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「大学進学に反対」「私大は認めない」離婚した父が、養育費の支払いを拒否 そんな理屈は通用する?
2024年05月05日 09時07分
#養育費 #大学進学

離婚する際、子どもの養育費をいつまで支払うかで、夫と妻の意見が分かれることがあります。原則として、子どもが経済的、社会的に自立するまでが支払い期間となりますが、子どもが大学に進学したいという希望を持っていた場合は、どうすればよいのでしょうか。

今、大学への進学率は男女とも5割を超えており、弁護士ドットコムには、大学進学にまつわる養育費の増額について、支払う側からの「悩み」が多く寄せられています。

離婚協議中というある男性からは、「妻からは22歳の3月まで支払ってほしいと言われていますが、大学進学に同意していません。20歳までの支払いまでにできますか」という相談が寄せられています。

また、別の男性は、離婚時に養育費は20歳まで、大学に進学する場合は入学金などを支払うと取り決めていたそうです。しかし、男性は「私立大学への進学は認めていないのに、事後報告で私立大学に進学したと聞きました。それでも払う必要はありますか?」といいます。

果たして、このような父親の「言い分」は通じるのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。

離婚する際、子どもの養育費をいつまで支払うかで、夫と妻の意見が分かれることがあります。原則として、子どもが経済的、社会的に自立するまでが支払い期間となりますが、子どもが大学に進学したいという希望を持っていた場合は、どうすればよいのでしょうか。

今、大学への進学率は男女とも5割を超えており、弁護士ドットコムには、大学進学にまつわる養育費の増額について、支払う側からの「悩み」が多く寄せられています。

離婚協議中というある男性からは、「妻からは22歳の3月まで支払ってほしいと言われていますが、大学進学に同意していません。20歳までの支払いまでにできますか」という相談が寄せられています。

また、別の男性は、離婚時に養育費は20歳まで、大学に進学する場合は入学金などを支払うと取り決めていたそうです。しかし、男性は「私立大学への進学は認めていないのに、事後報告で私立大学に進学したと聞きました。それでも払う必要はありますか?」といいます。

果たして、このような父親の「言い分」は通じるのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。

●大学進学に同意していなかった場合も認められる可能性

——相談にあるように、養育費を支払う側の父親が大学進学に反対している場合、養育費の支払いを22歳の3月まで延長してもらうことは難しいのでしょうか。

養育費をいつまで支払う義務があるかについて、法律上一律な定めはありませんが、「未成熟子」すなわち自己の資産又は労力で生活できる能力を身につけるまでの子について支払う義務があるとされています。

「未成熟子」とは、必ずしも「未成年者」と同じではありません。民法の改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが、一般的には20歳までとして取り決められることが多いです。

子どもが大学に進学した場合、親に収入がある程度あり、親が大学を卒業しているような家庭であれば、その卒業までを未成熟子として扱い、大学進学に同意していなかったとしても養育費の請求が認められる可能性があります。

●離婚協議の時にしっかりと希望を伝えることが大事

——では、大学の入学金は請求できるのでしょうか。

入学金などの大学進学に必要な諸費用については、子どもの大学進学が決まったからといって当然にその負担が請求できるわけではありません。請求できる場合としては、事前に承諾、同意をしていた場合、養育費を支払う側の親が高収入の場合、離婚時に既に大学進学が決まっていた場合などがあり得ます。

ご相談のケースは、大学に進学する場合は入学金などを支払うと取り決めていたとのことですので、入学金などを支払う義務が生じていますが、私立大学の入学金まで支払う義務があるかどうかは、合意時にあくまで公立大学が想定されていたのか、支払う側の収入などの事情により判断されます。

このように、養育費の負担については、離婚時に明示的に合意されていた内容のみならず、その背景事情(大学進学が想定されていたか、その場合は私立か公立のどちらが想定されていたか、子どもの意思がどうだったかなど)、離婚後に生じた事情なども考慮されます。

つまり、離婚時に取り決めた養育費以外の負担をどう判断するかについては、どうしても不確実な部分があり、全てを予め明確に取り決めておくのは現実的ではありません。しかし、ご自身にとってどうしても明確にしておきたい条件がある場合には、離婚協議の段階でしっかりと相手に明示し、協議書などの条項で明示的に定めておくようにしましょう。

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