4282.jpg
尾木ママが批判する武雄市の「反転授業」 子どもの「教育を受ける権利」は大丈夫?
2014年04月03日 11時42分

学校で教えてもらい、家で復習する。従来の学校でごく当たり前のように行われてきた授業形態を180度逆転させた「反転教育」を、佐賀県武雄市の公立小学校が、この春から始める。

「反転授業」を受ける児童は、まず授業の前に自宅でiPadなどを使ってビデオを見ることで「新しい知識」を獲得する。教室での授業はその知識を応用・発展させたり、不足点を補う場所になる。こうすることで、単なる知識の詰め込みで終わっていた従来型の授業よりも、より効果の高い教育が実現できるという触れ込みだ。

一方で、この反転授業に疑問を投げかける人もいる。「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹氏は「高校・大学レベルの方法論」と指摘。学校の「責任放棄」だとして、ブログで痛烈な批判を展開した。

たしかに「自宅での予習」を前提とする教育がうまくいくかどうかは、それぞれの子どもの「家庭での学習環境」に大きく左右されそうだ。こうした手法の導入が、子どもから「教育を受ける権利」を奪う危険性はないのだろうか。南川麻由子弁護士に聞いた。

学校で教えてもらい、家で復習する。従来の学校でごく当たり前のように行われてきた授業形態を180度逆転させた「反転教育」を、佐賀県武雄市の公立小学校が、この春から始める。

「反転授業」を受ける児童は、まず授業の前に自宅でiPadなどを使ってビデオを見ることで「新しい知識」を獲得する。教室での授業はその知識を応用・発展させたり、不足点を補う場所になる。こうすることで、単なる知識の詰め込みで終わっていた従来型の授業よりも、より効果の高い教育が実現できるという触れ込みだ。

一方で、この反転授業に疑問を投げかける人もいる。「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹氏は「高校・大学レベルの方法論」と指摘。学校の「責任放棄」だとして、ブログで痛烈な批判を展開した。

たしかに「自宅での予習」を前提とする教育がうまくいくかどうかは、それぞれの子どもの「家庭での学習環境」に大きく左右されそうだ。こうした手法の導入が、子どもから「教育を受ける権利」を奪う危険性はないのだろうか。南川麻由子弁護士に聞いた。

●予習できない児童への配慮は十分か

「反転授業を導入したからといって、十把一絡げに『学習権』が侵害される、つまり憲法で保障されている『教育を受ける権利』が侵害されると、決めつけることはできません。

しかし、やり方しだいで、子どもの学習権の侵害となってしまう危険もはらんでいる点には、注意が必要でしょう」

南川弁護士はこのように指摘する。どんな点に注意すべきなのだろうか。

「公立の小学校は、多種多様な家庭環境・意欲・学力の生徒が集まる公教育の場ですから、なかには自宅予習をこなすのが難しい生徒もいます。また、今回の武雄市のケースでは市が無償でiPadを配るようですが、自宅学習用の端末の費用が家庭の負担になる場合は、端末を持つことができない児童も出てくる可能性もあります。

もし、教室での授業において、そうした児童への配慮が一切なされなければ、児童は応用的な授業に全くついていけず、結果的に学びの機会を奪われることになりかねません。

つまり、反転授業を取り入れるのであれば、予習していない児童にも配慮した授業の進め方、教室外予習の支援による家庭の負担軽減、魅力的でわかりやすい自宅予習用コンテンツと端末の提供、といった創意工夫が必要となります」

小学校における公教育という観点からすれば、様々な事情で「予習できない児童」の存在を無視するわけにはいかないだろう。

●実情に合わせた実践と検証が必要

逆に言うと、そうした取り組みが奏功すれば、公立小学校での「反転授業」がうまくいく可能性もあるのだろうか。

「もし、こうした創意工夫に満ちた取り組みがうまく行けば、児童に自宅学習の習慣を身につけさせたり、創造的でより教育効果の高い授業が実現できる可能性もあると思います。しかし、ただでさえ忙しい現場教員の過度な負担増にならないか、心配する声もありますね。

反転授業が成功するかどうかは、『やり方しだい』という側面がありますので、今後は教育現場の実情に即した形で実践を積み重ねたうえで、メリットとデメリットの両面を検証していくことが求められると思います」

南川弁護士はこのように述べ、子どもたちの学習権を守るためには、反転授業の内容や成果をしっかりと検証していく姿勢が不可欠だと指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る