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高市首相はなぜ若者に刺さるのか? 花田紀凱氏に聞く「石破政権の反動」から参政党まで
2025年11月15日 10時26分
#高市早苗 #靖国参拝 #花田紀凱

高市早苗首相の支持率が高い。TBSの「NEWS23」が11月4日の放送で取り上げた電話による世論調査では、「支持する」が82%、「支持しない」が14.3%となっていた。読売新聞社が10月21日から22日におこなった調査でも歴代5位の高さとなり、とくに18歳から39歳までの世代の8割が高市首相を支持していることがわかっている。

一方で、靖国神社参拝や過去の「さもしい顔して貰えるものは貰おうとか弱者のフリをして少しでも得をしよう、そんな国民ばかりになったら日本国は滅びてしまいます」といった発言、いわゆる「裏金議員」が入閣したことなどには批判も上がっている。

連日ニュースやSNSを賑わせている高市首相だが、なぜこんなにも注目されるのか。筆者自身、正直なところ理解が追いつかない。そこで高市首相をよく知る、保守系雑誌『月刊Hanada』の花田紀凱編集長に聞くことにした。(ライター・朴順梨)

高市早苗首相の支持率が高い。TBSの「NEWS23」が11月4日の放送で取り上げた電話による世論調査では、「支持する」が82%、「支持しない」が14.3%となっていた。読売新聞社が10月21日から22日におこなった調査でも歴代5位の高さとなり、とくに18歳から39歳までの世代の8割が高市首相を支持していることがわかっている。

一方で、靖国神社参拝や過去の「さもしい顔して貰えるものは貰おうとか弱者のフリをして少しでも得をしよう、そんな国民ばかりになったら日本国は滅びてしまいます」といった発言、いわゆる「裏金議員」が入閣したことなどには批判も上がっている。

連日ニュースやSNSを賑わせている高市首相だが、なぜこんなにも注目されるのか。筆者自身、正直なところ理解が追いつかない。そこで高市首相をよく知る、保守系雑誌『月刊Hanada』の花田紀凱編集長に聞くことにした。(ライター・朴順梨)

●「高市政権支持=自民党支持」ではない

──高市政権は発足以降、高い支持率を保っています。その理由は何だと思いますか?

まずは石破政権への反動があるのでしょう。あまり外見のことを揶揄したくはありませんが、風貌も含めて「だらし内閣」と言われていたところに、高市さんという、きっちりした印象の女性が出てきた。バッグやボールペンがネットニュースになったりと、目を引く要素があることも支持される理由だと思います。

あとは、政策がはっきりしているところも大きい。石破さんは申し訳ないが、何をやりたいのか、あるいは何をやったのかがよくわからないまま1年が過ぎてしまった。そんな停滞した空気が漂っていた中で、日本初の女性首相は非常に新鮮に見えましたし、それまで高市さんを知らなかった人たちも、政策を知って好感を持ったのではないかと思います。

──高市首相の政策といえば、憲法改正や防衛費の増額などがイメージされますが、物価高対策こそ喫緊の課題だという声は大きくなっています。また、トランプ大統領と会談した際の振る舞いに、「はしゃぎすぎ」という批判もありました。

ガソリンの暫定税率の廃止も決まりましたし、そのあたりもこれから進めていくと思います。トランプ大統領と会ったのは、就任からまだ1週間しか経っていないタイミングで、それで素晴らしい成果がすぐに上がると思うほうが間違っていますよ。でも、いい関係を築けたという意味では、あの会談は成功だったのではないでしょうか。

だって石破さんは就任中、高市さんほどの親密な関係をアメリカ側と築けていませんよね。大統領専用ヘリに同乗してアメリカ海軍の横須賀基地に行きましたが、石破さんだったら行かなかったと思います。G7サミットでも、1人でずっとスマホを触っていたりと、マナーの点でも「どうなの?」と言われることがありましたよね。そういう意味でも、「新しい風が吹いてきた」と感じている人は多いのではないでしょうか。

