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広陵高校甲子園辞退「学校側の初期対応が問題拡大の要因」弁護士が指摘
2025年08月19日 10時56分
#SNS #甲子園 #広陵高校

広島県の名門・広陵高校野球部が夏の甲子園大会出場を辞退しました。発端は野球部員の保護者とみられる人物がSNS上で行ったいじめの告発でした。被害者とされる生徒が転校を余儀なくされたという深刻な内容で、学校側の対応に疑問の声が上がっています。なぜここまで問題が拡大したのか。教育機関としての適切な危機管理とは何か。弁護士の視点から分析します。

広島県の名門・広陵高校野球部が夏の甲子園大会出場を辞退しました。発端は野球部員の保護者とみられる人物がSNS上で行ったいじめの告発でした。被害者とされる生徒が転校を余儀なくされたという深刻な内容で、学校側の対応に疑問の声が上がっています。なぜここまで問題が拡大したのか。教育機関としての適切な危機管理とは何か。弁護士の視点から分析します。

●なぜここまで騒動が大きくなったのか

広陵高校側が挙げている理由としては、SNSでの誹謗中傷などで野球部に関係ない人たちまで被害が及んだということだと思います。ただ、根本的な問題として皆が怒っているのは、いじめ問題があったことに対して、学校側の対応が不十分で、問題を矮小化しているようにみえたのではないでしょうか。

また、被害者とされる人が広陵高校を辞めて転校せざるを得なかったという状況があります。それに対して学校側が言っていることとの差が大きすぎるんです。監督の談話でも「反省して努めます」と言いながら、何か「もう終わった問題です」「解決済みの問題なので問題ない」と言っているように見えてしまいます。でも本当に解決している問題なのかというと、被害者からすれば全然そうではない。それが今回の告発のきっかけになっています。

●学校側はどう対応すべきだったのか

もっと早くに第三者委員会を設置するべきでした。学校側の調査だと、どうしても問題を小さくしたい気持ちが働くと思うんです。いじめ問題が深刻で大きい問題だった場合、野球部が公式戦に出られなくなったり、最悪の場合廃部になる可能性すらあるわけで、そういうリスクを避けたいという意味でなるべく小さくしたいという気持ちがあると思います。

ただ、コンプライアンスの観点から言うと、企業でも不祥事に関してはなるべく早く公表するというのが基本とされています。一番傷を小さくしたいなら、一番早く発表して、中身をちゃんとさらけ出して反省するべきだったと思います。

●教育機関としての責任

大事なのは、これが企業の話ではなく、子どもの教育に関わるというところで、より責任が重かったということです。企業なら信用失墜は売上低下の問題になりますが、高校生の場合は教育上、人格形成に影響を与えます。いじめのようなものがあった時に大人が隠蔽するというやり方を見せてしまうことが非常にまずいわけで、そういう問題には適切に対処して「ダメなものはダメ」と言うべきです。

適切に調べた結果、加害者側の言い分にも一理あるという話が出てくるかもしれません。それはわからないわけで、そういうことを適正にやったと見えることがとても大切なんです。

●被害者が失った機会

広陵のような名門校に行っても、そのままプロ野球選手になる人はすごく少ないわけです。でも普通はそういう名門の高校野球部を出て、甲子園を目指して頑張ったということで様々な評価をされ、その後の社会的な信用にも繋がっていくというキャリアを歩んでいくわけです。

確かに今回辞退せざるを得なかったことについて、加害に関わっていない球児たちもいるわけで、そういう人はかわいそうだという部分もあります。

でも被害者はその先の未来全部を奪われているところがあるので、もっと丁寧な手続きを経なければならなかったと思います。最初の対応を間違えなければ、ここまでの事態にならなかったのではないでしょうか。

●無関係な生徒まで巻き込まれる「デジタルタトゥー」問題

加害者だったのかどうかもわからないし、全く無関係だったかもしれない子どもたちまで巻き込まれて、顔や名前も出てしまっているという「デジタルタトゥー」の問題もあります。

今の世代の高校生たちが「どこ出身?」と聞かれた時に、高校名を言いにくくなってしまうようなことになりかねません。 だからこそ学校側がちゃんと公表して、手続きを踏んで、第三者委員会を入れてしっかりやりましたということを示す必要があったと思います。

●第三者委員会設置の遅れが機会を逸失

6月に第三者委員会が立ち上がったのはもっと早くにやるべきでした。早期に適切な対応をしていれば、当事者たちの感情も違っていたかもしれませんし、被害者も学校をやめずに済んだかもしれません。

ちゃんと守ってもらえる体制であれば良かったと思います。 現在、いじめがなかったという結論になっていますが、本当にそう言っていいのかという問題があります。その判断を誰がやって、どういう基準でやったのかというところが全くわからないのが問題です。少なくとも当事者は納得しておらず、それが今回の問題につながったということですね。

弁護士ドットコムニュース記者・小倉匡洋(弁護士)

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