1943.jpg
佐賀新聞の「押し紙」を認定 元販売店主が勝訴、賠償金1070万円 佐賀地裁判決
2020年05月15日 11時55分
#押し紙

新聞販売店の元店主が、配達に必要な部数を大きく超える仕入れを強制される「押し紙」被害にあったとして、佐賀新聞に約1億1500万円を求めていた裁判の判決が5月15日、佐賀地裁であった。

達野ゆき裁判長は、佐賀新聞に優越的な地位を利用して、新聞の仕入れを強制させる独占禁止法違反(押し紙)があったことを認め、約1070万円の支払いを命じた。押し紙を認める判決はめずらしい。

訴えていたのは、吉野ヶ里販売店の元店主・寺崎昭博さん。同販売店は本来2500部弱あれば済むところ、最大で500部を超える新聞を余分に仕入れていた。

新聞販売店の元店主が、配達に必要な部数を大きく超える仕入れを強制される「押し紙」被害にあったとして、佐賀新聞に約1億1500万円を求めていた裁判の判決が5月15日、佐賀地裁であった。

達野ゆき裁判長は、佐賀新聞に優越的な地位を利用して、新聞の仕入れを強制させる独占禁止法違反(押し紙)があったことを認め、約1070万円の支払いを命じた。押し紙を認める判決はめずらしい。

訴えていたのは、吉野ヶ里販売店の元店主・寺崎昭博さん。同販売店は本来2500部弱あれば済むところ、最大で500部を超える新聞を余分に仕入れていた。

●「販売店の経済的利益を犠牲にして、売上げを増加」

判決は、佐賀新聞が2009年~2016年にかけて、各販売店に確認することなく、計約1万1000部の供給をやめたにもかかわらず、配送に支障がなかったことなどに着目。

販売店に、配達されることがない大量の「残紙」があることを認識しながら、時流に逆行するような営業目標を指示したなどとして、押し紙を認定した。

「被告(編注:佐賀新聞)の原告(編注:販売店)に対する新聞の供給行為には、独禁法違反(押し紙)があったと認められる」

「販売店の経済的利益を犠牲にして、自身の売上げを増加させるとともに、ABC部数を増加させることによって広告収入を増加させることを意図したものと認められる。これは、社会通念上許容されない行為であり、原告(編注:販売店)の権利を侵害するものであるから、不法行為に該当する」

請求の1割程度となった賠償金については、原告の販売店側は、2016年7月の提訴時を消滅時効の起点として、店を継いだ2009年4月からの押し紙代を請求していたが、裁判所は提訴時から過去3年分に限定した。

さらに、押し紙分で得た「折り込み広告料」(約1130万円)や新聞社からの「補助金」(実際には0円だった)が損益相殺の対象になるとも判断している。

また、原告販売店の廃業は、両親がつくった3000万円の負債によるところが大きく、押し紙が経営を圧迫するほど大量だったと認めるに足る根拠はないなどとして、逸失利益や慰謝料は認めなかった。

●「実配数とその2%程度の予備紙以外は押し紙」

判決を受け、販売店側の弁護団は以下のような談話を発表した。

「新聞販売店経営に必要な部数は実配数とその2%程度の予備紙で足り、それを超える部数は独禁法の定める押し紙であり違法であるとの判断を示した点は、裁判所が独禁法の押し紙の公権的解釈規準を示したもので高く評価されます」

●佐賀新聞「控訴する」

佐賀新聞は取材に対し、控訴する方針であると明かした。

「判決には事実誤認がある。一部とはいえ、損害賠償が認められたのは遺憾であり、容認できない。判決内容を精査し、控訴する」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る