「妻がコスプレにはまってしまいました。離婚したいです」
そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。相談者の男性によると、妻がアニメのコスプレにはまってしまい、月に1回はイベントに出かけてコスプレを楽しんでいるといいます。
妻はもともとアニメファンではありましたが、以前はハロウィーンで仮装を楽しむ程度だったそうです。しかし、最近ではすっかりはまっており、コスプレに嫌悪感のある男性は、妻がコスプレをやめてくれない場合は離婚も検討しているとのことです。
一般的にコスプレは衣装をつくる費用や時間がかかるといった傾向があります。また、SNSでは妻がコスプレ写真をネットにアップすることに嫌悪感を持つ男性もいるようです。
こうした妻の趣味が原因で、夫から離婚することは可能なのでしょうか。稲生貴子弁護士に聞きました。
●「趣味の不一致」は離婚事由と認められる?
──コスプレなど配偶者の趣味が理由で「価値観が合わない」と感じる場合、離婚事由として認められるのでしょうか。
通常は「趣味の不一致」「価値観の違い」が離婚事由として認められることは難しいです。夫婦で異なる趣味や考え方を持つことは珍しくなく、それだけで裁判所が婚姻関係の破綻を認めることは少ないのが実情です。
離婚は、双方が合意すれば協議離婚として成立します。しかし、一方が離婚に応じない場合や、条件面で折り合えない場合、家庭裁判所での離婚調停に進み、それでも合意に至らなければ離婚訴訟へと進むことになります。
訴訟で離婚が認められるには、民法770条に定められた「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。
代表的なものとして、(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)3年以上の生死不明、(4)回復の見込みのない精神病(令和6年改正により削除予定)、そして(5)「婚姻を継続しがたい重大な事由」が挙げられます。
●趣味の浪費が家計を圧迫していたら?
──趣味への浪費(衣装代やイベント費用など)が家計を圧迫している場合であれば、離婚事由とされる可能性はありますか。
もっとも、趣味にのめりこみ過ぎて家計を破綻させるほどの浪費がある、家庭を顧みず長期間別居状態となっているといった状態であれば、婚姻関係の実質的な破綻として離婚事由に該当する可能性もあります。
離婚協議の場面では、感情的にならずに、離婚後の生活や家計への影響を考えて条件面を具体的に話し合うことが大切です。
また、離婚を急ぐ前に、関係修復や円満解決を目指して話し合うことも重要です。その際は、趣味そのものを否定するのではなく、「どの程度までなら許容できるのか」「支出の上限をどうするのか」など、現実的な線引きを協議してみるとよいでしょう。