3525.jpg
加護亜依「芸名」騒動~本名でも「商標登録」されたら使えないのか?
2013年08月23日 12時38分

芸能活動の再開を発表したばかりの元「モーニング娘。」の加護亜依さんが「名前」をめぐる騒動に巻き込まれている。加護さんの前の所属事務所が「加護亜依」の名前を商標登録しており、その名前で活動した場合、責任を追及する構えをみせているのだ。

特許庁の商標データベースをみると、たしかに、前の所属事務所の名義で「加護亜依」という商標が2009年12月に登録されている。加護さんは結婚・出産などで芸能活動を休止していたが、今年8月15日にブログで、新しい事務所で活動を再開することを発表した。そこへ前事務所から横やりが入ったかたちだ。

芸名をめぐる騒動といえば、1990年代の「加勢大周」事件が思い出されるが、あのときは本名ではない純粋な芸名だった。今回の「加護亜依」は本名でもあるということなのだが、他人に商標登録されてしまうと、自分の本名でも芸能活動で使用できないのだろうか。商標にくわしい岩原義則弁護士に聞いた。

●「著名な芸名」を、本人が「普通に用いられる方法」で使うのは問題ない

「たとえ、他人に商標登録されている名前でも、それが自分の本名で、自分を表示するものとして使用するのであれば、商標権侵害とはなりません(商標法26条1項1号)。また、著名な芸名を、本人が普通に用いられる方法で使っても、商標権侵害とはなりません(同号)」

このように岩原弁護士は、商標法にしたがって説明する。では、今回の「加護亜依」の場合は、どうなのだろうか。

「報道をみると、本名という点だけを問題にしているようですが、仮に本名でなかったとしても、『加護亜衣』という名称は、芸名としても『著名な芸名』と考えてよいでしょう。したがって、本人が通常使う範囲であれば、商標権侵害とはならないと思われます。具体的には、自分のブログに使用するという程度であれば、問題になりにくいと考えられます」

つまり、商標法が定める「普通に用いられる方法」で名前を使うかぎりは、問題ないだろうということだ。ただ、加護さんの場合は、芸能活動で「加護亜依」という名前が使えなければ意味がない。これは「普通に用いられる方法」といえるのだろうか。

「芸名の場合は、境界は曖昧になりそうです。単に自分の名前を紹介するために使うのであればOK、ロゴのように使う場合はNGと、論理的にはいえるでしょうか」

このように岩原弁護士は答える。そうなると、「加護亜依」という名前を大きく表示させたCDや写真集を販売することは難しいようにも思えてくる。特に、加護さん自身ではなく、新しい所属事務所が芸能活動のために使うとなると、ハードルが大きそうだ。

●商標登録の出願前から名前が広く知られていれば、使える可能性もある

だが、岩原弁護士は「商標表32条の『先使用』にあたれば、本人はもちろん、その業務の承継者も継続して、『加護亜衣』を芸能活動の商標として使えることになります」と指摘する。

この「先使用」というのは、その名前が商標登録に出願される前から、ある商品やサービスを表示するものとして使用されていて、消費者の間に広く認識されていた場合は、もともと名前を使っていた者は、そのまま継続して使用できるというものだ。

「先使用は認められる要件が厳しいのですが、今回の加護さんの場合は、認められる可能性が高いといえそうです。あえていえば、『継続して』使用していたかが問題にされるでしょうか」

さらに、岩原弁護士は「加護亜依」という名前が商標登録されたのが、2009年12月で、まだ5年を経過していない点にも注目する。「登録から5年を経過していなければ、無効審判で商標をつぶすのが一番手っ取り早いと思います」というのだ。つまり、加護さんとしては、「この商標登録は無効だ」と争う余地があるというわけだ。

このように加護さんの場合は、「加護亜依」という名前が商標登録されているからといって、すぐに「使えない」と決まったわけではないようだ。さまざまな条件をみたす必要があるので、芸能活動で「使える」と断言できるわけでもないが、その可能性は十分にあるといえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

