4213.jpg
大阪市が宿直職員の「仮眠」に賃金支払い、なぜ労基署は労働時間と判断したのか?
2016年05月11日 10時51分

大阪市は4月25日、市内全24区で働く非常勤の宿直職員ら約100人に対し、未払い賃金があったとして、請求権が残っている過去2年分の賃金を支払うと発表した。仮眠時間が実質的な労働時間になっていたといい、労働基準監督署の指摘で分かった。

市によると、業務は2人1組で、夜間や休日に戸籍の届け出などを受ける内容。宿直の場合、勤務時間は午後5時半から翌午前9時までで、このうち午前0時から6時までは交代で仮眠が取れることになっていた。しかし、実際は来客があると2人で対応することもあったことから、労基署はこの時間帯を労働時間と判断。賃金を計算し直すと、大阪府の最低賃金を下回るため是正勧告していた。

職員が不眠不休で働いていたわけではないのに、なぜ労基署は仮眠時間をすべて労働時間と判断したのだろうか。労働問題にくわしい加藤英男弁護士に聞いた。

大阪市は4月25日、市内全24区で働く非常勤の宿直職員ら約100人に対し、未払い賃金があったとして、請求権が残っている過去2年分の賃金を支払うと発表した。仮眠時間が実質的な労働時間になっていたといい、労働基準監督署の指摘で分かった。

市によると、業務は2人1組で、夜間や休日に戸籍の届け出などを受ける内容。宿直の場合、勤務時間は午後5時半から翌午前9時までで、このうち午前0時から6時までは交代で仮眠が取れることになっていた。しかし、実際は来客があると2人で対応することもあったことから、労基署はこの時間帯を労働時間と判断。賃金を計算し直すと、大阪府の最低賃金を下回るため是正勧告していた。

職員が不眠不休で働いていたわけではないのに、なぜ労基署は仮眠時間をすべて労働時間と判断したのだろうか。労働問題にくわしい加藤英男弁護士に聞いた。

●「使用者の指揮監督下」にあったかどうか

「労働時間とは、端的に言えば、『使用者の指揮監督下にある時間』を言います。例えば、『リフレッシュタイム』など、あたかも休憩時間であるかのような名称で呼ばれていても、実質的に使用者の指揮監督下にあれば、それは労働時間とされます」

具体的には、どのような場合が指揮監督下にあるとみなされるのだろうか。

「事実上、使用者の言うことを聞かなければならない状態にある場合です。例えば、使用者が『ちょっとこっち来て、これやって』と言ったら、労働者は事実上従わないわけにはいきません。この場合、作業している時間だけでなく、その時間帯全体が労働時間とされます。なぜなら、その時間帯全体にわたって、労働者はおちおち休んではいられない、気が休まらない状態にあるからです」

今回の大阪市の場合はどうだろうか。

「本件の宿直職員は、仮眠時間中(午前0時~6時)に来庁者があれば、仮眠を中止して業務に当らざるを得ないという実態があったといいます。

このような実態から、使用者側は宿直職員に対して、仮眠時間中であっても多数の来庁者があれば業務をするように期待し、あるいは黙示的に命じていた。そして、宿直職員は、それに従わざるを得ない状態で、おちおち休んでいられない状態にあった、と考えられます。

そのため、労基署は仮眠時間中も実質的に『使用者の指揮監督下』にあったと判断し、実際の作業時間だけでなく、この時間帯全体を労働時間と認めて、給与を再計算すべきだと指導したのです。

似たような問題は宿直警備員、介護職、タクシードライバーにも起こり得ます。ただし、実質的に『使用者の指揮監督下』にあったと言えるかどうかは、それぞれの労働者の置かれた状態や実態によります。

また、今回は宿直の事例でしたが、実質的に使用者の指揮監督下にあったかどうか、という考え方は、仮眠時間だけでなく、日中の休憩時間にも当てはまります」

加藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る