17522.jpg
「非嫡出子」の相続格差は違憲か? 弁護士が注目する「判例変更」の可能性
2013年07月10日 19時41分

結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする——。明治時代から続いてきたこの民法の規定が、見直されるかもしれない。この規定の合憲性が争点となっている裁判の「特別抗告審」の弁論が7月10日、最高裁大法廷で開かれた。大法廷は主に憲法判断や判例変更などを行う場合に開かれる。

民法900条4号では、遺言などがない場合、結婚をしていない男女の間に生まれた子(非嫡出子)に認められる遺産相続の額は、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分とされている。この規定が憲法14条で保障される「法の下の平等」に反して、無効なのではないかというのが争点だ。

「非嫡出子の相続分を制限するのは不当な差別だ」という声は以前から上がっている。もし違憲判断が下れば、国会は法改正を迫られることになるだろう。それだけに最高裁の判断に注目が集まっている。この訴訟で注目すべきポイントを堀井亜生弁護士に聞いた。

●背景には「法律婚の尊重」という考えがあった

「今回の訴訟では、『非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1にする』という法律(民法900条4号但し書き前段)が、非嫡出子を不合理に差別するものとして違憲であると、最高裁が認めるかどうかという点が注目されます。また、違憲とした場合、どういった理由付けをするかもポイントでしょう」

堀井弁護士によると、嫡出子と非嫡出子で相続分に差をつけるこの規定は「『法律婚の尊重』という目的でつくられた」という。つまり、相続分を半分にすることで、非嫡出子が減るという考え方だ。

「今まで最高裁が合憲としてきたのも、この『法律婚の尊重・保護』という考えが背景にあります。しかし、法律がつくられた当時の状況とは、家族そのもののあり方や国民の意識など、背景事情が大きく変化しています。

また、諸外国においても非嫡出子の差別をなくす方向で立法が整備されいて、その存在意義を疑問視する声が高まっています」

●「近いうちに判例変更がなされるのでは」と注目されている

そういった批判がありながら、これまで見直しは検討されていないのだろうか?

「最高裁においても、何度もこの論点について判断が下されてきました。1995年に大法廷で合憲の判断が下された後も、小法廷において合憲判断が続いています。

一方で、合憲とする裁判官3名に対して違憲と判断する裁判官が2名と、違憲の判断に転じる状況まであと一歩のところまできています。そのため、近いうちに判例変更がなされるのではないかと注目されているのです」

では、仮に最高裁が違憲とする場合、その根拠はどうなる?

「たとえば、子どもは親を選ぶことができないので、親の行為の不利益を子が負うべきではないといった点があげられるでしょう」

相続分を半分にすることで非嫡出子が減る――。このような考えに対して、「直接的な因果関係がない」「婚外子(非嫡出子)の社会的差別につながっている」という批判がある中、最高裁はどう判断するのか。その結論は今秋にも示される見込みだ。

(弁護士ドットコムニュース)

結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする——。明治時代から続いてきたこの民法の規定が、見直されるかもしれない。この規定の合憲性が争点となっている裁判の「特別抗告審」の弁論が7月10日、最高裁大法廷で開かれた。大法廷は主に憲法判断や判例変更などを行う場合に開かれる。

民法900条4号では、遺言などがない場合、結婚をしていない男女の間に生まれた子(非嫡出子)に認められる遺産相続の額は、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分とされている。この規定が憲法14条で保障される「法の下の平等」に反して、無効なのではないかというのが争点だ。

「非嫡出子の相続分を制限するのは不当な差別だ」という声は以前から上がっている。もし違憲判断が下れば、国会は法改正を迫られることになるだろう。それだけに最高裁の判断に注目が集まっている。この訴訟で注目すべきポイントを堀井亜生弁護士に聞いた。

●背景には「法律婚の尊重」という考えがあった

「今回の訴訟では、『非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1にする』という法律(民法900条4号但し書き前段)が、非嫡出子を不合理に差別するものとして違憲であると、最高裁が認めるかどうかという点が注目されます。また、違憲とした場合、どういった理由付けをするかもポイントでしょう」

堀井弁護士によると、嫡出子と非嫡出子で相続分に差をつけるこの規定は「『法律婚の尊重』という目的でつくられた」という。つまり、相続分を半分にすることで、非嫡出子が減るという考え方だ。

「今まで最高裁が合憲としてきたのも、この『法律婚の尊重・保護』という考えが背景にあります。しかし、法律がつくられた当時の状況とは、家族そのもののあり方や国民の意識など、背景事情が大きく変化しています。

また、諸外国においても非嫡出子の差別をなくす方向で立法が整備されいて、その存在意義を疑問視する声が高まっています」

●「近いうちに判例変更がなされるのでは」と注目されている

そういった批判がありながら、これまで見直しは検討されていないのだろうか?

「最高裁においても、何度もこの論点について判断が下されてきました。1995年に大法廷で合憲の判断が下された後も、小法廷において合憲判断が続いています。

一方で、合憲とする裁判官3名に対して違憲と判断する裁判官が2名と、違憲の判断に転じる状況まであと一歩のところまできています。そのため、近いうちに判例変更がなされるのではないかと注目されているのです」

では、仮に最高裁が違憲とする場合、その根拠はどうなる?

「たとえば、子どもは親を選ぶことができないので、親の行為の不利益を子が負うべきではないといった点があげられるでしょう」

相続分を半分にすることで非嫡出子が減る――。このような考えに対して、「直接的な因果関係がない」「婚外子(非嫡出子)の社会的差別につながっている」という批判がある中、最高裁はどう判断するのか。その結論は今秋にも示される見込みだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る