4125.jpg
「自分の身は自分で守る」ブラック企業に対抗するための「実践的な労働法教育」とは?
2014年09月15日 11時30分

若者への労働法教育を考えるシンポジウム「若者をブラック企業から守るために 実践!ワークルール教育」が9月4日、東京都千代田区の連合会館で開かれた。日本労働弁護団とブラック企業対策プロジェクトが、学校教員を対象に開いた。

シンポジウムでは、ブラック企業問題にくわしい3人の論客が、ブラック企業の実態や労働法教育の重要性について語った。また、NPO法人「POSSE」が、高校・大学生向けに行っている「ワークルール教育」のやり方を、教員たちに紹介した。

若者への労働法教育を考えるシンポジウム「若者をブラック企業から守るために 実践!ワークルール教育」が9月4日、東京都千代田区の連合会館で開かれた。日本労働弁護団とブラック企業対策プロジェクトが、学校教員を対象に開いた。

シンポジウムでは、ブラック企業問題にくわしい3人の論客が、ブラック企業の実態や労働法教育の重要性について語った。また、NPO法人「POSSE」が、高校・大学生向けに行っている「ワークルール教育」のやり方を、教員たちに紹介した。

●「若者を使いつぶす企業」が全般化している

登壇したPOSSE代表の今野晴貴氏は「違法な労働状態を社員に受け入れさせる手法を考え抜くことは、企業にとって経営戦略の一部となっている」と指摘し、次のように続けた。

「本屋に行くと、『残業代の浮かし方』『社員を安く使う方法』といった本が売られています。そこに必ず書かれているのが、固定残業制の話です。これは、入社した後で『あなたの給料には残業代80時間分が含まれています』などといって残業代を払わない働かせ方です。一見給料が高いように見せかけて、時給換算すると最低賃金レベルという場合も多いです。

この固定残業制は、会社と社員の間で合意がなされていれば、『契約自由の原則』によって即座に労働基準法違反とはならず、労働基準監督署も取り締まりません。

一度合意してしまうと、後で会社と争うことは非常に難しい。会社としても『22歳~23歳の社会経験もない若者が訴訟など起こすはずがない』と見切っているために、こうした手法が横行しているわけです」

今野氏は「大手の企業であっても、社員を違法に働かせて使いつぶすというやり方は新興企業を中心に増えています。『たまにひどい企業にあたる』というレベルではなく、もはや全般化しています」と強調した。

●難しい専門用語を使わない「実践的な労働法教育」

そういった企業に、若者が対抗する方法を、どうやって教えるかが、今回のシンポジウムのメインテーマだ。

POSSEが若者向けに行っている授業では、「不当な賃金カット」や「残業代不払い」などについて、イラストと分かりやすい文章で解説するテキストを使っているという。法律の勉強につきものの「条文引用」はなし。難しい専門用語もほとんど出てこない。

こうしたテキストを使う理由について、今野氏は次のように語った。

「いまは、実践的な労働法教育が足りません。

そうなってしまっている理由は、『頑張れば給料が上がって報われる』『訴訟なんか起こして波風立てないほうがいい』という認識が、親・教育者・そして労働者自身にあり、実践的なノウハウを教える労働法教育は不要・邪魔という暗黙の合意があったからです。

しかし、ブラック企業の登場によって、そうしたある種の処世術や社会的合意は崩されてきています。若者を使いつぶして、うつ病や過労死にまで追い込む企業が増えている今、『自分の身を自分で守る』ためには、実践的な労働法教育が必要です」

●「会社がおかしいかもしれない」と疑うことから始まる

では、「実践的な労働法教育」とはどんなものだろうか。今野氏は次の3点を強調していた。

「1つめのポイントは、企業の中にも悪い企業があり、企業とそこで働く人の利害関係は必ずしも一致しないと認識することです。なんかおかしいな、理不尽だなと感じたら、『会社側がおかしいかもしれない』というマインドを持てるかどうかが、非常に大切です。

次に大事なポイントは、とにかく記録を取るということです。記録を取っていなければ、企業と争う場合にきわめて不利な状況になる。記録があれば、労災保険がおりて医療費が全額無料になりますし、給料が8割補償されます。さらに、会社があなたを解雇することができなくなります。記録の有無は自分や家族の運命を分けるような、とてつもなく大事な問題です。

しかし記録を取っていても、一般の方が労働法を使いこなして訴訟を起こすことは難しい。そこで3つ目のポイントとなるのが、必ず専門家に相談することです。弁護士に相談する場合は、労働者側の弁護を専門に行う弁護士がいいでしょう」

なお、このシンポジウムで紹介されたテキスト『今すぐ使える!労働法教育ガイドブック』は、ブラック企業対策プロジェクトのホームページでダウンロードできる。

http://bktp.org/downloads

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る