──若年世代の支持率が高いという調査結果が出ましたが、10月26日に投開票があった宮城県知事選では、自民党宮城県連が支援した現職の村井嘉浩知事が勝利しました。一方で、30代までの層では、参政党から支援を受けた和田政宗さんへの投票が多かったこともわかっています。この結果を見ても「若年層の自民党回帰」とまでは言えないように思います。

自民党が、というより、高市さん個人が支持されていると考えたほうがよいと思います。この間の宮城県知事選挙は、あそこまで和田さんが票を伸ばすとは正直思いませんでした。でも村井さんは6期目になりますし、20年続いてきた村井県政への「飽き」もあるのではないでしょうか。そこに参政党が支援する和田さんが出てきたことで、新鮮な感覚を受けたのでしょう。

どこの自治体でも、一人の首長が長く続けると周囲が忖度するようになっていくんです。そういったことに宮城県民が「飽き」を感じた結果だとも言えると思います。

●外国人問題の責任は「日本政府」にある

──参政党といえば、神谷宗幣党首による「日本人ファースト」発言が、大きな話題になりました。個人的には非常に反発を覚える言葉なので、なぜ参政党が議席を増やしたのか、理解しきれない部分があります。

神谷さんは自民党に所属していたこともありますし、夏の参院選で突然出てきた方ではありません。市会議員を経て国会議員を目指して落選するなど、長きにわたり政治に関わってきた。その過程で「政党を作るなら地方議員を増やさないといけない」と学んだのでしょう。実際、参政党は全国に支部を作って、市会議員や町会議員といった地方議員を増やし、組織を固めていきました。それが躍進につながったのだと思います。

また「日本人ファースト」や反グローバリズムといった主張が、今の時代にハマったのでしょう。「地方議員を育てて地方から地固めしていく」ということを、他の政党は怠ってきた部分があると思います。神谷さんはスピーチもうまいし、今も全国どこにでも出向いて街宣していますからね。

──「日本人ファースト」は大いにバズりましたが、その言葉に言い知れぬ恐怖を感じている外国籍者は、私の周囲にも多くいます。『月刊Hanada』に毎月登場する小西美術工芸社社長のデービット・アトキンソンさんまで「参政党の憲法草案は排外主義的で人種差別そのものだ」と強く批判しています。

保守の中でも、そこは意見が割れるところですね。神谷さんの主張のすべてを、僕も認めているわけではありませんし、参政党の政策がこの先、広く受け入れられるかには疑問もあります。ただ、保守側の「批判勢力」としての存在価値は大きいと思っています。

『月刊Hanada』は神谷さんのインタビューも、アトキンソンさんの連載も載せていますが、それは両方を読んで、読者が自分で判断すればいいというスタンスだからです。中を開いていただければわかりますが、国会議員の特集やインタビューもあれば、爆笑問題や阿蘇山大噴火の連載などもある。雑誌だからこその多様性が1冊の中にあります。メインテーマは政治ですが、どこかに「面白い」と思う"ひっかかり"があって読んでくだされば、と考えて編集しています。

──少子化かつ人口が減少しつつある中、安価な労働力という発想には反対ですが、移民や外国人労働者の力を借りなければ、日本社会は維持できない段階に来ていると思います。

受け入れる仕組みを、きちんと決めればいいと思うんですよ。現行の技能実習制度のシステムには、いろいろな不備があると思いますので、制度を見直して整備すればいい。外国人には「法律を守ってほしい」と言わなくてはならないけれど、彼らも犯罪をするために、わざわざ日本に来るわけではないと思うんです。

実際に日本に来てみたら、当初聞いていた条件と違うからと脱走して、やむなく犯罪に手を染めてしまう。それはそもそもの受け入れ側の体制の問題で、彼らだって日本に来た理由は「真面目に働いて稼ぎたいから」でしょう。なのにそれができないのは、制度そのものに問題があるからだと思います。

●本人の前で言えないことを言うリベラルにうんざり

──立憲民主党の議員をはじめ、リベラルな視点を持つ人に対して、反感の声もSNSなどで散見されます。「攻撃的」「言葉遣いが悪い」といった態度を問うものも多いですが、たとえば「死ね」を「永遠の眠りにどうぞおつき下さい」などと言い換えればいいのか、という問題なのでしょうか?

