人気お笑いコンビ「千鳥」のノブさんがインターネット番組で、韓国旅行の際に100万円を元手に3日間カジノに興じ、6万円の利益を得たと発言した。
9月21日放送のABEMA「チャンスの時間」によると、ノブさんは過去の番組企画で使い切るはずだった軍資金を手に韓国を再訪。「ほぼ寝ず」に3日間カジノに没頭し、最終的に黒字で終えたという。
一方、日本では、プロ野球選手やテレビ局社員らがオンラインカジノで摘発される事例が相次いでいる。では、海外で日本人がカジノに興じることは法的に問題ないのだろうか。
元警察官僚で、刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。
●海外カジノは合法、ただしオンラインカジノは違法
──オンラインカジノで摘発されているが、海外カジノは法的に問題ないのでしょうか
海外のカジノでお金を賭ける行為は、その国で合法とされていれば適法です。
日本の刑法は基本的に「属地主義」を採用しており、日本国内や日本国籍の船舶や航空機内でのみ適用されます(刑法1条)。したがって、日本人が海外でカジノをしても日本刑法は原則として適用されません。
例外的に、放火罪や殺人罪などの重大犯については、国外での行為についても日本刑法が適用される場合があります(属人主義・刑法3条)。しかし、賭博罪(刑法185条)はその対象に含まれません。
このため、韓国のようにカジノが合法な国であれば、日本人がカジノをしても違法ではありません。
──では、なぜオンラインカジノは違法になるのでしょうか
日本国内から海外のオンラインカジノにアクセスして賭博すれば、日本刑法が適用されます。賭博の申込みという「実行行為」が国内でおこなわれているからです。
賭博罪は「挙動犯」であり、金銭を賭けて勝負を開始した時点で「実行の着手」があるとして犯罪が成立します。つまり、勝ち負けに関係なく、開始した瞬間に犯罪が成立するのです。
最近の裁判例でも、賭博の相手方が具体的に誰であるかを認識予見している必要もないとされていることから(福岡高裁令和5年7月4日判決)、なんとなく海外のオンラインカジノで遊んだだけでも賭博罪が成立します。
●海外カジノの利益は課税対象に
──海外カジノで勝った場合、その利益は課税されますか
はい、課税対象になります。各国で広く採用されている「全世界所得課税」というものがあります。これはその所得が国内で得たものか外国で得たものかを問わず、全世界で得た所得すべてをその人の居住地(日本)で課税対象とする考え方です。
海外カジノでの利益は「一時所得」に分類され、年間で50万円を超える場合は確定申告が必要です。
なお、カジノのある国で税金を納めた場合、日本で二重に税金を納める必要はなく、確定申告で「外国税額控除」を受けることができます。