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「医師の働き方改革」報告書、取りまとめに暗雲 残業「年1860時間」案めぐり
2019年03月15日 18時01分

「医師の働き方改革に関する検討会」が3月15日、東京・霞が関の厚生労働省であった。地域医療を確保するためやむを得ない場合に「年1860時間」までの残業を勤務医に認める案について、2日前に続いて意見が噴出。了承に至らず、取りまとめは次回に持ち越された。

「医師の働き方改革に関する検討会」が3月15日、東京・霞が関の厚生労働省であった。地域医療を確保するためやむを得ない場合に「年1860時間」までの残業を勤務医に認める案について、2日前に続いて意見が噴出。了承に至らず、取りまとめは次回に持ち越された。

●「年1860時間」適用にはいくつものハードル

報告書案では、すべての勤務医が2024年4月時点で、業務の大幅増などの状況におちいったとしても休日労働込みで「年960時間」までの残業となることを目指す一方、やむを得ない場合には「特例」として、「年1860時間」までの残業を容認するとしている。

「年960時間」は一般労働者の上限と同じだが、「年1860時間」はその2倍近くの水準だ。

具体的には、医師不足のため「年960時間」を守ると地域医療の提供に支障が出る恐れがあったり、若手研修医が技能を集中的に磨いたりする場合などに、特例の適用を限定する。

特例適用のためには、都道府県が真にやむを得ないか状況を見極めたうえで、その病院を指定(特定)することが必要。さらに病院に対しては、勤務医に一定の睡眠時間(1日6時間程度)や勤務間インターバル、代休を与えるなどの措置をとるよう義務づける。

●「人間らしい生活ができる水準ではない」

この日の会合では、2日前に意見が尽きなかったことを受け、引き続き「年1860時間」の是非を中心にメンバーが意見を交わした。

連合の村上陽子氏は「1860時間は、一般社会では過労死水準を大幅に上回る非常識な水準だ。報告書案では(特例水準の)1860時間が、例えばいつ1500時間になるのか、1000時間になるのかも不明で、いつ引き下がるのかを明示し法律的にも明示してほしい」と注文。

保健医療福祉労働組合協議会の工藤豊氏は「1860時間という上限に改めて反対だと明確に言いたい。ここまで働かせることができる、と考えてもおかしくない」と指摘した。

自治労の森本正宏氏は「1860時間という、通常の労働者の2倍にあたるような水準は労災認定を大幅に超える。人間らしい生活ができる水準ではないので反対」などと述べた。

報告書案への賛成意見もあり、社会医療法人ペガサスの馬場武彦氏は「(特例の1860時間の)終了年限をガチガチにすると、地域医療の確保に影響を及ぼす。事務局案に賛成だ」。

日本医師会の今村聡氏は「できるだけ早く改善するというのは賛成だが、医師偏在の問題が前提としてある。偏在対策の年限は法律上記載されていないため、偏在対策との整合性という意味では法律に書くことはなかなか難しいのかなと思う」と話した。

●武勇伝を振りかざすベテラン医師の意識改革が肝

病院経営者や現場医師の意識改革の必要性を訴える声も上がった。

救急医の赤星昂己氏は「1860時間働かせていい、と勘違いしている経営者や病院長もいると思うので、周知を徹底的に進めてほしい」と厚労省に求めた。

外科医でコンサル会社を営む裵英洙氏は「『1丁目1番地』は労務管理だ。しっかり周知しないと絵に描いた餅になる。病院の現場で、いわゆる武勇伝を振りかざす方々(ベテラン医師)にどのように意識改革を迫るのかが肝だ」と語った。

岡山大学医療人キャリアセンターMUSCATの片岡仁美氏は次のように述べた。

「1860時間を、可能な限り少なくする努力をしてほしい。1年後に1500時間とか、段階を見える形にした方がいい。

院内で解決するにも研修医や若手は立場が弱くて声をあげにくい。院内、県内での解決ではなくて、声をあげられるシステムが必要だ。私は20年前に研修医で、長時間労働が当たり前だと身に染み付いていた。特に40代、50代は価値観から変わらないといけない」

(弁護士ドットコムニュース)

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