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埼玉・東京またぐ「秋津駅」の謎、「エスカレーター止まって乗れ条例」は適用される?
2021年09月29日 16時43分

埼玉県で10月1日から、エスカレーターでは歩かず、立ち止まって利用することを求める条例が施行される。違反しても罰則はないが、全国初となる取り組みに注目が集まっている。

当たり前だが、全国初なので隣接する東京都などにはこのような決まりはない。もしも建物が埼玉との県境の上にあったら、ややこしいことになりそうだ。

実はそんな悩ましいスポットがある。西武池袋線の秋津駅だ。同駅のホームは東村山市(東京)、清瀬市(東京)、所沢市(埼玉)の3市にまたがっている。同駅のエスカレーターに埼玉の条例は適用されるのだろうか。

埼玉県で10月1日から、エスカレーターでは歩かず、立ち止まって利用することを求める条例が施行される。違反しても罰則はないが、全国初となる取り組みに注目が集まっている。

当たり前だが、全国初なので隣接する東京都などにはこのような決まりはない。もしも建物が埼玉との県境の上にあったら、ややこしいことになりそうだ。

実はそんな悩ましいスポットがある。西武池袋線の秋津駅だ。同駅のホームは東村山市(東京)、清瀬市(東京)、所沢市(埼玉)の3市にまたがっている。同駅のエスカレーターに埼玉の条例は適用されるのだろうか。

●境界にある理由、西武にもわからず

秋津駅は1917年に開業した。百年以上も前のことのため、なぜ境界にあるかは、西武鉄道にも資料が残っていないという。

ただ、『東村山市史 2 通史編 下巻』によると、もともと秋津駅の建設予定はなく、住民の熱心な誘致活動があったという。1924年刊行の『武蔵野:武蔵野線沿道案内』(武蔵野社編)の秋津駅の項目には「以前は交通不便だったが、武蔵野線の開通で漸く完備した」旨が書かれている。

ちなみに現在「武蔵野線」というとJRの路線だが、当時は武蔵野鉄道という私鉄があった。上記の「武蔵野線」は、武蔵野鉄道を指す。1945年に旧西武鉄道などと合併して、現在の西武鉄道になっている。

●駅の住所自体は東村山市

では、秋津駅のエスカレーターでは歩いてはいけないのだろうか。西武鉄道によると、同駅のホームこそ各市にまたがっているが、駅の住所自体は東京都東村山市となっており、新条例の対象外になっているという。

ただ、鉄道会社としては条例の対象外だからといって、エスカレーターでの歩行を良しとは考えていない。以前から立ち止まって利用するよう音声ガイダンスを流しているという。

実際、西武などの鉄道会社や空港、商業施設、自治体などは毎年連携して、エスカレーターでは立ち止まろうというキャンペーンを展開している。今年も10月1日から1カ月間、埼玉県に限らずポスター掲示などがあるという。

また、秋津駅には駅ナカ商業施設「エミオ秋津」があるが、こちらにはそもそもエスカレーターがない。管理する西武プロパティーズによると、こちらも住所は東京都のため、仮にエスカレーターがあっても条例の対象外だという。

なお、埼玉県の条例では、施設管理者の義務として、「利用者に対し、立ち止まった状態でエスカレーターを利用すべきことを周知しなければならない」(6条)とあり、西武鉄道、西武プロパティーズともに埼玉県内の施設については告知に力を入れるという。

埼玉県によると、PR用のポスターやエスカレーターに直接貼るシールを県内の鉄道会社や商業施設などに配っているといい、該当する施設やエスカレーターで掲示が見られそうだ。

画像タイトル 埼玉県のポスター(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/escalator/escalator.html)

●法的には罰則なしなら対象にできる可能性も

ちなみに、行政法にくわしい平裕介弁護士によると、条例の対象地域はかならずしも常に住所だけに依拠するわけではないという。

条例(地方自治法14条1項)で定められる「地域における事務」(同法2条例2項)の「地域」は区域・住民も含めた概念だと解釈され、住民を含め当該地域と合理的な関連性があれば、必ずしも地理だけに拘束されず、「地域における事務」といえるそうだ。

「今回のように罰則がない条例なら、秋津駅が対象になるという解釈はありえると思います。逆に罰則がある場合であれば、罪刑法定主義、規定の明確性との関係で、対象にならないという解釈になると考えられます」

エスカレーターで片側を空けることは慣習として定着しており、一定の混乱も予想される。罰則がない啓発目的ということから、埼玉県としても強く求めなかったのかもしれない。

エスカレーターでの歩行は、安全性や輸送効率の観点からの批判がある。新条例が他地域にも波及するようになれば、秋津駅もいずれ同種の条例の対象になるかもしれない。

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