲れ様。十分満足している」と返答があった。

「和解か判決を求めるかの岐路で、息子には戦ってほしいという気持ちも見えていた。このLINEがその通りなのかは…本当は悔しかったんじゃないかという思いもある。父親としては」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る