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婚活番組でカップル成立「早大卒弁護士」が受けた誹謗中傷 “被害当事者”だから語れるリアリティーショー出演のリアル
2025年08月22日 09時55分
#誹謗中傷 #リアリティーショー #婚活番組

男女の婚活番組やリアリティーショーが地上波やネット配信で盛んだ。カメラが追いかける出演者の行動に目が離せなくなる視聴者も多い。

放送直後からSNSやネット掲示板が「実況」「感想」で溢れるが、出演者も生身の人間であることに無自覚な人が「誹謗中傷」に走ることも問題視されている。

昨年、婚活番組に“早稲田大学卒年収1000万円弁護士”の肩書きをつけられて出演した男性弁護士も「私への誹謗中傷はありました」と証言する。

意外なことに「私自身は全く気にならなかった」と話すのだが、小学校や中学校では自らの体験をもとに誹謗中傷が思わぬ形で起こり得ると教えている。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

男女の婚活番組やリアリティーショーが地上波やネット配信で盛んだ。カメラが追いかける出演者の行動に目が離せなくなる視聴者も多い。

放送直後からSNSやネット掲示板が「実況」「感想」で溢れるが、出演者も生身の人間であることに無自覚な人が「誹謗中傷」に走ることも問題視されている。

昨年、婚活番組に“早稲田大学卒年収1000万円弁護士”の肩書きをつけられて出演した男性弁護士も「私への誹謗中傷はありました」と証言する。

意外なことに「私自身は全く気にならなかった」と話すのだが、小学校や中学校では自らの体験をもとに誹謗中傷が思わぬ形で起こり得ると教えている。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●30代女性とカップル成立

松澤勇弥弁護士(31歳)が出演したのは、婚活応援番組『セ婚ド!』(フジテレビ系2024年11月放送)。各6人、計12人の“訳あり”男女が婚活アドバイザーの助けを借りながら、2泊3日のキャンプを通じて、カップル成立を目指す婚活リアリティ番組だ。

「不器用な彼らを親の気持ちで見守り下さい」と呼びかける番組には、たしかに出演者をおもしろおかしくあつかうような姿勢は見受けられない。アドバイザーの助言もあったのか、6組のうち4組のカップルが誕生した。

そのなかで、30代後半の女性とカップル成立したのが、松澤弁護士だった。

「婚活番組、リアリティー番組の誹謗中傷」という本題に入る前に、番組に出演した反響から聞いていく。

●「誰も見ない」→実際は「弁護士業界視聴率40〜50%(体感)」「少年鑑別所でも放送」

——番組では「婚活に失敗してきた訳あり男女」たちと紹介されていました。なぜ参加しようと考えたんですか。

知人の弁護士を通じて出演者募集の話が届き、おもしろそうだと感じました。それまで本格的な婚活らしい婚活をした経験はありませんでしたが、30歳を過ぎたことで、自分が結婚を真剣に考えるきっかけになればと出演しました。

——自分の恋愛観や婚活にあがく姿を人の目にさらすことへの抵抗や不安、そして番組での言動が同業者や依頼者にどう受け止められるかなど気になりませんでしたか。

不安はありましたけど、正直なところ「誰も見ないだろう」と思っていたんです。最近はテレビ離れも進んでいますし、視聴者は少ないだろうと……。出演は本当に軽い気持ちであまり深く考えていませんでした。

——年上の30代後半の女性からのアピールもあり、カップル成立しました。

その後はお別れすることになりましたが、明るい方で仲良くなれてよかったです。

——反響はいかがでしたか。

すごかったですよ。想像以上でした。弁護士業界に限れば、僕のなかの体感視聴率は40〜50%くらいでしょうか。若手からベテラン、男女問わず、知らない弁護士からも「見たよ」と連絡をもらいました。関西の先生からも「見た」と言われて驚きました。弁護士じゃなくても、飲みに行ったお店で初対面のお客さんからも声を掛けられました。

「うまくいって良かったね」という声が一番多かったですし、「番組コンテンツとして面白かった」と言われてうれしかったです。弁護士のインターネットページの検索も1日あたり数件程度だったのが、300件近くになり驚きました。

