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安保法案廃案声明「普段は距離を置く憲法学者も賛同した」呼びかけ人・永山教授に聞く
2015年06月18日 14時28分

国会で審議中の安全保障関連法案をめぐり、「立憲主義に反している」「憲法9条に反している」として、憲法学者たちから「廃案」を求める声が高まっている。東海大学の永山茂樹教授らが呼びかけ人となって6月3日に発表した「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」には、171人の憲法学者が賛同者として名を連ねた。その後、賛同者はさらに増え、6月18日時点で231人に達している。憲法学者たちは、なぜ声を上げているのか。永山教授に話を聞いた。

国会で審議中の安全保障関連法案をめぐり、「立憲主義に反している」「憲法9条に反している」として、憲法学者たちから「廃案」を求める声が高まっている。東海大学の永山茂樹教授らが呼びかけ人となって6月3日に発表した「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」には、171人の憲法学者が賛同者として名を連ねた。その後、賛同者はさらに増え、6月18日時点で231人に達している。憲法学者たちは、なぜ声を上げているのか。永山教授に話を聞いた。

●異常な事態が起きている

――賛同者の現状について教えてください。

昨年7月に政府が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしたときも、憲法学者の連名の形で反対声明を発表したのですが、昨年7月から10月まで呼びかけ、賛同者は175人でした。今回は、3週間足らずで約230人が集まりました。

――どうしてここまで広がったのでしょうか。

去年の7月の閣議決定のときよりも問題が深刻であると考える憲法学者の意識が、賛同者の数に表れているのではないかと思います。7月の閣議決定は法律ではなく方針でした。しかし、今回は、具体的な権利義務にかかわる法律になるかならないかという問題です。

憲法学者の中には、普段は社会的なアピールには名前を出さず、一定の距離を置くことが大事だと考える人がいますが、そのように考える学者の中にも、「今回は非常に重要な問題だから、自分の名前を出してでもアピールしようと考えた」と賛同してくれる人がいました。憲法学者が声を上げざるを得ないような、異常な事態が起きていると感じています。

●5人で話し合って仕上げた

――声明はどのように広がったのでしょうか。

私を含めた呼びかけ人の5人で、知り合いの憲法学者に地道にメールを送って広げました。直接の連絡先は知らない学者でも、「この大学には、あの先生がいる」ということはわかるので、大学に声明文を郵便で送って、賛同を募りました。また、いったん賛同してくれた人が、自分の知り合いに声明文を紹介する形で、広がっていきました。

――憲法学者の人にもそれぞれ考え方の違いがあると思います。どうして多くの学者の賛同を得る声明ができたのでしょうか。

呼びかけ人の5人で話し合って、最初の文面を作りました。その後、他の呼びかけ人20人くらいからメールで意見を聞いて、文面を仕上げました。

「もっと細かいところまで書いたほうがいい」というお叱りや、逆に「もうちょっと簡素にしたほうがいろんな人が参加しやすい」といったアドバイスも受けました。結局、「このくらいが最大公約数ではないか」というところを落としどころにしました。

●憲法を四六時中考えている専門家が考えたもの

――憲法学者たちは、安保法案のどういった点を問題視しているのでしょうか。

ひとつは立憲主義の問題です。立憲主義、国民主権、議会制民主主義。こういうところに代表されるように、法案を成立させるやり方に問題がある、国民をないがしろにしている、という点です。

もう一つは、法案の中身が憲法9条の平和主義に反しているということです。この2点を柱として、今回の声明文を作っています。

――憲法学者が声をあげることの意義は何でしょうか。

この声明に続いて、何か運動をするといったことは想定していません。われわれの活動や、声明自体に意味があるというのではなく、これを社会の中で活用してほしいと考えています。

実際、国会議員が質疑の中で、この声明に言及しながら、国会の論戦に活用するという場面がありました。また、一般市民の人から、「市民の運動にとって支えになる」と賛同の声をいただくこともあります。

今回の声明は、憲法のことを四六時中考えている人間たちが、理屈に基づいて考えたものです。たんなる個人の思い付きではありません。憲法学者が言ったから、正しいのだというつもりはありませんが、専門家の立場から、法案がこんなに危険なんだということを示しました。(了)

※声明文の全文はこちら

安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明

http://anpohousei.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

(弁護士ドットコムニュース)

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