芸能活動の再開を発表したばかりの元「モーニング娘。」の加護亜依さんが「名前」をめぐる騒動に巻き込まれている。加護さんの前の所属事務所が「加護亜依」の名前を商標登録しており、その名前で活動した場合、責任を追及する構えをみせているのだ。

特許庁の商標データベースをみると、たしかに、前の所属事務所の名義で「加護亜依」という商標が2009年12月に登録されている。加護さんは結婚・出産などで芸能活動を休止していたが、今年8月15日にブログで、新しい事務所で活動を再開することを発表した。そこへ前事務所から横やりが入ったかたちだ。

芸名をめぐる騒動といえば、1990年代の「加勢大周」事件が思い出されるが、あのときは本名ではない純粋な芸名だった。今回の「加護亜依」は本名でもあるということなのだが、他人に商標登録されてしまうと、自分の本名でも芸能活動で使用できないのだろうか。商標にくわしい岩原義則弁護士に聞いた。

●「著名な芸名」を、本人が「普通に用いられる方法」で使うのは問題ない

「たとえ、他人に商標登録されている名前でも、それが自分の本名で、自分を表示するものとして使用するのであれば、商標権侵害とはなりません(商標法26条1項1号)。また、著名な芸名を、本人が普通に用いられる方法で使っても、商標権侵害とはなりません(同号)」

このように岩原弁護士は、商標法にしたがって説明する。では、今回の「加護亜依」の場合は、どうなのだろうか。

「報道をみると、本名という点だけを問題にしているようですが、仮に本名でなかったとしても、『加護亜衣』という名称は、芸名としても『著名な芸名』と考えてよいでしょう。したがって、本人が通常使う範囲であれば、商標権侵害とはならないと思われます。具体的には、自分のブログに使用するという程度であれば、問題になりにくいと考えられます」

つまり、商標法が定める「普通に用いられる方法」で名前を使うかぎりは、問題ないだろうということだ。ただ、加護さんの場合は、芸能活動で「加護亜依」という名前が使えなければ意味がない。これは「普通に用いられる方法」といえるのだろうか。

「芸名の場合は、境界は曖昧になりそうです。単に自分の名前を紹介するために使うのであればOK、ロゴのように使う場合はNGと、論理的にはいえるでしょうか」

このように岩原弁護士は答える。そうなると、「加護亜依」という名前を大きく表示させたCDや写真集を販売することは難しいようにも思えてくる。特に、加護さん自身ではなく、新しい所属事務所が芸能活動のために使うとなると、ハードルが大きそうだ。

●商標登録の出願前から名前が広く知られていれば、使える可能性もある

だが、岩原弁護士は「商標表32条の『先使用』にあたれば、本人はもちろん、その業務の承継者も継続して、『加護亜衣』を芸能活動の商標として使えることになります」と指摘する。

この「先使用」というのは、その名前が商標登録に出願される前から、ある商品やサービスを表示するものとして使用されていて、消費者の間に広く認識されていた場合は、もともと名前を使っていた者は、そのまま継続して使用できるというものだ。

「先使用は認められる要件が厳しいのですが、今回の加護さんの場合は、認められる可能性が高いといえそうです。あえていえば、『継続して』使用していたかが問題にされるでしょうか」

さらに、岩原弁護士は「加護亜依」という名前が商標登録されたのが、2009年12月で、まだ5年を経過していない点にも注目する。「登録から5年を経過していなければ、無効審判で商標をつぶすのが一番手っ取り早いと思います」というのだ。つまり、加護さんとしては、「この商標登録は無効だ」と争う余地があるというわけだ。

このように加護さんの場合は、「加護亜依」という名前が商標登録されているからといって、すぐに「使えない」と決まったわけではないようだ。さまざまな条件をみたす必要があるので、芸能活動で「使える」と断言できるわけでもないが、その可能性は十分にあるといえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る