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京アニ事件、被疑者がリハビリ開始 逮捕はいつになるのか?
2019年10月16日 10時13分

甚大な被害が出た京都アニメーションの放火事件。入院中だった20代の女性が10月4日に亡くなり、死者は36人になった。

一方、重いやけどで一時は生命も危ぶまれていた被疑者の男性(40代)は寝たきりの状態を脱し、車イスに乗れるまで回復したという。10月8日、共同通信が報じている。

男性はリハビリを始めており、会話もできるという。今後、どのような状態になれば逮捕されるのだろうか。裁判までの流れを髙橋裕樹弁護士に聞いた。

甚大な被害が出た京都アニメーションの放火事件。入院中だった20代の女性が10月4日に亡くなり、死者は36人になった。

一方、重いやけどで一時は生命も危ぶまれていた被疑者の男性(40代)は寝たきりの状態を脱し、車イスに乗れるまで回復したという。10月8日、共同通信が報じている。

男性はリハビリを始めており、会話もできるという。今後、どのような状態になれば逮捕されるのだろうか。裁判までの流れを髙橋裕樹弁護士に聞いた。

●「取り調べ」や「実況見分」に耐えられるかが目安?

ーーすでに逮捕状は出ていますが、男性がこのまま逮捕されないということはありえますか?

「被疑者の男性はいずれ逮捕されると思います。ただし、そもそも逮捕は罪を犯した人に対する刑罰ではありませんので、罪を犯した人すべてを逮捕しなければならないわけではありません。

逮捕するためには、(1)逮捕の理由=罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由、(2)逮捕の必要性=逃亡、罪証隠滅等のおそれ、という2つの要件を満たさなければなりません。

母子2人が亡くなった池袋暴走事件の被疑者は、退院後も逮捕されていません。罪を犯したことは明らかなのですが、社会的地位も家族もあるため逃亡の恐れはなく、また犯罪立証に必要な証拠を入院中に収集できたことで罪証隠滅の恐れもないと判断されたためだと思います。

一方、京アニの被疑者の場合、死刑や無期懲役などの重罰が予想されるため逃亡の可能性は高く、動機などを解明するために被疑者の取り調べをする必要性も高いと判断され、いずれ逮捕されると思われます」

ーー男性は会話もできると報じられています。

「まだ逮捕をするのに適した状況ではない、と警察が判断しているのでしょう。

通常、警察は被疑者の『取り調べ』や『実況見分立ち合い』をする必要があると判断した場合に逮捕状を求めます。

しかし、生命が危ぶまれるような状態の被疑者から事件について聞き出すことは難しいでしょうし、聞き出した内容の真実性に問題ありと裁判で判断されることもあります。犯行状況の再現や実況見分への立会も難しいでしょう。

こういった事情から、警察は被疑者の体調の回復を待っている状況だと思われます」

ーー男性がどういう状況になれば、逮捕されるのでしょうか?

「歩くことができる程度に体調が回復するか、歩行が困難でもそれ以外の体調に問題がないと判断された場合に、逮捕されると思います。ここまで体調が回復すれば、被疑者の取り調べや実況見分立ち会いは十分可能になるからです。

しかし、実際は、逮捕される前であっても、警察は被疑者の意思疎通が可能になった時点で、病院内で取り調べを開始すると思います。

私が以前経験した一家心中の事案でも、被疑者の意思疎通が可能になった時点で、警察官が頻繁に病室に行き、取り調べをしていました。

警察には、逮捕されて弁護士がつき、黙秘等の指示をされる前に事情を聴きとってしまおうという動機もあると思います」

●裁判が始まるまで数年かかる可能性も

ーー裁判自体はいつぐらいから始まると考えられますか?

「逮捕されてから実際に裁判が始まるまでには、2年以上かかる可能性があります。

今回の被疑者は逮捕後、ほぼ確実に起訴前の精神鑑定(期間は通常3カ月)を受けると思いますので、逮捕されてから起訴されるまでに約4カ月かかります。

そして責任能力に問題がないと判断され、殺人罪のような裁判員裁判対象事件として起訴されれば、公判前整理手続きに付されます。弁護人が責任能力を争ったり、死刑求刑を想定した弁護活動をしたりするとなると、その争点整理等に1年以上かかる可能性は高いです。

今後は、(a)責任能力があるとして起訴されるのか、(b)弁護人側が責任能力を争うのか、(c)死刑が求刑されるのか、などが注目すべきポイントだと思います」

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