17403.jpg
「社内恋愛禁止」違反がバレて懲戒処分を受けた! こんなルールは人権侵害では?
2018年05月17日 09時32分

社内で交際していた女性と別れてから数日後、会社から、社内恋愛禁止規定に反するとして懲戒処分を受けたーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、会社が従業員の恋愛についてまで口出しをすることを批判する相談が寄せられた。

この会社では、職場に悪影響が出ることを理由に、就業規則で社内恋愛が禁止されているという。相談者は、この就業規則が不合理だとして、懲戒処分の撤回を望んでいる。

就業規則で社内恋愛禁止を定めることは法的に問題ないのか。寺岡幸吉弁護士に聞いた。

社内で交際していた女性と別れてから数日後、会社から、社内恋愛禁止規定に反するとして懲戒処分を受けたーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、会社が従業員の恋愛についてまで口出しをすることを批判する相談が寄せられた。

この会社では、職場に悪影響が出ることを理由に、就業規則で社内恋愛が禁止されているという。相談者は、この就業規則が不合理だとして、懲戒処分の撤回を望んでいる。

就業規則で社内恋愛禁止を定めることは法的に問題ないのか。寺岡幸吉弁護士に聞いた。

●一概に社内恋愛を規制することは合理的ではない

おそらく弁護士によっても見解が異なると思いますが、就業規則で社内恋愛禁止を定めることはできないと考えます。恋愛の自由は、人間が人間らしい生活を送るために不可欠なものであって、憲法13条や24条によって保障される基本的人権だと考えられます。

もちろん、合理的な理由があれば、基本的人権も制限されることはあります。しかし、一概に社内恋愛を規制することは、合理的ではありません。

企業が就業規則によって従業員の基本的人権を制限できるのは、その行為が、企業の経営に悪影響を及ぼす場合に限られます。一般的に社内恋愛が常に、企業の経営に悪影響を及ぼすとは言えませんし、悪影響を及ぼす可能性が高いとも言えません。したがって、一般的に社内恋愛を禁止することはできないと考えます。

●就業時間中の密会などは禁止できる

もっとも、社内恋愛自体ではなく、企業の秩序を乱すなど、企業の経営に悪影響を及ぼす行為を禁止することはできます。例えば、就業時間中に仕事をしないで密会する行為は、職務専念義務に反しますから、当然禁止できます。また、休憩時間中であっても、2人の行為が環境型のセクハラ(周囲に不快感を与える行為)に該当するような場合は同様に禁止できます。

懲戒処分ができるかどうかについても、上記と同様に考えられます。社内恋愛自体を懲戒処分事由とすることはできませんが、その2人が行った行為が、企業の経営に悪影響を及ぼすようなものであれば、懲戒処分も認められます。

ただし、懲戒処分を行う場合には、その懲戒処分事由を就業規則で定めることが必要です。また、対象行為と処分の内容とが、バランスがとれていることも必要です。

●同じ職場の未成年と不倫、解雇が有効とされた事例も

懲戒処分が認められなかった裁判例には、「素行不良で職場の風紀・秩序を乱した」ことを懲戒事由としている会社において、社内での不倫は、「素行不良」には該当するが、問題となった事案においては、「職場の風紀・秩序を乱した」とまでは言えないとして、会社の行った解雇を無効とした「繁機工設備事件」(旭川地裁平成元年12月27日)があります。

一方で、懲戒処分が認められた裁判例には、観光バスの妻子ある運転手が、同じ職場の未成年の女性バスガイドと長期間にわたり不倫関係をもち、バスガイドを妊娠させて退職せざるを得ない状況にしたという行為が、懲戒事由である「著しく風紀・秩序を乱して会社の対面を汚し、損害を与えた」ことに該当するとして、解雇を有効とした「長野電鉄事件」(東京高裁昭和41年7月30日)があります。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る