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サルの「自撮り写真」の著作権は誰のもの? 福井弁護士がユニーク裁判の論点を解説
2015年10月04日 08時20分

「サルが自撮りした写真の著作権はサルにある」。アメリカの動物愛護団体が、サンフランシスコの連邦裁判所に起こした訴訟が、注目を集めている。問題になっているのは、2011年にインドネシアのクロザル「ナルト」(雄・6歳)が、イギリス人写真家デイビッド・スレイター氏のカメラを奪って「自撮り」した写真だ。

インドネシアの島を訪問していたスレイター氏のカメラを、好奇心旺盛なサルが奪い、シャッターを押しているうちに、偶然とれた。スレイター氏は、この写真を収録した写真集「WILDLIFE PERSONALITIES」を販売している。

一方、アメリカの著名な動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会」(PETA)が「著作権は写真を撮ったサルにある」と、「ナルト」に著作権を認めるよう訴えた。PETAは「アメリカの著作権法は、動物が著作権を持つことを禁止していない。ナルトが自身で写真を撮ったので、一般的な人間と同じように、ナルトに著作権がある」と主張している。

PETAはナルトらクロザルのコミュニティの利益のために、自分たちが、この写真の売上管理を行う権利も裁判所に求めている。PETAの訴えが認められる可能性はあるのだろうか。著作権の問題に詳しい福井健策弁護士に聞いた。

「サルが自撮りした写真の著作権はサルにある」。アメリカの動物愛護団体が、サンフランシスコの連邦裁判所に起こした訴訟が、注目を集めている。問題になっているのは、2011年にインドネシアのクロザル「ナルト」(雄・6歳)が、イギリス人写真家デイビッド・スレイター氏のカメラを奪って「自撮り」した写真だ。

インドネシアの島を訪問していたスレイター氏のカメラを、好奇心旺盛なサルが奪い、シャッターを押しているうちに、偶然とれた。スレイター氏は、この写真を収録した写真集「WILDLIFE PERSONALITIES」を販売している。

一方、アメリカの著名な動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会」(PETA)が「著作権は写真を撮ったサルにある」と、「ナルト」に著作権を認めるよう訴えた。PETAは「アメリカの著作権法は、動物が著作権を持つことを禁止していない。ナルトが自身で写真を撮ったので、一般的な人間と同じように、ナルトに著作権がある」と主張している。

PETAはナルトらクロザルのコミュニティの利益のために、自分たちが、この写真の売上管理を行う権利も裁判所に求めている。PETAの訴えが認められる可能性はあるのだろうか。著作権の問題に詳しい福井健策弁護士に聞いた。

●人間の介在しない創作物が出てきている

最初に問題になるのは、そもそもサルの自撮り写真は著作物かという点です。著作物とは「創作的な表現」をいうのですが、著作権法では歴史的に、「創作は人間だけの特権的行為である」というある種の前提が共有されていたのですね。

今回も、米国著作権局はサルの撮った写真を著作物と認めない考えを示しており、著作物でないなら最初から誰にも著作権はありません。実はこれは、コンピュータ創作などで1970年代頃から議論され、最近また議論が熱い分野なのです。

というのは、自動翻訳や自動撮影、自動作曲など、現に実用化された「人間の介在しない創作物」がどんどん出てきたためです。そこで、「自動創作は著作物なのか」「創作は人間だけの特権か」という大命題が再浮上しています。

もちろん、カメラのように機械を人間がツールとして創作することは昔からあります。この場合、「人間が創作している」とみるから著作物になります。

今回の裁判でも、カメラマンのスレイター氏は、「自分が機材全部をお膳立てして猿との信頼関係も何日もかけて育んだ末で発生した自撮りなのだから、これは自分の作品だ」と主張しているのですね。この言い分が通れば、写真はスレイター氏の著作物で、彼が権利を持つでしょう。

●今回の裁判は「自然の権利訴訟」の一環

他方、仮に写真はサル自身の著作物だと考える場合でも、誰がその権利を持つかという論点は残ります。イギリス法では、コンピュータの完全自動創作も著作物と認め、その場合には「全体をお膳立てした人」を権利者としています。今回だと、やはりカメラマンでしょうか。

ナルト自身が権利を持ち、でもそれを自らは使えないだろうから自分達が代わりに行使して、収益を彼らサルのコミュニティ保護に使おうというPETAの主張は、一見突飛です。訴訟ではまず負けるでしょう。

ただこれは、「自然の権利訴訟」という、一世を風靡した社会運動的な訴訟の一環といえます。その根底には、我々がナルトの写真を楽しんで受益するなら、その表現の豊かさをもたらした自然にこそ還元すべきだという訴えがあるのでしょう。

そして実は、著作権は誰のため、何のためにあるのかという、次世代著作権の議論とも通じる問いかけがそこにはあるのですが、続きはまたの機会といたします。

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