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「離婚後も出ていかない」元配偶者の居座り問題、解決スピード化へ 最高裁決定
2020年09月08日 10時01分

離婚した元夫が所有している建物に、元妻が住み続けているという状況の中、元夫が財産分与の家事審判を申し立てたという事案で、「財産分与しないものと判断された建物でも、家事審判で明け渡しを命じることができる」とする決定が、このほど最高裁であった。

財産分与の家事審判では、金銭の支払いや建物の引き渡しなどを命じることができるが、「財産分与しないものと判断とされた財産」についても同様に命じることができるかについては、先例がなかった。

最高裁第一小法廷(木澤克之裁判長)は「命令できる」との判断を示し、審理を東京高裁に差し戻した。決定は8月6日付。

離婚の際、財産分与をめぐり争われることも少なくないが、今回の決定は今後の財産分与にどのような影響を与えるのか。家事事件に詳しい川見未華弁護士に聞いた。

離婚した元夫が所有している建物に、元妻が住み続けているという状況の中、元夫が財産分与の家事審判を申し立てたという事案で、「財産分与しないものと判断された建物でも、家事審判で明け渡しを命じることができる」とする決定が、このほど最高裁であった。

財産分与の家事審判では、金銭の支払いや建物の引き渡しなどを命じることができるが、「財産分与しないものと判断とされた財産」についても同様に命じることができるかについては、先例がなかった。

最高裁第一小法廷(木澤克之裁判長)は「命令できる」との判断を示し、審理を東京高裁に差し戻した。決定は8月6日付。

離婚の際、財産分与をめぐり争われることも少なくないが、今回の決定は今後の財産分与にどのような影響を与えるのか。家事事件に詳しい川見未華弁護士に聞いた。

●高裁と最高裁で判断が分かれた

ーー何が問題となっているのでしょうか

「家事事件手続法154条2項4号は、財産分与に関する処分の審判をするにあたっては、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができると定めています。

たとえば、不動産を夫から妻に分与する旨の判断がなされたとしても、単に『分与する』だけでは実効性がありません。そこで、財産分与の審判の際、夫に対して『不動産の明渡し』や、『不動産名義の移転登記手続』を命じることができるのです。

他方で、財産分与の結果、不動産を夫名義のままとする場合には、不動産を妻に分与するよう命じる必要がありません。

このように、財産分与の結果として、夫名義の不動産を妻に分与しないと判断された場合でも、当該不動産に居住している妻に対して、財産分与の審判の際、『不動産の明渡し』を命じることができるか(家事事件手続法154条2項4号を適用できるか)が問題となったのが、本事案です」

ーーどのような判断がなされたのでしょうか

「この問題について、原審(東京高裁決定)は、財産分与審判において、不動産を妻に分与しないと判断した場合、妻に対する『不動産の明渡し』を命じることはできず、夫は、別途民事訴訟の手続きにおいて、妻に対し、所有権に基づく不動産明渡しを請求すべきと判断しました(家事事件手続法154条2項4号を適用せず)。

これに対して、最高裁は、不動産を妻に分与しないと判断した場合であっても、財産分与審判の内容に沿った権利関係を実現するために必要と認めるときは、財産分与審判の際、妻に対して、「不動産の明渡し」を命じることができると判断しました(家事事件手続法154条2項4号を適用)」

●「離婚訴訟における財産分与」にも影響か

ーー今回の決定はどのように評価すべきでしょうか

「最高裁決定は、迂遠な手続を避け、財産分与審判の実効性を確保するという家事事件手続法154条2項4号の趣旨を重視したものであり、妥当といえるでしょう。

今回の決定を受け、今後、財産分与審判において、一回的解決に資する判断が出されることが期待されます。

なお、本事案は離婚後の財産分与審判に関する判断でしたが、離婚訴訟において財産分与を附帯して申し立てた場合でも、裁判所は、財産分与の処分の裁判をするにあたり、金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができるとされています(人事訴訟法32条2項)。

今回の最高裁決定は、離婚訴訟における財産分与の判断についても、影響を与えるものと考えられます」

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