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上司の社内不倫発覚、妻から「裁判で証言して」と頼まれた…匿名でも証人になれる?
2017年11月05日 08時33分

社内で不倫するカップルは決して珍しくはない。では、その配偶者から「夫が不倫しているので、裁判の証人になってほしい」と頼まれたらどうするべきなのだろうか? 「会社同僚と上司が不倫をしており、上司の奥様に裁判での証人になって欲しいと相談を受けました」という人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せた。

相談者は、証人を引き受けようと考えている。しかし、「裁判の記録に(自分の)実名が残ってしまう事だけが気がかり」だという。仕事が忙しいこともあり、証人として出廷するのではなく、書面で証言を提出することを考えている。「匿名・書面ですと、裁判材料としてはあまり有効なものではないでしょうか」と、質問していた。

匿名で書面だけの場合でも「証人」として認められるのだろうか。また、相談者は上司の妻のために協力したいと考えているが、「証人」になること以外にできることはないだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。

社内で不倫するカップルは決して珍しくはない。では、その配偶者から「夫が不倫しているので、裁判の証人になってほしい」と頼まれたらどうするべきなのだろうか? 「会社同僚と上司が不倫をしており、上司の奥様に裁判での証人になって欲しいと相談を受けました」という人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せた。

相談者は、証人を引き受けようと考えている。しかし、「裁判の記録に(自分の)実名が残ってしまう事だけが気がかり」だという。仕事が忙しいこともあり、証人として出廷するのではなく、書面で証言を提出することを考えている。「匿名・書面ですと、裁判材料としてはあまり有効なものではないでしょうか」と、質問していた。

匿名で書面だけの場合でも「証人」として認められるのだろうか。また、相談者は上司の妻のために協力したいと考えているが、「証人」になること以外にできることはないだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。

●裁判の記録には残る?

相談者が懸念するように、裁判の記録に証人の実名は載るのだろうか。

「裁判の記録(訴訟記録)とは、民事訴訟の場合、訴状や答弁書、準備書面、証拠、判決などのことを指します。証人に関係するものであれば、『証人調書』という形で残ります。証人調書には、証言の内容とともに、氏名、年齢、住所などが記載されます。

訴訟記録は原則として、誰でも閲覧することができます。報道関係者は、報道の対象となりそうな事件の訴訟記録の閲覧をして、記事を書くこともあります。民事だけでなく、刑事訴訟でも同様です。

ただし、犯罪被害者や証人保護の観点などから、申請すれば閲覧制限が認められることもあります」

匿名で証人として法廷で証言することは認められるのだろうか。

「結論としては、匿名証人尋問は難しいというのが私の見解です。法律では、匿名での証言が出来るともダメとも、はっきりと書いているわけではありません。ただ私の知る限り、民事訴訟で匿名の証人尋問が行われた例は聞いたことがありません。

また、民事訴訟規則106条では、『証人尋問の申出は、証人を指定しなければならない』という規定があり、匿名では指定したことにならないでしょう。匿名証人尋問は、この規定との関係で難しいように思えます」

相談者は、法廷には立たず、匿名で、書面による証言をすることを考えているそうだ。

「民事訴訟において、証拠の提出は、当事者の責任と権限に委ねられており、匿名の書面を提出することはできることはできるでしょう。しかし、匿名の書面には、何の証拠価値もないと思います」 

●「情報や証拠の提供をするなどの協力方法も」

もしも裁判所からの呼び出しがあった場合、応じなければいけないのか。

「留意しないといけないのは、すべての人は、民事訴訟において証言する義務があることです(民事訴訟法190条)。裁判所から呼び出された場合、理由なく出頭しなければ、10万円以下の過料などの処分が科せられます(同192条等)。実際に科せられることは稀ですが、呼び出しを無視したら、過料などの処分が科される可能性はあります」

最後に、泉田弁護士は相談者に次のように助言した。

「相談への回答としては、匿名証言や匿名書面は難しいとの結論になります。

しかし証人になることは無理でも、上司の妻のために、相談者が自分が知っていることを情報提供するだけで、役立つこともあります。たとえば、何月何日にどこそこのホテルに行ったらしいとか、何月何日に実はツアー会社に頼んで不倫旅行に行ったらしい、など。そういった情報を提供することによって、弁護士がホテルやツアー会社に問い合わせ、証拠を取得することができるかもしれません。

匿名証言や匿名書面での協力は無理でも、情報や証拠の提供をするなどの協力方法もありますよ」

(弁護士ドットコムニュース)

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