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台風でも「宅配ピザ」に猛烈批判、「ウーバーイーツ」は? シェアエコの労災問題
2018年10月13日 09時24分

9月に本州を襲った台風21号と24号。1カ月に非常に強い台風が2つ上陸するのは史上初めてだった。大きな被害がでる中で、働く人の安全を求める声が高まっている。今回はデリバリー業者、特にシェアリングエコノミー(シェアエコ)についての議論を紹介したい。

9月に本州を襲った台風21号と24号。1カ月に非常に強い台風が2つ上陸するのは史上初めてだった。大きな被害がでる中で、働く人の安全を求める声が高まっている。今回はデリバリー業者、特にシェアリングエコノミー(シェアエコ)についての議論を紹介したい。

●台風でピザの配達員が転倒、企業に批判

9月4日に西日本を直撃した台風21号。ネットでは屋根が吹き飛んだり、トラックが横転したりする動画が次々に投稿された。

こうした中で、特に注目を浴びたのが、宅配ピザのドライバーがスクーターごと風に倒される動画だ。注文した客に加えて、危険なのは明らかなのに配達させた企業に対する批判の声があがった。

労働問題にくわしい川上資人弁護士は、「企業には、労働者に対する安全配慮義務がありますから、台風の中で配達させたらダメです」と指摘する。もしケガなどすれば、労災保険の対象となり、企業側に損害賠償などを求めることもできる。

台風の中で働かせて、万一のことがあれば、企業の責任が追及されることは避けられない。災害時の仕事のあり方を考えさせられる話題だったと言えるだろう。

●シェアエコの場合は?

ただし、これは企業に雇われているときの話だ。今後の増加が見込まれるシェアエコだと、法律上は「労働者」ではないので労災はおりない。

シェアエコは、隙間時間や場所などを提供して対価を受け取るというもの。日本では、フードデリバリーの「Uber Eats(ウーバーイーツ)」などが有名だが、配達員はフリーランス(個人事業主)扱い。労働基準法などの保護がなく、ケガしても「自己責任」になってしまう。

言い換えれば、その分、企業の配慮が求められる。台風などへの対応について、事業を展開するウーバージャパンは、「2018年以降、安全確保を第一の優先事項と位置づけました。気象条件が過酷な場合は、サービスを一時停止する措置を設けています」と話す。

たとえば、前述の台風21号のとき、関西圏の配達員には前日段階でサービス臨時休業のお知らせが届いた。

また、9月30日夜に上陸した台風24号では、記者がウーバーイーツの注文アプリを開いたところ、「台風24号により配達パートナーの皆さまの安全を確保できない事から、17:30よりサービスを休止しております」との表示が出て、注文できなくなっていた。被害を未然に防ぐ上で、評価できる取り組みと言える。

●雨天時は「報酬増」で人員確保…働き手の保護どこまで?

他方、通常の雨天時などでは、フードデリバリーの需要は増すのに対し、配達員は確保しづらくなる。そこでウーバーイーツでは、報酬が増える「インセンティブ」と呼ばれる仕組みで人数を集めている。ただし、天候が悪ければ、事故のリスクは高まる。

ウーバーイーツでは自転車の配達員には、最大1億円の対人賠償・対物賠償保険を用意しているが、原付バイクにはない。もともと労災もきかないし、「報酬が良いから」と軽い気持ちで引き受けると、痛い目に遭う可能性がある。

フードに限らず、人手不足が叫ばれているデリバリー業界では、シェアエコに対する期待が高い。ただし、ほかの仕事に比べ、ケガなどのリスクも高い。

今後、シェアエコが広がっていくうえで、働き手をどの程度まで保護するかが大きな論点になってくるはずだ。つまり、「働き手の同意」を理由に最小限の保護に留めるのか、働き手あっての利益だからと、企業により強い責任を求めるのか、という問題だ。

●先行事例を知ることが大切…仏ではプラットフォームに責任課す法律も

川上弁護士によると、海外ではシェアエコについて、労働者性をめぐる裁判が起きており、労働者性が認められた事例が複数ある。働き手の中には、細切れの時間すらお金に変えないとならないなど、事情を抱えた人も少なくない。

「フランスでは2016年に、プラットフォーム(PF)企業の社会的責任に関する法律ができました。一つのPFを通じて、年間一定額(2017年は5100ユーロ=約65万円)を稼いでいる人には、労働者性に関係なく、PFが(1)労災保険料を払う、(2)職業訓練の費用を払う、(3)労働三権を認める(特に団体交渉に応じる)というものです」

すでにシェアエコが普及している海外で、どういう事態が起き、どういう対策が取られているかを知ることが、日本での推進の参考になりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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