17955.jpg
民間企業が「直虎」商標登録、特許庁は浜松市の異議認めず…なぜなのか?
2017年04月09日 09時19分

NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で一躍、知名度が高まった歴史上の人物、井伊直虎。この「直虎」を商標登録した2社に対して、直虎にゆかりがある浜松市と浜松商工会議所が商標登録取り消しを求め、異議申し立てをしていたが、特許庁は3月27日、これを退ける決定をした。2社は2016年4月、食品などの名称として「直虎」を商標登録していた。

浜松市役所の観光シティプロモーション課は、「(商標取り消しが)認められなかったことは残念だが、今後、無効審判を請求する予定はない。直虎の名を使わず、すでに商標登録している『直虎 ゆかりの地 浜松』のロゴマークなどを使い、商品開発を工夫してやっていきたい」と話していた。

今回の特許庁の判断を、知的財産に詳しい弁護士はどう評価するのだろうか。また今後、どのような影響があるのだろうか。齋藤理央弁護士に聞いた。

NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で一躍、知名度が高まった歴史上の人物、井伊直虎。この「直虎」を商標登録した2社に対して、直虎にゆかりがある浜松市と浜松商工会議所が商標登録取り消しを求め、異議申し立てをしていたが、特許庁は3月27日、これを退ける決定をした。2社は2016年4月、食品などの名称として「直虎」を商標登録していた。

浜松市役所の観光シティプロモーション課は、「(商標取り消しが)認められなかったことは残念だが、今後、無効審判を請求する予定はない。直虎の名を使わず、すでに商標登録している『直虎 ゆかりの地 浜松』のロゴマークなどを使い、商品開発を工夫してやっていきたい」と話していた。

今回の特許庁の判断を、知的財産に詳しい弁護士はどう評価するのだろうか。また今後、どのような影響があるのだろうか。齋藤理央弁護士に聞いた。

●なぜ認められなかったのか?

「今回の事例を『他人の…氏名…を含む商標』の商標登録を禁じた商標法4条1項8号違反の問題とお考えの方もいるかもしれません。しかし、8号にいう『他人』は現存している人物を意味します。

今回のように現存しない歴史上の人物の名称は、商標法4条1項7号に規定された『公序良俗』に反する商標か否かの問題となります」

なぜ、歴史上の人物の名称に「公序良俗」が関係してくるのか。

「7号について、特許庁は商標審査基準を、次のように定めています(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/16_4-1-7.pdf )

歴史上の人物については、この中で『周知・著名な歴史上の人物名であって、当該人物に関連する公益的な施策に便乗し、その遂行を阻害する等公共の利益を損なうおそれがあると判断される場合』、7号に違反するので、商標登録を行わないとしています。

しかし、本件の判断結果は『公序良俗』に反するという判断に踏み込む以前のもののようです。つまり、そもそも『直虎』という名称の歴史上の人物は複数おり、出願は大河ドラマの放映前でもあったことから、『直虎』という標章は、井伊直虎だけを指すものではないと判断されたようです」

一方で、誰しもが知るような歴史上の人物であれば、商標登録は認められにくい傾向があるそうだ。

●過去の裁判例では

齋藤弁護士によれば、歴史上の人物の商標登録について争われた事例は他にもある。

「歴史上の人物の商標登録について問題となった事件として、知的財産高等裁判所で争われた葛飾北斎事件があります。

『北斎』という書道文字と、図形を組み合わせた標章について、商標登録することが7号に違反しないか争われましたが、結果的に知的財産高等裁判所は、登録を認めています。その理由として、『何らかの不正の目的がある』とまで言えないことが指摘されています」

今回の特許庁の判断は、今後どのような影響があるのだろうか。

「浜松市や浜松市商工会議所は、井伊直虎のキャラクターやロゴマークなどの利用を地元企業に推奨していくようであり、そうした方策をとれば(「直虎」を使わなくても)今後に大きな影響は生じないのではないかと考えられます。また、より懸念を小さいものにするため今後双方で何らかの協議を行っていくことは検討しても良いのかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る