3869.jpg
「内々定です→ごめん間違いでした」は通用するのか?
2019年09月21日 09時16分

企業から来た内々定のメールが、まさかの「送信ミス」だったーー。ヤフー知恵袋にこんな投稿がありました。

投稿者は内々定のメールが来たため、就職活動を終えて、内定承諾書が家に送られてくるのを待っていました。

しかし、メールが送られてから一週間後、企業から電話があり「採用部の勘違いで、内々定を間違えて連絡してしまいました。申し訳ありませんが、この度はご縁が無かったとのことでご理解の程お願いします」といったことを言われたそうです。

就活生にとっては間違いでは済まされないミスですが、法的には問題にならないのでしょうか。佐藤正知弁護士に聞きました。

企業から来た内々定のメールが、まさかの「送信ミス」だったーー。ヤフー知恵袋にこんな投稿がありました。

投稿者は内々定のメールが来たため、就職活動を終えて、内定承諾書が家に送られてくるのを待っていました。

しかし、メールが送られてから一週間後、企業から電話があり「採用部の勘違いで、内々定を間違えて連絡してしまいました。申し訳ありませんが、この度はご縁が無かったとのことでご理解の程お願いします」といったことを言われたそうです。

就活生にとっては間違いでは済まされないミスですが、法的には問題にならないのでしょうか。佐藤正知弁護士に聞きました。

●内定の場合は従業員としての地位を主張できる

ーー内定と内々定では、法的な位置付けが違うのでしょうか。

2020年4月新卒採用までは、日本経団連の「採用選考に関する指針」によって、正式な内定日は、卒業・終了年度の10月1日以降とされているため、それより前は、「内々定」とされていました。ところが、この指針は、2021年4月以降の新卒採用については廃止されることになっているのです。2020年からは、「内々定」が死語となるかもしれません。

正式内定の場合には、企業と労働者との間に労働契約が成立し、学生は企業に対し従業員としての地位を主張できます。企業が正式内定により成立した労働契約を解消するには、民法95条の錯誤を主張するか、解雇をするしかありません。

しかし、民法95条では、勘違いで意思表示をした側に重大な過失があれば、その意思表示は有効とされます。内定のような重要な通知についてチェック体制が不十分であったことからすれば、重大な過失があったというべきであり、内定の意思表示は有効でしょう。

また、解雇をするには、客観的で合理的な理由と社会通念上の相当性が必要であり、勘違いでしたというだけでは合理的な理由とはいえないでしょう。

●内々定の場合は?

ーー相談者のように、内々定の連絡ミスの場合はどうでしょうか。

「内々定」の場合には、正式内定に至っていないことから、まだ労働契約は成立していません。このため、「内々定」が取り消されると、企業に対し従業員の地位を主張するのは困難です。

ーー「勘違い」、「送信ミス」は通用するのでしょうか。

「内々定」を得た学生は、問題でも起こさない限りは10月1日に正式内定を得られると期待するでしょう。

これを期待権といい、合理的な理由もなく企業が一方的に「内々定」を取り消した場合には、学生は企業に対し期待権を侵害されたことを根拠に損害賠償を請求することができます。そして「勘違いでした」というだけでは合理的な理由とはいえないでしょう。

ーー相談者は内々定の連絡を受け、就職活動を終えていますが…。

相談者は「内々定」を得たあと就職活動を終えたようですが、これが他の企業の「内々定」や選考を辞退したような場合には、期待権侵害の程度も大きくなります。

しかし、「内々定」から1週間しか経っておらず、他の企業の「内々定」や選考を辞退していなかったのであれば、期待権侵害の程度も少ないでしょう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る