3819.jpg
【寄稿】安倍氏銃撃事件から1年、山上被告人のおじが元弁護士として量刑を考える
2023年07月08日 13時07分
#旧統一教会問題

安倍晋三元首相が銃殺された事件から7月8日で1年となる。殺人罪等で起訴された山上徹也被告人の父親の兄である東一郎氏(78歳)は元弁護士だ。大阪で企業法務を中心に扱う法律事務所を経営していたが、病気や妻の死などがあり、68歳で仕事を退いた。

そんな中で起きた甥っ子の事件。昨夏には「法曹3者で客観的に事実を評価し、適切に量刑を判断してほしい」と話していた。しかし、1月の起訴まで長期間の鑑定留置がされるなど異例の事態が続いたことに、疑問を感じざるをえなかった。今回、実名で法律家としての見解を弁護士ドットコムニュースに寄せた。

安倍晋三元首相が銃殺された事件から7月8日で1年となる。殺人罪等で起訴された山上徹也被告人の父親の兄である東一郎氏(78歳)は元弁護士だ。大阪で企業法務を中心に扱う法律事務所を経営していたが、病気や妻の死などがあり、68歳で仕事を退いた。

そんな中で起きた甥っ子の事件。昨夏には「法曹3者で客観的に事実を評価し、適切に量刑を判断してほしい」と話していた。しかし、1月の起訴まで長期間の鑑定留置がされるなど異例の事態が続いたことに、疑問を感じざるをえなかった。今回、実名で法律家としての見解を弁護士ドットコムニュースに寄せた。

●検察の思惑に疑問

事件から早1年、世間はかしましくなっているが、事件を理解するには、まず単純に見る必要がある。しからば本件は「統一教会によって人生を狂わされた男が、教会にエールを送っていた男を射殺」しただけの事。

射殺した男が、いかに統一教会によって人生を狂わされたのか、射殺された男が、統一教会になぜエールを送っていたかを突き詰めれば足り、その問題の多くは既に調書に作成されてあり、いたずらに公判を引き延ばすべきではない。

(量刑について)
被害者1人に対する殺人罪の刑罰は、懲役20年、加算しても30年。または無罪もあり得る。

その選択は、裁判員・裁判官が正義感に基づいて行うものであり、法が先行するものではない。刑事事件に通じている友人の弁護士の言によると「本件で懲役25年以上の判決なら弁護人の不出来。裁判員裁判の量刑は20年が判例の相場」だという。

現に、2022年10月に大阪・カラオケパブのオーナー女性が客に殺されたとされる事件で大阪地裁は懲役20年を言い渡した(高裁で審理中)。

パブの女性と元首相との間に差を設けるのは法の下の平等に反する。

女性の場合、何の落ち度もない理不尽な事件だった。元首相の場合、統一教会にエールを送っていたのである。

統一教会の宗教2世が元首相のエールを見て、「悲しくて悔しくて涙が止まらなかった」と言っていた。これがすべてである。

(罪名について)
検察は殺人罪のほかに4つの罪名を追加しているが、その意図は殺人罪だけでは20年を超えて科刑できないためではないか。

すなわち、殺人と銃刀法違反罪は、法律上牽連(けんれん)犯なので一罪である。銃を使ったことは殺人の手段にすぎないということだ。

検察は火薬類取締法違反と武器等製造法違反を併合罪として加算を目論んでいると見える。しかしながら、いずれも殺人予備罪で、殺人を含めて一罪である。(試し撃ちをしたとされる)建造物損壊罪も含めて5罪は社会通念上、一罪と考えることもできるのではないだろうか。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る