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「中国ではカラス食べる」演出、日テレ「月曜から夜ふかし」に放送倫理違反 BPO「恣意的に編集」
2025年10月21日 15時31分
#BPO #月曜から夜ふかし

日本テレビのバラエティー番組『月曜から夜ふかし』の今年3月24日放送回で、街頭インタビューに応じた中国出身女性のエピソードについて、実際には発言していないのに「中国ではカラスを食べる」と発言したかのように編集されていた問題をめぐり、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は10月21日、番組には「放送倫理違反があった」とする判断を公表した。

委員会は「VTR素材を恣意的に編集し、取材対象者が発言していない内容を発言したかのように、事実に基づかない虚偽の内容を放送した」とし、対象者がSNS上で誹謗中傷に晒されたと指摘。

そして、バラエティー番組であっても「恣意的な編集によって事実を捻じ曲げること」は信頼を損なうことを改めて確認した。

日本テレビのバラエティー番組『月曜から夜ふかし』の今年3月24日放送回で、街頭インタビューに応じた中国出身女性のエピソードについて、実際には発言していないのに「中国ではカラスを食べる」と発言したかのように編集されていた問題をめぐり、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は10月21日、番組には「放送倫理違反があった」とする判断を公表した。

委員会は「VTR素材を恣意的に編集し、取材対象者が発言していない内容を発言したかのように、事実に基づかない虚偽の内容を放送した」とし、対象者がSNS上で誹謗中傷に晒されたと指摘。

そして、バラエティー番組であっても「恣意的な編集によって事実を捻じ曲げること」は信頼を損なうことを改めて確認した。

●カラスの話題ではないのに「とにかく煮込んで終わり」と意図的に編集

BPOの同委員会が公表した意見書によれば、番組では中国人の女性が「あんまり中国カラス飛んでるのがいないですね。みんな食べてるから少ない。とにかく煮込んで食べて終わり」などと発言するシーンが放送された。

その後、日本と中国のSNS上で、取材を受けた女性が放送内容の発言をしていないとの投稿をして問題が発覚した。

番組では日本テレビが4社の制作会社に委託し、放送回ごとに各委託先が担当している。

日本テレビ側の調査を通じて、問題の放送を担当した制作会社に派遣されたフリーディレクターが、女性による別の発言の音声を恣意的に編集したことが認められた。

日本テレビは放送後に謝罪し、街頭インタビューを中止したが、今年5月には「再発防止の体制が整った」として再開していた。

4月にBPOの委員会で審議入りし、関係した日本テレビや制作会社の関係者計16人にヒアリングして制作経緯などを検証した。

●不正抑止のための仕組み機能不全

担当したディレクターは、街頭インタビュー素材のオチが弱いという認識があり、恣意的な編集をおこなった。フリーで活動する担当ディレクターは「失敗したら次はない」との気持ちが強かったという。

番組においては、制作のプロセスのなかで、対象者には出演承諾書への署名を実施。その後、電話などで放送内容を口頭で読み上げて意思確認をする「二次連絡」(あるいは二次許諾)の作業が行われる。

制作会社のアシスタントディレクター(取材に同行していない)が対象者に電話したところ、「みんなカラスを食べるとは言っていない」と否定していたことも明らかになった。

また、日テレの演出担当者が「めちゃくちゃな音編(音声の編集作業)してないですよね。意味ひっくり返すような」とLINEで尋ねたが、制作会社のチーフディレクターは担当ディレクターに確認しないまま「してない」と答えた。

委員会の決定は「4社による競争構造のなかで、ときに許されない行為への誘惑に屈してしまう危険性は否定できない」と指摘し、このようなリスクがあるため、不正機会を抑止する組織の仕組みが必要とした。実際には制作過程において「不正抑止のための仕組みがうまく機能していなかった」とする。

画像タイトル 問題が起きた当初、日本テレビから発表されたお詫び文

●「現場担当者による不正の動機はありえる」だからこそ組織的な確認体制を

同日の記者会見では、委員からも厳しい指摘が続いた。

水谷瑛嗣郎委員(慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所准教授)は「テレビ番組はかつて放送局間の番組視聴率で競争する状況であったが、現在はネット上のコンテンツとの競争になる。だからといってなんでもありではなく、視聴者や対象者にとって信頼される存在でなければならず、『アテンションエコノミー』ときちんと距離をとるという姿勢を示して」と呼びかけた。

大村恵実委員(弁護士)は、現場担当者が不正の動機をもつことはありうるとの前提に立ち「担当者が自社社員か委託先の社員であるかを問わず、不正の機会を抑止する仕組みがもとめられる」と述べた。

毛利透委員(京都大学大学院法学研究科教授)は「恣意的な編集であることは、元のインタビューをみれば一目瞭然だった。『素材を見てみよう』と思う場面は、制作過程で複数あった。誰かが『確認しよう』と言っていれば防げた事案だった」とし、「複数の機会があったにもかかわらず、最初に1人でおこなわれた許されない恣意的な編集が放送まで残った。組織上の大きな問題があったと思わざるをえない」と続けた。

委員会は今回の事案について「恣意的な演出」などの言葉を使い、「捏造」という言葉を使っていない。その理由を21日の会見で問われた小町谷育子委員長(弁護士)は「意見書では非常に厳しいことを言ってると思います。『捏造』という言葉を使わなくても伝わると思います」などと答えた。

画像タイトル 会見での委員長と委員ら

番組は、MCの村上信五さんとマツコ・デラックスさんが、街頭インタビューの内容をうけてトークするやりとりで人気だ。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

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