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強制不妊手術で「子どもができないんだ、と涙が出た」、国を訴えた被害者「今も傷は癒えない」
2018年06月06日 20時14分

旧優生保護法の「強制不妊手術」の被害について、国による早期の解決をもとめる院内集会が6月6日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。実名で国を提訴した札幌市在住の小島喜久夫さん(77)ら当事者たちが登壇した。

旧優生保護法の「強制不妊手術」の被害について、国による早期の解決をもとめる院内集会が6月6日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。実名で国を提訴した札幌市在住の小島喜久夫さん(77)ら当事者たちが登壇した。

●「精神分裂病」を理由に手術を受けさせられた

1941年生まれの小島さんは、養父母に育てられていたが、弟と妹が生まれたあと、養父母らの態度が冷たくなり、素行が荒れるようになった。19歳のころ、警察官に札幌市内の病院に連れて行かれて入院。数カ月後、その病院で「精神分裂病」を理由として、不妊手術を受けさせられたという。手術の記録は残っていない。

小島さんは今年5月17日、不妊手術で子どもを持つ機会を奪われるなど、苦痛を被ったとして、国を相手取り、札幌地裁に提訴した。小島さんは集会で「(病院で)『精神分裂病で障がい者(小児麻痺の障がいが右足に残っている)なので、そういう子どもが生まれてきたら困る』と言われた。子どもができないんだ、と涙が出ました」と振り返った。

●「今も心の傷がいえることはありません」

宮城県在住の飯塚淳子さん(仮名・70代)も今年5月17日、国を相手取り、仙台地裁に提訴した。飯塚さんは、地元の中学入学後、まったく身に覚えないことで犯罪者あつかいされたあと、中学3年から、知的障がいがないにもかかわらず、仙台市内の知的障がい児入所施設にいれられた。

飯塚さんは中学卒業後、職親にあずけられ、住み込みで働いていたが、そこで虐待されていたという。さらに16歳のころ、知的障がいがないにもかかわらず、「精神薄弱者」などの判定を受けて、何も知らされないまま、県の診療所に連れて行かれて、不妊手術を受けさせられた。

飯塚さんは「今も心の傷がいえることはありません」と心境を明かした。「すべての不妊手術の被害者に対して、国は謝罪して、事実を明らかにして、適切な補償をすることを強くのぞみます。裁判所には被害者の声を誠実に聞いていただいて、本質を見極めて、公正な審理をしていただきたい」と涙ながらにうったえた。

●弁護団は第三次訴訟の準備をしている

この集会は、全国優生保護法被害弁護団が主催した。旧優生保護法にもとづく強制不妊手術をめぐっては、今年1月、仙台地裁に提訴した宮城県の女性のケース(第一次訴訟)のほか、5月17日の全国3カ所(東京・札幌・仙台/第二次訴訟)とあわせて、裁判が計4件となっている。同弁護団によると、第三次訴訟の準備をしているという。

強制不妊手術は、全国で約1万6500件あったとされるが、全体の2割ほどしか記録が残されておらず、被害救済が遅れている。同弁護団は(1)国に対して、被害者に対する謝罪と賠償を内容とする立法をすみやかにおこなうこと、(2)都道府県に対して、実態調査にあわせた相談窓口を設置すること――などももとめている。

(弁護士ドットコムニュース)

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