3594.jpg
「母の遺産は虐待の慰謝料」娘が怒りの“独占”主張 「甥や友人にあげたい」遺言書スルーしても大丈夫?
2024年05月07日 10時07分
#相続 #毒親 #遺言 #終活

折り合いの悪かった母の遺言書を無視して相続したい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

幼少期に母から精神的な虐待を受けていたという女性。母は、亡父からの遺産を含めかなりの財産を持っており、近年命に関わる病を患い、終活に向けた動きを見せています。

母が亡くなった際の法定相続人は一人っ子の女性のみですが、母は「甥っ子や友人にも遺したい」とこぼし、自身の希望を盛り込んだ遺言書を作成する予定のようです。

女性としては、幼い頃の辛かった日々を思ってか、「母の遺産は私への慰謝料。1円たりとも他人に渡したくない」とし、母の遺言書に従わずに済む方法があるのか気にしています。遺言書の内容を無視して遺産を相続することは可能なのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。

折り合いの悪かった母の遺言書を無視して相続したい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

幼少期に母から精神的な虐待を受けていたという女性。母は、亡父からの遺産を含めかなりの財産を持っており、近年命に関わる病を患い、終活に向けた動きを見せています。

母が亡くなった際の法定相続人は一人っ子の女性のみですが、母は「甥っ子や友人にも遺したい」とこぼし、自身の希望を盛り込んだ遺言書を作成する予定のようです。

女性としては、幼い頃の辛かった日々を思ってか、「母の遺産は私への慰謝料。1円たりとも他人に渡したくない」とし、母の遺言書に従わずに済む方法があるのか気にしています。遺言書の内容を無視して遺産を相続することは可能なのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。

●遺言書の内容を無視は「できない」

──遺言書とはまったく異なる内容で遺産分割するのは可能なのでしょうか。

一般的に、相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることも可能です。この場合、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議を経て、相続人全員が合意した内容の遺産分割をすることができます。

ただし、遺言執行者(遺言者の死後、遺言書の内容を実現する手続きをする人、民法1012条1項)がいる場合には、相続人全員に加えて遺言執行者の同意が必要です。

──「甥っ子や友人にも遺産を渡す」旨の遺言書があった場合で、法定相続人1人の意向で遺言書に反する相続も可能でしょうか。

法定相続人以外に遺言書によって財産を受け取る人(受遺者)がいる場合、法定相続人1人の意向で遺言書に反する相続をすることはできません。これを許してしまうと、受遺者の権利を相続人が一方的に奪うことになってしまうからです。

今回のケースのように、法定相続人ではない「甥っ子や友人」が受遺者となっている場合には、法定相続人が子1人であったとしても、法定相続人1人の意向で遺言書に反する相続をすることはできません。

──遺言書の存在をなかったことにしようと勝手に処分した場合、何か法的ペナルティはありますか。

民法891条5号は「遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は「相続人になることができない」と規定しています。そのため、遺言書を勝手に処分した場合、相続欠格事由に該当し、相続人の権利を失うことになる可能性があります。

相続欠格事由に該当する場合については、遺言書を故意に偽造、変造、破棄又は隠匿したことに加え、相続に関して不当な利益を得ることを目的としてなされたものであることを必要とする判例もあります。

また、遺言書を勝手に処分する行為は私用文書等毀棄罪(刑法259条)に該当し、刑事事件に発展するケースもあります。遺言書の取り扱いや内容について心配なことがある場合には、身近な弁護士に相談されることをお勧めいたします。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る