長野県佐久市のスキー場で2月23日、スキーをしていた小学生の女の子が別のスキーヤーと衝突し、足を骨折するけがをした。
長野放送の報道によると、小学生とぶつかったスキーヤーはその場から立ち去ったという。
多くの老若男女が訪れるスキー場ではスキーやスノーボードの技術は人それぞれで、中にはスピードを落とすことができないまま人同士や木にぶつかる事故が起こる。最悪のケースでは命を落とすことも。
今回ニュースになった長野の事故のように、スキー中の相手に衝突したのにその場を立ち去った場合、どのような法的な問題が生じるのか。齋藤裕弁護士に聞いた。
●損害賠償を負う可能性
ーースキー中に他人にぶつかったのにその場から離れた場合、どのような問題が生じる?
今回の長野県佐久市のケースは事故の状況や詳細がわからないので、仮定の話を交えながら説明します。
もしぶつかった相手が木陰で休んでいるような場合、通常は、ぶつけてしまった人に前方左右に注意する義務を怠った過失があると考えられます。
赤の他人同士であれば、通常、一方がけがをしていても他方が救助する法的義務はありません。しかし、ある人の過失等によりけがを負わせた場合、加害者は過失行為という先行行為により、救助義務を負う場合があると考えられます。
たとえば、東京地裁平成3年2月19日判決は、過失によって他の船を沈没させた船の側が「危険を作出した先行行為者としてより強い救助義務を負う」との判断を示しています。
なので、もし今回の長野県の事故で、小学生の女の子と衝突した方にも過失行為という先行行為による救助義務が認められ、それにも関わらず救助しないことによって小学生の女の子に損害が発生した場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
●刑事責任を問われる可能性も
ーー民事上の責任だけではなく、救護せずに立ち去る行為がなんらかの犯罪にあたる可能性もある?
けがを負わせた行為自体は業務上過失致傷罪にあたる可能性があります。
しかし、それとは別に、けがを負わせたことでその人が「保護責任者」とされ、小学生の女の子を置き去りにしたことが「遺棄」とされ、保護責任者遺棄罪に該当する可能性もあります(刑法218条)。