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水源地の所有権めぐる訴訟、ニセコ町が「異例」の署名活動 海外転売による「違法開発のおそれ」
2025年08月21日 16時38分
#ニセコ #水源 #羊蹄山

水源保護地域の所有権をめぐる裁判で、北海道ニセコ町が、異例の嘆願署名活動を始めている。

この土地は、町人口の約8割にあたる4千人への給水を担う極めて重要な水源地域で、町が12年前に取得したものだ。ところが、17年前の旧所有者が返還を求めて提訴。1審では町側が敗訴し、現在札幌高裁で争われている。

町は「敗訴すれば土地が海外業者に転売され、違法開発により水源が危機にさらされるおそれがある」として、控訴審で「寛大な判断」を求めている。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)

水源保護地域の所有権をめぐる裁判で、北海道ニセコ町が、異例の嘆願署名活動を始めている。

この土地は、町人口の約8割にあたる4千人への給水を担う極めて重要な水源地域で、町が12年前に取得したものだ。ところが、17年前の旧所有者が返還を求めて提訴。1審では町側が敗訴し、現在札幌高裁で争われている。

町は「敗訴すれば土地が海外業者に転売され、違法開発により水源が危機にさらされるおそれがある」として、控訴審で「寛大な判断」を求めている。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)

●一審で敗訴したニセコ町

町によると、問題となっているのは、約16万平方メートルの広大な土地で、羊蹄山の麓に位置する。町は2013年1月7日、正規の売買契約に基づいて取得したが、2023年3月、4社前の所有者(A社)が返還を求めて提訴した。

A社は「第三者が無断で売買した土地である」と主張し、ニセコ町に所有権が移るまでの取引を「まったく知らなかった」としている。

2024年9月12日、札幌地裁岩内支部はA社の主張を認め、ニセコ町は敗訴。町は判決を不服として控訴し、現在も審理が続いている。

町総務課の担当者は「1審では相手方の主張を事実認定した判決になっており、納得がいかない」と話している。

●町民の生活を支える重要な水源地

問題の土地は、町人口の約8割、4千人への水を供給する集水区域にあり、町が「非常に重要」と位置付けている。

町は2011年5月1日、「ニセコ町水道水源保護条例」および「ニセコ町地下水保全条例」を施行し、同年10月5日には専門委員会の審議を経て、この土地を「水道水源保護地域」に指定した。

その後、所有者と2年にわたり交渉を重ね、土地を取得。以来12年間、町のインフラを支える重要拠点として管理・保全してきた。

●海外業者による違法開発への懸念

近年、羊蹄山麓では法規制を超えた無断開発が相次いでいる。倶知安(くっちゃん)町や蘭越(らんこし)町など、近隣自治体でも違法開発が問題化している。

町の担当者は「海外の所有者に土地が売買された場合、違法開発のリスクが高まる」と懸念を示す。

もし裁判で町の敗訴が確定し、土地を返還することになれば、その後に海外業者へ転売される可能性があり、町人口の8割を支える水源地が危機にさらされかねない。

町は「公共の福祉のため、町民の生命と暮らしを守る水源地を保全する重要な土地」と位置づけ、自治体による適切な管理の必要性を強調している。

●異例の署名活動「どこでも起こりうる問題」

町は8月25日まで、オンラインでの嘆願署名を受け付けている。

すでに町民全世帯には紙の署名書類が郵送されており、町外からもオンライン署名が可能だ。

嘆願書では以下の点を訴えている。

・公共の福祉のため、町民の生命と暮らしを守る水源地を保全する重要な土地
・取得から約12年間「水道水源保護地域」として適切に管理・保全
・初回売買から既に17年が経過、町の取得からも12年が経過
・町には一切の落ち度がない、法に則った正規の取得

自治体が係争中の訴訟で署名を募るのは異例だ。

署名を呼びかける理由について、担当者は「この裁判は、われわれだけの問題ではない。正規の手続きで土地を買った第三者が、このような形で敗訴するような状況は、全国どこにでもありうる事態。国民の暮らしを守るという観点からも、裁判官に民意を伝えたい」と説明している。

控訴審の今後の予定については「協議中で、まだ見通しが立っていない」(町担当者)という。単なる土地所有権の争いにとどまらず、水源保護という公共的課題を含む裁判として、その判断が注目される。

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