僕もリベラル左翼にはうんざりしていますよ(笑)。たとえばSNSで炎上した「アベ死ね」ってありましたよね。あとは「安倍を叩き切ってやる」とか。じゃあそれを、果たして本人の前で言えるんですか、と。覚悟を持って本人に言うならまだしも、本人の前で言えないような言葉を言うな、ということなんですよ。

軽いノリでとか、炎上することを目論んで、とても本人には言えないようなことをSNSに書く。その姿勢が、僕はすごく嫌なんです。

あとはなんだろうな、「この国のことをしっかり考えていますか?」と思うところもあります。国民民主党の玉木代表は「内閣総理大臣をつとめる覚悟があります」と言っていましたが、「何がなんでも政権を取りにいく」という気概が感じられなかったし、主張や政策を見ていても、日本の未来へのビジョンをそれほど感じ取れなかった。だから多くの人が、自民党を中心にした政権に安心感を抱いているのでしょうし、「じゃあ今、野党の誰に総理になってほしいか」と聞かれても、なかなか思い浮かばないのでしょう。今後、求心力のある人が出てくれば、また変わるかもしれませんが。

それから「裏金議員」と言いますが、たとえば萩生田光一さんは秘書が略式起訴されましたが、本人は罪に問われていないし、疑惑のあった議員は説明責任を果たしています。検察も捜査を終了しているし、そもそも「裏金」というより収支報告書不記載と言うべきでしょう。それなのにリベラル左翼はずっと攻撃し続けている。一体どうしたら気が済むんですか?政治家を辞めれば満足なんでしょうか。一度何か問題になったからといって、人をとことん追い込むことには、僕は疑問を感じています。

●総理の仕事は想像できないほどの激務

──中国や朝鮮半島との地理的な距離を考えると、むやみに対立するのは得策ではないと、個人的には思います。花田さんは高市首相には、どのような外交を期待していますか?

共産主義政権の中国が脅威であることは事実なので、中国の動きをウォッチして牽制することは、とても重要だと思います。中国や韓国との話し合いは必要だし、もちろんするべきですが、いざという時のために防衛力を強化して備えておくことは、必要不可欠です。

財源などの問題があるので、すぐに大きく変えることは難しいと思いますが、今回の政権は、そちらの方向への外交のかじ取りを少しずつしていくのではないかと期待しています。

高市さんについて一つ危惧するとすれば、健康問題でしょうか。高市さんは「もう無理」というところまで頑張って、いよいよ具合が悪くなって初めて病院に行くタイプの方です。でも、高市さん本人は「好きな仕事に邁進しているだけ」なのかもしれません。ただ、総理の仕事は我々が想像できないほどの激務だし、国の代表ですからね。そこは心配しています。

●「高市早苗」という存在を無視できない

このインタビューの数日後、高市首相が衆院予算委員会の準備のために、午前3時4分に出勤したことが報道された。

「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」という自らの発言を、文字通り実践したかたちだが、野党からは「不合理で危うい独自スタイルを改めるべき」や「(職員など)大変多くの方に大きな影響を与えたことは事実だと思う」といった声があがり、首相は陳謝に追い込まれた。

この一連のやり取りについても、SNSなどでは賛否が真っ二つに分かれ、今も高市発言を巡っては喧々諤々の議論が続いている。個人的には、何を言っているか・何をしているかではなく、服装や言葉遣いといった、わかりやすい要素だけで政治や思想を判断する風潮への違和感は、いまだ拭えない。

高市政権を支持するかどうかは一人ひとり違うし、是々非々で判断するという人もいることだろう。とはいえ、どんな思いを持っている人にとっても、もはや「高市早苗」という存在を無視できなくなっていることだけは、たしかだ。

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