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刑務所で収容者の男性が死亡・・・熱中症で倒れた場合、刑務所の責任を問えるか?
2015年09月16日 11時35分

9月も半ばとなり、雨を除けば過ごしやすい季節となったが、この夏は暑さに苦しめられた人も多いだろう。猛暑で熱中症にかかる人もあいついだが、和歌山市内の刑務所では7月に、40代の男性収容者が熱中症とみられる症状で倒れ、死亡するという悲劇が起きた。

報道によると、この収容者は7月31日午前9時半ごろ、「単独室」と呼ばれる部屋で労役作業中に倒れ、病院に搬送されたが、まもなく死亡した。室内には常時飲めるお茶があったが、エアコンはなかった。医師は常駐していなかったという。この日の和歌山市内の最高気温は、平年より3.9度高い36.3度を記録していた。

刑務所側は「対応に問題はなかったと考えている」という、ネット上では、「扇風機くらい置いてやれよ」「殺しておいて問題ないってひどいな」など、批判の声が少なくない。刑務所の収容者が熱中症などで亡くなった場合、遺族は損害賠償を請求できるのだろうか。神原元弁護士に意見を聞いた。

9月も半ばとなり、雨を除けば過ごしやすい季節となったが、この夏は暑さに苦しめられた人も多いだろう。猛暑で熱中症にかかる人もあいついだが、和歌山市内の刑務所では7月に、40代の男性収容者が熱中症とみられる症状で倒れ、死亡するという悲劇が起きた。

報道によると、この収容者は7月31日午前9時半ごろ、「単独室」と呼ばれる部屋で労役作業中に倒れ、病院に搬送されたが、まもなく死亡した。室内には常時飲めるお茶があったが、エアコンはなかった。医師は常駐していなかったという。この日の和歌山市内の最高気温は、平年より3.9度高い36.3度を記録していた。

刑務所側は「対応に問題はなかったと考えている」という、ネット上では、「扇風機くらい置いてやれよ」「殺しておいて問題ないってひどいな」など、批判の声が少なくない。刑務所の収容者が熱中症などで亡くなった場合、遺族は損害賠償を請求できるのだろうか。神原元弁護士に意見を聞いた。

●刑務所の職員には「安全配慮義務」がある

「たとえば、刑務所に収容中の受刑者が、刑務所職員によって革手錠を使用され、急性腎不全等の傷害を負った事件がありました。これについて裁判所は、刑務所職員に『安全配慮義務違反』があったとして、国の損害賠償責任を認めました(大阪地裁平成23年12月8日判決)。

このように、刑務所の職員は、在監者の身体の安全に配慮する義務を負います。本件は、その義務に違反する可能性がありますので、損害賠償を請求することはできます」

人が死んでいるのに、刑務所側は「問題はなかった」という。はたして、そうなのだろうか。

「猛暑の中、エアコンのない室内で作業するような刑務所・拘置所の環境は、人が過ごす場所として適切ではないでしょう。

そもそも懲役刑のような自由刑は、受刑者の『自由』を奪うことを認めても、健康を奪うことまでは認めていません。受刑によって受刑者の健康が害されるとすれば、重大な人権侵害といえます。

実際、弁護士会の人権救済申立事例などをみると、刑務所内での待遇問題は、医療に関するものが圧倒的に多いのです。これは、刑務所の職員が、安全配慮義務についての自覚に欠け、予算不足などを理由に受刑者の健康を顧みないケースが多いためだと考えます。

刑務所内での受刑者の健康への管理不行き届きは、重大な人権問題です。国民的な議論が必要でしょう」

神原弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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