少年事件をよく担当しているのですが、担当した少年も少年鑑別所で見たそうです。「テレビに出てたでしょ」と言われました。そんな少年は他にもいました。

少年鑑別所ではテレビを見られる時間が夜7時から8時50分までで、結末まで見られなかったらしく、「その後どうなったんですか? カップル成立したんですか?」と聞かれましたね。

●誹謗中傷はすぐ届いた

——顔の見える関係の相手からはポジティブな声が届いていたということですが、ネットやSNSの反応についてお尋ねします。婚活番組などリアリティーショーをめぐっては、出演者が亡くなったことで侮辱罪の厳罰化にもつながりました。松澤弁護士も心ない言葉を受け取りましたか。

放送直後からX(旧Twitter)に番組の切り抜き動画がアップされ、「1人目のデブお前はまず痩せろ」といったコメントが付きました。動画は1000万回以上も再生されています。

切り抜き動画は、婚活アドバイザーから「女性への質問が上手ではない」と指摘をうけている場面の映像です。「弁護士の仕事もよくできないだろう」とか「こいつに依頼したくない」などとも書かれました。

——「31歳でこの仕上がり残念すぎでしょ。この人どれだけハイスペで絶対一緒に居たくない」などとも書かれていますね。このようなコメントをどう受け止めましたか。

正直なところ、「痩せろ」という言葉はその通りだなと思いました。

また、依頼者からも「松澤先生の質問がよくわからない」と言われることもあるので、ご指摘の通りでもあると思います。

まったく見当違いなことを書かれていたら僕でもちょっと思うところがあると思うんですけど、事実ですし、あまり傷つきませんでした。ただ、これは「僕だから」ということであって、人によっては傷つく人もいると思います。

——法的な誹謗中傷、つまり名誉毀損や侮辱に当たる言葉もありましたか。

そのような言葉もありました。典型的な言葉の暴力もありました。

他の出演者とくらべても、圧倒的に僕が叩かれていたと思います。インパクトが強かったと捉えてもよいのかもしれません。誹謗中傷って絶対にダメなんですけど、婚活番組やリアリティーショーに関しては起こることもあるし、避けられない面もあるように思います。

私はあまりダメージを受けませんが、人によっては深刻な傷になるでしょう。

何が言いたいかというと、僕はこういう番組に出ても良かった人なのかもしれないと自分で思いました。

画像タイトル 松澤勇弥弁護士(2025年7月/弁護士ドットコム)

●学校の授業「婚活番組に出たらこんなことになったよ」

——学校でのいじめ防止授業にも取り組んでいるとか。

所属する弁護士会を通じて、小中学校で「いじめ防止授業」を担当させてもらっています。さんざん誹謗中傷をされた経験ができたので、子どもたちに「君たちの使っているSNSの拡散力は想像以上。使い方に気を付けよう」と話しています。

今回の経験も例に挙げています。

その人のもとには届かないだろうと思って発言しても、回り回って本人に届いちゃうこともあります。届くというのは便利な面があるけど、使い方には気をつけようという話をします。切り抜き動画も見せて教育に利用させてもらってますよ。

婚活番組に限らず、一般の方がテレビやメディアに顔を出す場合に対しては、番組側から注意喚起したほうがいいと思います。タレントなどメディアへの露出が営業効果になる人もいれば、一般の会社員もいます。

私のように、動画の切り抜きがミーム化して使い続けられるようなこともあります。SNSになりすましアカウントが出てくるような問題もあるでしょう。

そうしたリスクは当然起こり得るので、出演者側も番組側も注意が必要です。

また、SNSのプラットフォーム側の問題もあって、過激な発言をして注目を集めて、閲覧数や収益化する仕組みを利用している。そうした問題もあるでしょう。

——侮辱罪の厳罰化から3年が経過したことで、法務省が今年9月にも「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」を開催します。ネット上の誹謗中傷に適切に対処できているか、表現の自由との兼ね合いもまた議論される見通しです。

侮辱罪の厳罰化は、本当に誹謗中傷に苦しむ人にとっては意味があるでしょう。しかし、同時に表現の自由もまた重要だと思います。

●情報募集中

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