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「運転手の顔にモザイクかけて」バス会社の呼びかけ話題、鉄道とバス「撮影・投稿」のルールは?
2021年07月02日 09時47分
#撮り鉄

運転中の電車、バスの運転手に肖像権やプライバシー権はあるのだろうか。

兵庫県神戸市などを走る路線バス「山陽バス」(神戸市垂水区)の公式ツイッターが、バスの撮影にあたり、運転手らの顔にモザイクなどの加工を求めたことがインターネット上で話題になっている。

鉄道に詳しい弁護士は、映り込み写真の投稿に配慮すべきと説くが、過剰な配慮には反対の考えを示す。

運転中の電車、バスの運転手に肖像権やプライバシー権はあるのだろうか。

兵庫県神戸市などを走る路線バス「山陽バス」(神戸市垂水区)の公式ツイッターが、バスの撮影にあたり、運転手らの顔にモザイクなどの加工を求めたことがインターネット上で話題になっている。

鉄道に詳しい弁護士は、映り込み写真の投稿に配慮すべきと説くが、過剰な配慮には反対の考えを示す。

●SNS掲載は大歓迎でも「個人特定は避けて」

話題になったのは、山陽バスが6月11日に投稿したツイートだ。

〈当社のバスを撮影していただき、SNSへ掲載していただくのは大歓迎です。1点だけお願いを申し上げます。運転手・乗客のプライバシー保護のため、モザイク・スタンプ等で個人が特定できないように加工をお願いいたします。〉

この投稿に対して、ネット上では、「中には撮られたくない乗務員さんもいらっしゃるので細心の注意を払わなければ」など概ね好意的な反応がみられる。

さらには「SNSに投稿する時は運転士・乗客・一般車のドライバーやナンバー・通行人へのぼかし・モザイク処理は必要ですね。撮りバス界隈だけでなく、撮り鉄界隈にも広まって欲しい内容」との声もあがった。

バスや電車を撮影する際、運転手の顔をネット上にアップすると、どのような問題があるのだろう。鉄道に造詣の深い甲本晃啓弁護士に聞いた。

●運転手を撮影・投稿しても、「権利侵害」認められる可能性は低い

――バス運転中の運転手を撮影し、SNS等に投稿すると、どんな問題がありますか

プライバシー権や肖像権が問題になりえます。ただし、現在の裁判実務では、公道で運行中のバス全体を沿道から撮影した際に、運転手の顔がわかる写真をネットや雑誌で公開した場合、民事裁判で権利侵害が認められる可能性は低いと考えられます。

公の場所では、自身の行動が衆目に晒されることをある程度容認しているので、プライバシー侵害をストレートに認めることは難しいでしょう。

ただし、肖像権については、人の顔を大写しにして雑誌に掲載したという事例で、違法と判断した裁判例があります。異論はあると思いますが、写真の一部としてたまたま映り込んだというレベルではなく、中心的な被写体として人の肖像を利用するような場合には、許諾を取っておくのが安全といえそうです。

たとえば、鉄道の女性乗務員の顔や全身を無断で撮影のうえ、本人の同意を得ない公開については、違法性が認められる可能性はあると考えます。

●「撮りバス」と「撮り鉄」は何が違う?

――電車の運転手の撮影でも同様のことが言えますか

バスでも電車でも同じです。

ただ、「撮られたくない」といった話は、鉄道関係ではそれほど耳にしません。

「撮り鉄」を趣味とする人は鉄道車両にだけ興味があるので、構図として遠くから編成全体を広く映すことが多く、運転台付近をアップで撮影することは稀だからだと思います。

また、バスもそうですが、運転台内部は暗いうえに、ガラスに景色が反射して内部は見えにくいです。

運転台は暗く、反射もあって運転手の顔は見えない(撮影:甲本晃啓)

一応、ある鉄道関連の写真投稿サイトでは、運転手の顔が映っている写真に目線を入れるという配慮をされているようです。

とはいえ、撮影した写真のネット公開にあたっては、法的紛争に巻き込まれないためにも、運行会社やそこで働く人に嫌な気持ちを与えないためにも、バス会社がお願いしているような配慮をお勧めします。

●加工のない写真は時代を読み取る貴重な資料にもなる

さて、ここから先は個人的な見解になります。

プライバシー権と肖像権は法律で定められている権利ではなく、裁判例でも一般論として個 人の顔のネット公開について基準が示されていません。

ですから、いろいろな考え方があってよい問題です。海外では肖像権を法律で定めている国もあるので、日本でも時代とともに制限が厳しくなるのは自然な流れと思います。ただし、撮影と公開は分けて考えるべきだと思います。

公の場所でのバスや鉄道車両を被写体とする撮影自体は、迷惑にならないか注意していれば、特に制限をされないと考えてよく、写真は時代を読み取る貴重な資料になるものなので、ありのままを残すべきだと思います。

他方で、それをネットで公開する際は、映り込んでしまう人に配慮をしたほうがよいでしょう。重要なのは、様々な意見や考え方があることを前提に、撮影・公開においても、他人に嫌な気持ちを与えないことです。

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