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飛行機内で「マスク拒否」の男性、皇居でもトラブル…施設側はどこまで対応できる?
2021年01月24日 09時02分

ピーチ・アビエーション機内でマスク着用を拒否してトラブルとなり、逮捕・起訴された男性。報道によると、昨年夏ごろ、皇居・東御苑(東京・千代田区)の「三の丸尚蔵館」を訪れた際にも、マスク着用を拒んでトラブルになっていたという。

この男性は1月20日、旅客機の運航を妨害したなどとして、威力業務妨害と傷害、航空法違反の疑いで大阪府警に逮捕されて、22日に起訴された。また、昨年11月にも長野県内のホテルでマスク着用をめぐり宿泊拒否のトラブルとなり、警察が出動する事態になっていた。

ピーチ機内でのトラブルでは、目的地とは別の空港に臨時着陸したのち、男性を飛行機から降ろすという対応がとられた。その際、機長から飛行機内の安全阻害行為をやめるよう命じられたが、それに従わなかったため、航空法違反でも起訴されることとなったようだ。

マスク着用をめぐるトラブルは、民間の施設でも起こりうる。その際、施設側はマスク着用を拒否する客に対して、利用拒否や退去要求ができるのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。

ピーチ・アビエーション機内でマスク着用を拒否してトラブルとなり、逮捕・起訴された男性。報道によると、昨年夏ごろ、皇居・東御苑(東京・千代田区)の「三の丸尚蔵館」を訪れた際にも、マスク着用を拒んでトラブルになっていたという。

この男性は1月20日、旅客機の運航を妨害したなどとして、威力業務妨害と傷害、航空法違反の疑いで大阪府警に逮捕されて、22日に起訴された。また、昨年11月にも長野県内のホテルでマスク着用をめぐり宿泊拒否のトラブルとなり、警察が出動する事態になっていた。

ピーチ機内でのトラブルでは、目的地とは別の空港に臨時着陸したのち、男性を飛行機から降ろすという対応がとられた。その際、機長から飛行機内の安全阻害行為をやめるよう命じられたが、それに従わなかったため、航空法違反でも起訴されることとなったようだ。

マスク着用をめぐるトラブルは、民間の施設でも起こりうる。その際、施設側はマスク着用を拒否する客に対して、利用拒否や退去要求ができるのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。

●原則として「利用拒否」「退去要求」は施設側の権利

——マスク着用をめぐるトラブルが発生した際、施設側は利用拒否や退去要求ができますか。

誰を施設内に入れるか入れないかは、不合理な差別に当たらない限り、基本的に施設側の自由です。

ブランディングなど経営戦略上の判断も尊重されるでしょうし、施設の従業員やほかの利用者の健康・安全などに配慮するために一定の条件で利用を拒否することが社会的に求められる場合もあるでしょう。

「ゴルフ場やレストランのドレスコード」などは前者の例でしょうし、「新型コロナウイルス感染拡大防止」を理由にした入店拒否は後者の例といえます。

——どのような権限に基づいてできるのでしょうか。

法的な根拠でいえば、営業の自由や、建物の所有権・施設管理権、労働者に対する雇用契約上の安全配慮義務などが挙げられます。

——今回は、皇居・東御苑の「三の丸尚蔵館」でトラブルとなったようです。

トラブルの詳細はわかりませんが、マスクが感染予防に一定の効果が認められるという検証結果も発表されていることも踏まえると、仮にマスク着用を拒否する人の利用を拒んだとしても「不合理な差別」にはあたらないと考えます。

一方、マスクをしていない日本人は利用させて、マスクをしない外国人の利用は拒否するといった取り扱いの場合には、国籍による差別として、違法・損害賠償の対象になる可能性があります。

——法的に利用拒否などが可能でも、強制的に排除することはできないのでしょうか。

権利侵害を受けた人が司法手続によらず実力で権利回復を図る「自力救済」は、原則として認められていないため、退去を何度求めても立ち去らない場合には、通常は警察などに頼ることになります。

ただ、本人あるいは第三者の生命・身体等に危機が迫っている状況で、必要最低限の実力で強制的に退去させた場合には、法的な責任を問われる可能性は低いと考えます(正当防衛等)。

——退去に応じない人は何か法的責任を問われるのでしょうか。

要求を受けたにもかかわらず、人の住居等から退去しない場合、不退去罪(刑法130条、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が成立して、刑事責任が問われる可能性があります。

また、退去に従わなかったことによって、施設側に何らかの損害が生じた場合には、不法行為に基づく損害賠償という民事責任が発生しえます(民法709条)。

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