バーベキュー中、焼いていたおにぎりに火がつき、それを消そうとしたところ、隣の家族に飛んでしまった──。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者によると、バーベキューの最中に焼いていたおにぎりに火がついたため、2人で瓶を使って消火を試みたそうです。ところが、その際に燃えたおにぎりの一部が隣でバーベキューをしていた家族のほうへ飛んでしまい、子どものデニムに小さな穴が開き、敷いていたビニール製のシートも一部が溶けてしまったといいます。
故意ではなかったものの、相談者が酒を飲んでいたこともあって、子どもが軽いやけどを負ったとして、相手から病院代や慰謝料の支払いを求められているそうです。
このような場合、治療費や慰謝料を支払う法的な義務はあるのでしょうか。玉真聡志弁護士に聞きました。
●「善意の行為」でも責任は免れない
──今回のように第三者に損害を与えた場合、法的に損害賠償責任は生じるのでしょうか?
発生すると考えられます。
おにぎりに火がつくまで放置したこと、そして消火の際に燃えたおにぎりを飛ばしてしまったことは、いずれも過失と評価されます。これらの過失と被害との間には因果関係が認められるため、相談者には損害賠償責任が生じるといえるでしょう。
─火を消そうとした行為は「善意」だったとしても、損害が発生すれば責任を問われるのでしょうか?
たとえ「善意」でも、過失があれば責任は免れません。
火がつくまで放置していた点に加え、消火の際に注意を払わず燃えたおにぎりを飛ばしてしまったことは過失にあたります。結果として損害が発生している以上、損害賠償責任を負うことになります。
●飲酒は過失の評価を重くする要因に
──飲酒していたことは、過失の有無や責任の重さに影響しますか?
影響する可能性があります。
一般に、飲酒は注意力や判断力を鈍らせるため、火がついた原因や消火時の不手際に影響したとみられる可能性が高くなるので、過失の程度が重く評価されるといっていいのではないでしょうか。
──相手から提示された金額が妥当かどうかを判断する基準や、交渉のポイントはあります か?
損害として考えられるのは、治療費、損傷した衣服やシートの時価、通院にかかる慰謝料・交通費などです。
実費については、領収書やレシート、インターネットの販売価格などから金額を確認できます。慰謝料については、裁判実務で用いられる「赤い本」(日弁連交通事故相談センター東京支部編)に基づく相場があります。
請求額が高すぎると感じた場合は、弁護士に相談し、妥当な金額かどうかを確認するのがよいでしょう。
●賠償義務は「その場にいた全員」にある?
──実際に消火を試みたのは2人でしたが、バーベキューは5人が参加していたとのことです。賠償義務は全員に及ぶのでしょうか?
原則として、その場でバーベキューを楽しんでいた5人全員に責任が及ぶ可能性があります。
おにぎりに火がつかないように注意する義務や、火災が発生した際に適切に対応する義務は、現場にいた全員が共同で負っていると考えられるからです。
ただし、途中ですでに帰宅して、事案発生時に現場にいなかった人については責任を問われないと考えられます。一時的にその場を離れていた場合は、その状況や程度によって判断が分かれるでしょう。