妻の不倫相手が逃げた──。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、妻は同じ会社の同僚と不倫関係にありましたが、発覚すると相手は即座に退職。唯一の連絡手段だった携帯も解約して連絡が取れなくなってしまったといいます。
相談者は、勤務先に住所を尋ねましたが、本人の希望で教えられないと断られました。しかし、どうにか住所を突き止め、慰謝料請求の裁判を起こしたいと考えているそうです。
では、このように慰謝料を請求したい相手と連絡が取れなくなった場合、住所を調べることは可能なのでしょうか。また、相手が誠意ある対応を拒み続けた場合、慰謝料額に影響するのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●弁護士照会で特定できる場合も
──相談者のケースのように、連絡が取れなくなってしまった場合、どうやって住所を調べればよいのでしょうか。
相手の携帯番号がわかっている場合、正当な目的があれば、弁護士会照会(弁護士法23条の2)を通じて、携帯電話会社に契約者の住所を調べることが考えられます。
携帯を解約済みでも、照会可能な場合があるので、弁護士に相談するのが現実的です。
そのほか、メールやSNSのアカウントを通じて、相手に住所を確認する方法や、費用はかかりますが、興信所に依頼して住所を調べる方法もあります。
●誠意ある対応しなかったら慰謝料増額の可能性
──不倫相手が誠意ある対応を拒んだ場合、慰謝料は増額されるのでしょうか。
一般論として、不貞行為に基づく慰謝料は、不貞に関する事情(期間、回数、頻度)や、婚姻関係に関する事情(婚姻期間、別居・離婚に至ったかどうか)など、さまざまな事情を総合的に考慮して決まります。その一つに「不貞後の事情や態度」も含まれます。
そのため、不倫相手が連絡を絶ち、誠意ある対応を拒み続けた場合、慰謝料の増額が認められる可能性はあるといえます。
●訴訟を無視しすると「欠席裁判」に
──住所がわかって訴訟を起こしても、相手が無視したらどうなるのでしょうか。
まず、相手が訴状を受け取らなかった場合、裁判所は相談者(原告)に送達先や送達方法を再検討するよう求めます。最終的に送達できない場合、「公示送達」という手続きを取ることもあります。
裁判所が公示送達を認めた場合、実際に送達しなくても、裁判所の掲示板に書面を掲示し、2週間が経過すれば、法律上は相手に送達されたとみなされます。
また、訴状が届いたにもかかわらず、相手(被告)が裁判を欠席し、答弁書も提出しない場合、裁判所は「被告が訴状記載の事実を争わない」とみなして(民事訴訟法159条1項)、原告の主張をそのまま認める「欠席判決」を下すことになります。
つまり、無視し続ければ、被告は自ら不利な判決を受けるリスクを負うことになるのです。したがって、訴状を受け取ったら、必ず対応することが重要です。