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「病気の妻を守るため残りたい」パキスタン男性の訴え、高裁でも認められず
2021年05月12日 19時47分

30年以上前に母国から逃れてきたパキスタン人男性、モハメド・サディクさん(57)が、法務大臣の裁決撤回や、在留特別許可などをもとめた訴訟の控訴審判決が5月12日、東京高裁であった。深見敏正裁判長は、請求を却下・棄却した1審判決を支持し、原告側の控訴を退けた。サディクさんは上告するとしている。

30年以上前に母国から逃れてきたパキスタン人男性、モハメド・サディクさん(57)が、法務大臣の裁決撤回や、在留特別許可などをもとめた訴訟の控訴審判決が5月12日、東京高裁であった。深見敏正裁判長は、請求を却下・棄却した1審判決を支持し、原告側の控訴を退けた。サディクさんは上告するとしている。

●母国から逃れて、永住権のある女性と結婚したが・・・

パキスタン生まれのサディクさんは学生時代、デモに参加するなど、反政府活動に取り組んだ。政府による弾圧が強まり、命の危険から、1988年に日本にやってきた。観光ビザが切れたあとは、自動車部品会社や建設会社などで働いていたという。

その後、サディクさんは、日本の永住資格をもつ中国人女性リュウさんと交際。結婚の準備をすすめていた2007年7月、出入国管理法違反(不法在留)で逮捕されて、入管施設に収容された。なお、同9月に婚姻届を提出している。

サディクさんは2009年1月、仮放免(一定の条件の下で解放されて、施設外での生活を認めること)となった。働くことができないサディクさんの代わりにリュウさんが生活を支えていたが、リュウさんは2014年、乳がんを患った。

摘出手術を受けたが、リュウさんは現在も闘病生活をおくっていて、健康状態が安定しないという。「ときどき倒れて、病院に搬送されて、一命をとりとめるということもあった。一緒に暮らしていなければ、彼女は多分亡くなっていた」(代理人の指宿昭一弁護士)

●サディクさん「愛する妻の命を守るために残りたい」

この日の判決後、サディクさんと指宿弁護士は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。指宿弁護士は、判決について「人道や人権に配慮した判断としてありえるのか、とても疑問だ」と批判した。

サディクさんは、パキスタンから逃れてきた経緯を説明したうえで「わたしの愛する奥さんは、乳がんだから、いつまで生きられるかわからないから、自分の妻の命を守るために、人間として。自分のためだけで日本に残らない」とうったえた。

サディクさんは2007年10月、不法在留と認定されたことから、法務大臣に対して、異議申し立てと在留特別許可の申請をおこなっていたが、名古屋入国管理局長から2007年11月、「異議に理由がない」という裁決を下されて、退去強制令書が発付された。

そのため、サディクさんは繰り返し「再審情願」(退去強制令書が出ている場合、その撤回を求める手続き)を申し立てている。また、かつて働いた会社の社長からは「息子となってくれ」と言われて、今年に入って養子縁組が成立している。

●入管法「改正」の影響は?

現在、出入国管理法(入管法)の「法改正」が国会で審議されているが、もし法案が通過した場合、サディクさんにどのような影響があるのだろうか。記者会見でこのような質問があがると、指宿弁護士は次のように答えた。

「サディクさんは、強制送還の対象になっているが、納得せずに、再審情願というかたちで入管に在留特別許可をもとめつづけている。

ところが、入管法が変わってしまうと、そういう状態の人に退去命令が出て、それを拒否すると犯罪になってしまう。がん闘病中の妻と助け合っている中で、彼が収監されて刑務所にいくことは、妻の命を奪うに等しい。

現在の入管法も非常に悪法で、外国人の人権や人道に配慮したものではない。さまざまな軋轢がうまれている。それをよくするのなら大賛成だが、むしろ悪くする法案が通るということは、今これほど苦しんでいるサディクさんのような人が、もっとひどい状況に陥ることになるということだ」

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