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五輪直前、路上生活者も発生か…ホテルから一斉に追い出された120人の行方
2021年07月16日 15時21分

新型コロナ禍による生活困窮者のため、東京都は一時的な宿泊場所としてホテルを提供している。しかし、4回目の緊急事態宣言下で、この事業(TOKYOチャレンジネット)を利用していた約120人がこのほど、滞在期限を迎え、一斉にホテルから出た。

支援団体が7月16日、ホームレスなど住居喪失者の住まい確保を緊急要請したところ、東京都はホテルを出た人が求めれば「必要に応じて対応する」と再度の受け入れも可能と回答したという。それでも、支援団体は警戒を強めている。

新型コロナ禍による生活困窮者のため、東京都は一時的な宿泊場所としてホテルを提供している。しかし、4回目の緊急事態宣言下で、この事業(TOKYOチャレンジネット)を利用していた約120人がこのほど、滞在期限を迎え、一斉にホテルから出た。

支援団体が7月16日、ホームレスなど住居喪失者の住まい確保を緊急要請したところ、東京都はホテルを出た人が求めれば「必要に応じて対応する」と再度の受け入れも可能と回答したという。それでも、支援団体は警戒を強めている。

●緊急事態宣言発出の日、120人がホテルから出て行った

東京都では、住居を失った人に、生活保護の申請時に1カ月程度利用できるホテル(協議済みホテル)を提供するほか、「TOKYOチャレンジネット」経由で一時宿泊場所のビジネスホテルを提供している。

だが、困窮者支援にあたる「反貧困ネットワーク」などによれば、チャレンジネットの利用者が7月12日、滞在期限を迎え、一斉にホテルから退去した。

一方、生活保護申請者に提供される「協議済みホテル」も、五輪関係者用におさえられているため、利用者の滞在期間が1カ月に満たないとしても、開幕前日(7月22日)より前に退去を求められる懸念があるという。

●「困窮者を受け入れるホテルは十分確保している」(東京都)

この事態を懸念していた10の支援団体は、7月7日、東京都に「東京五輪・パラ五輪期間にかかる住居喪失者支援の緊急要望書」を提出していた。

7月16日、再度の要請を終えた団体が、都からの回答を報告した。主な要請内容と回答は以下の通りだ。

なお、ホテルを出た約120人のうち、4カ月の一時利用住宅に移ったのが約20人。生活保護への移行予定が十数人。残り約90人は、友人宅やネットカフェに滞在するほか、わからない人がほとんどだという。

(要望1)五輪の無観客開催によって空室が見込まれるビジネスホテルも、東京都が交渉をして協議済みホテルとすること。

(回答1)協議済みホテルはすでに十分確保してある。五輪関係者の予約によって退去予定の人が次に向かうだけのキャパシティはある

(要望2)すでにホテルを追い出されてしまった「チャレンジネット」利用者が、再度宿泊可能とするようにすること。

(回答2)出た人が再度来た場合は、改めて対応する

(要望3)一時宿泊場所から生活保護に切り替えると、宿泊場所が切り替わる問題が生じるため、保護決定を待つ間に一時宿泊場所での滞在を可能とするなどの運用をおこなうこと。

(回答3)チャレンジネット利用者が生活保護を申請した場合、そのまま一時宿泊場所に滞在してもよい

●ホテルに泊まれるかどうかは別問題

東京都の回答からは、ホテル利用に支障がないような印象を受けるが、反貧困ネット事務局長の瀬戸大作さんは、都の方針と、実際にホテルを利用できるかどうかは別問題だとする。

「協議済みホテルの利用者は約50人です。23区のうち、生活保護申請者にホテルを紹介しているのは10もありません。だいたいが無料低額宿泊所を紹介されます」

相部屋の多い無料低額宿泊所への宿泊は、新型コロナ感染の観点からは問題があるとする。相部屋を敬遠して、路上生活を選択せざるをえない人も少なくない。

ホテル退去後、NPO法人TENOHASHI(東京・池袋)が実施している炊き出しに、3人の退去者がやってきたという。

今回の「ホテルの十分な確保」という都の回答は、無観客開催がなければ、実現していなかったかもしれないと指摘した。

支援団体は、ホテル利用をすすめる運用がなされているか、引き続きチェックは必要だと強調した。

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