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法廷録音を試みた弁護人が手錠かけられ法廷外へ 異例の制裁裁判に発展 大阪地裁
2023年05月30日 18時17分
#法曹 #法廷録音

大阪地裁で5月30日、ICレコーダーで法廷録音をしようとした弁護人が、裁判官の退廷命令に応じず拘束される事態が起きた。

傍聴していたライターの普通氏によると、中道一政弁護士は手錠をかけられ、職員ら3人に抱えられるような姿になり、拘束室に連行されたという。

岩﨑邦生裁判長は法廷等の秩序維持に関する法律4条1項に基づき、制裁裁判を午後から行い、過料3万円を言い渡した。弁護人の制裁裁判について、最高裁の「令和3年の刑事事件の概況」によると、2017〜2021年はゼロ。制裁裁判自体も2019〜2021年は1〜2人で、極めて異例とみられる。

大阪地裁で5月30日、ICレコーダーで法廷録音をしようとした弁護人が、裁判官の退廷命令に応じず拘束される事態が起きた。

傍聴していたライターの普通氏によると、中道一政弁護士は手錠をかけられ、職員ら3人に抱えられるような姿になり、拘束室に連行されたという。

岩﨑邦生裁判長は法廷等の秩序維持に関する法律4条1項に基づき、制裁裁判を午後から行い、過料3万円を言い渡した。弁護人の制裁裁判について、最高裁の「令和3年の刑事事件の概況」によると、2017〜2021年はゼロ。制裁裁判自体も2019〜2021年は1〜2人で、極めて異例とみられる。

●裁判官との応酬後、3人に連行される

事態が起きたのは、午前11時30分からのストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪に問われた女性被告人の公判。記者はおらず、傍聴席に数人いるのみだった。ただ、普通氏は「開廷前から多くの職員が控えていて物々しい雰囲気だなとは感じていた」と話す。

中道弁護士は法廷録音の是非をめぐって、大阪地裁に問いかけをしてきた経緯がある。これまでも、録音不許可の訴訟指揮に対する不服申立てなどをしてきた。

この日は、開廷直前に中道氏がICレコーダーを机の上に置くと、裁判官から録音の有無を問われ、中道氏は「答えない」「録音することで何の秩序が乱れるのか」などと応酬が続いたという。

複数回の退廷命令を受けながらも、秩序を乱した理由を問う中道氏。岩﨑裁判官が「法廷警察権を執行します」と宣言すると、法廷外から職員と制服を着た人が数名現れた。「抵抗したら拘束しますよ」「拘束してください、手錠をかけてください」と述べた後、3人に抱えられるような姿になりながら、連行された。

裁判官は不安そうに見守る被告人に、今後の流れや裁判上は不利にはならないことを説明。「制裁裁判を午後から行います」と宣言し、公判はそのまま終了した。

●法廷録音「被告人自身が望んでいる」

中道氏はこれまでも法廷録音を試みたことがあるが、国選弁護人の時は解任されている。今回は被告人が望んでいることでもあり私選のため、一歩も引かない構えだ。弁護士ドットコムニュースの取材に対し、こう語った。

「彼女は、これまでの取り調べの過程での記録に疑問を感じているため、むしろ自分の防御権のために必要だから、と法廷での録音を求めています」

「裁判所は録音の不許可について理由を一切言う必要がないとの一点張りです。禁止しているわけではないのに、説明ができないのはおかしい。議論をしようということです」

●1時間半の拘束、過料3万円言い渡される

制裁裁判とは、「法廷等の秩序維持に関する法律」に基づき、裁判官の命令や措置に従わず、暴言・暴行・喧騒(けんそう)などの不穏当な言動で裁判所の職務執行を妨害したり、裁判の威信を著しく害した者に制裁を科す裁判をいう。制裁として、「20日以下の監置もしくは3万円以下の過料または併科」が定められている。

妨害行為等があった場合には、その場で直ちに裁判所職員または警察官に行為者を拘束させることができる。拘束の時から24時間以内に監置するか否かの裁判が行われないときは、直ちに拘束が解かれる。制裁裁判は、行為時から1カ月以内にしなければならない。

午後1時からの制裁裁判では、中道弁護士に過料3万円が言い渡された。その後、解放された中道氏によると、制裁裁判自体はすぐに終了したものの、裁判官とのやりとりの中では今後は「監置」する可能性も示唆されたという。

拘束されていた約1時間半の間には昼食も用意されており、被告人と電話もできた。今後は、過料3万円に対して不服申し立てをする考えで、5日以内に提出する必要があるとされている。

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