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「ママ名刺」に夫の名前と勤務先の「一流企業」 勝手に載せたらプライバシー侵害?
2015年05月10日 12時25分

子育て中の女性が、知り合いになったママ友に渡すという「ママ名刺」。ビジネス用と違って、連絡先に加え、自分と子どもの名前、趣味などを書くのだそうだ。ただ、なかには「夫の名前と勤務先」まで明記する人もいるらしく、ネットで物議をかもしている。

発端になったのは、4月発売の女性誌に掲載された、ある主婦の体験談。小学生の子どものクラスで知り合った「ママ友」からもらった名刺には、その夫の名前と勤務先も書いてあった。それをみると、良く知られた「一流企業」だったという。

この話の真偽は不明だが、ネットでは「旦那は知ってるんだろうか?うちの嫁がこんなことやり出したら即離婚を考えるが」「旦那の会社が必死に社員の個人情報を保護しているのに、奥さんがこれだもん」など、冷ややかな反応がみられる。

もし、このような「ママ名刺」に、夫に無断で、その名前や勤務先を載せた場合、「プライバシー侵害」だとして問題になる可能性はあるだろうか。佃克彦弁護士に聞いた。

子育て中の女性が、知り合いになったママ友に渡すという「ママ名刺」。ビジネス用と違って、連絡先に加え、自分と子どもの名前、趣味などを書くのだそうだ。ただ、なかには「夫の名前と勤務先」まで明記する人もいるらしく、ネットで物議をかもしている。

発端になったのは、4月発売の女性誌に掲載された、ある主婦の体験談。小学生の子どものクラスで知り合った「ママ友」からもらった名刺には、その夫の名前と勤務先も書いてあった。それをみると、良く知られた「一流企業」だったという。

この話の真偽は不明だが、ネットでは「旦那は知ってるんだろうか?うちの嫁がこんなことやり出したら即離婚を考えるが」「旦那の会社が必死に社員の個人情報を保護しているのに、奥さんがこれだもん」など、冷ややかな反応がみられる。

もし、このような「ママ名刺」に、夫に無断で、その名前や勤務先を載せた場合、「プライバシー侵害」だとして問題になる可能性はあるだろうか。佃克彦弁護士に聞いた。

●氏名は「他人に知られたくない情報」か?

「そもそもの話になりますが、人の名前は、他人に知られたくないような『プライバシー情報』にはあたりません」

このように佃弁護士は切り出した。

「夫からすると、ママ名刺に名前を載せられているのは、『自分がその女性の夫である』という情報が公開されているということに過ぎません。通常は、他人に知られたくない情報といえないでしょう」

なぜ、プライバシー情報にあたらないのだろうか。

「まず、何が『プライバシー』にあたるかを考えてみましょう。それは、人が通常、他人に知らせたくないと思うような情報であり、病歴や収入の額、前科などの情報が典型例といえます。

一方、名前は、他人がその人を呼ぶためのもので、そもそも、他人に知らせるためにあるものです。したがって、名前そのものは『プライバシー』にはあたりません」

しかし、最近は顧客名簿の流出が話題になることも多い。個人の名前は「プライバシー情報」ではないのだろうか。

「エステ店の顧客名簿を例に考えてみましょう。たしかに、その名簿は公開されるべきではありません。しかし、それは、名簿の『名前』そのものがプライバシーとして保護されるからではないのです。その人が『エステに通っている(通っていた)』という事実が、プライバシーとして保護されているのです」

●「職業」はプライバシー情報にあたるか?

では、夫の勤務先を「ママ名刺」に載せることに問題はないのだろうか。

「自分の職業は、普段あえて他人に知らせることはしていないでしょうが、だからといって、『他人に知らせたくない』とまで思うような事柄ではありません。ただ、例外的に、『他人に知らせたくない』と思うことがもっともだといえる職業の場合、プライバシーとして保護されることがあるでしょう。

判例では、産業廃棄物収集をしている場面を無断で撮影された人が、テレビ局をプライバシー侵害で訴えた事件があります。裁判所は『世の中には一部の職業に対して偏見や無理解があるから、廃棄物収集に従事していることを他人に知られたくないと考えることはもっともだ』と指摘して、プライバシーに該当することを認めました」

どうやら、妻がママ名刺に夫の勤務先を書くことは、一部の例外を除いて、法的な問題になる場合は少ないようだ。

「ただ、夫婦や家族の間の問題は、法律を持ち出せば解決するという単純なものではありません。むしろ、法律論を持ち込むと話がこじれてしまい、問題解決がかえって遠のく可能性があります。

この問題はむしろ、名刺に何を書くかという夫婦の好みや美意識の問題のように思われます。

もし夫が、妻のママ名刺の記載に気になるところがあったら、『プライバシー』にあたるとかあたらないとかいう法律論ではなく、好みや美意識の観点からの話し合いをすることが、問題の適切な解決に役立つと思います」

佃弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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