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「裁判所は土日も開いたらどうか」片山善博・元総務相が提案(司法シンポ報告5)
2014年07月11日 11時17分

日弁連などが開いたシンポジウム「いま司法は国民の期待にこたえているか」(6月20日)には、大学教授や経営者、政治家など各界の論者が登壇して、それぞれが考える「民事司法の課題」を語った。

元鳥取県知事で、元総務相の片山善博氏は、「待機児童問題」が大きく動き出したきっかけは、母親たちが行政不服審査法の手続きに入ったことだったとして、司法が行政に与える影響の大きさを強調した。

また、弱い立場の人たちでも利用しやすいような「司法」にする必要があるとして、裁判所を土日に開くことや司法教育に力を入れることを提案した。

日弁連などが開いたシンポジウム「いま司法は国民の期待にこたえているか」(6月20日)には、大学教授や経営者、政治家など各界の論者が登壇して、それぞれが考える「民事司法の課題」を語った。

元鳥取県知事で、元総務相の片山善博氏は、「待機児童問題」が大きく動き出したきっかけは、母親たちが行政不服審査法の手続きに入ったことだったとして、司法が行政に与える影響の大きさを強調した。

また、弱い立場の人たちでも利用しやすいような「司法」にする必要があるとして、裁判所を土日に開くことや司法教育に力を入れることを提案した。

●待機児童問題が「大きく動いた」きっかけは・・・

司法が潜在的に、国民の期待に応えた出来事がありました。それは、保育所の待機児童問題です。

待機児童問題は、ずっと前からある問題です。なぜ、これが急にクローズアップされて、事態が動き出したかというと、杉並区のお母さん方が「もう我慢できない。出るとこに出よう」と、行政不服審査法の手続きに入ったからです。

それまでは、市会議員に頼むとか、市役所に陳情するとか、非常にアナログな、旧式なやりかたをしていました。有力な市会議員に頼めば、口ききで入れてもらえることもあります。でもそれでは、何の解決にもなっていません。

ひとりが保育施設に押し込まれれば、ひとりが押し出されるだけです。定数を増やしていないのだから当たり前です。杉並区のお母さん方は「こんなことではだめだ」と行政不服審査法の手続きに入ったんです。これで、行政の対応がピリッとした。それまで行政はたかをくくっていたのです。

行政不服審査の手続きに入ると、最終的には訴訟に行く可能性があります。区役所は「訴訟になったら負ける」と、心配していた。だから、ピリッとしたのです。

地方自治は「民主主義の学校」といいますが、民主主義を具現化するときに、その後ろ盾に公正で機能的な司法があるかないかでは、大きな違いとなります。

●司法が「脅し」に使われることもある

一方、もっともっと次元の低い話で、「司法が国民の権利を侵害している」場合もあります。

鳥取県知事時代に町内会に出たとき、「知事さんこんなハガキが来てるんです」と、おばあさんが心配して言うんです。「何日までに払え、払わないと司法の手続きに入る」という架空請求のはがきです。ほうっておけばいいんですけど、おばあさんは心配して「裁判所に引きずり出されたらどうしよう。払ったほうがいい」となるんです。

国民の権利を守るはずの裁判が、脅しに使われているんですね。「訴えるぞ!」と言われたら、本当は債務がないのに払ってしまう。そういう状況が地域社会にはあるんです。

県庁でもそうでした。行政をやっていると、理不尽なことがたくさんあります。「なんでこんなものに許可出したんだ?」と職員に聞くと、「実は、やかましい住民がおりまして、何度ルール説明しても聞く耳をもたず、最後は訴えるぞと言います。それは困るので・・・」と言います。「県庁を訴えるぞ!」といえば、職員も知事も、ビビってしまう。それでルールを曲げて、「まあまあ」としていると不公正なことになる。

そこで、私が知事になったとき、「訴えるぞ!」と言われたら、「どうぞ訴えてください」と答えることにしたんです。そうしたら、訴訟もちょくちょくありましたが、ほとんどの人が消えました。「おまえらは冷たい、ワシの気持ちがわかってない」と捨て台詞を残して(笑)。職員は「変ですね」と言ってました。

●利用しやすい司法を整えるのは「政権の義務」

それから、当時の鳥取には、弁護士が20人くらいしかいなかった。法的トラブルの相談機関や弁護士会などが集まって、県内の状況を調べたら、弁護士が圧倒的にたりないということがわかりました。そこで、弁護士会と相談して、もっと弁護士を増やしましょうということになりました。県が弁護士の誘致をしたり、弁護士が新しく事務所を出すときは補助金を出したりということもしました。

当時は、司法制度改革をやろうとしたときでしたから、鳥取県での取り組みを紹介したり、問題提起もしました。そうして、裁判員制度ができたとか、労働審判ができたとか、いろんなことができてよかった。その労働審判も、裁判所の本庁では扱っているけど、支部ではごく例外的にしか扱っていません。そうすると、国民が裁判や労働審判の便宜を受けようとしても、なかなか縁遠いのです。

「わからない」という問題もあります。弁護士さんに頼んだら、いくら取られるのか「わからない」。値段のついてない寿司屋に入るようなものですね。また、そもそも法的手続きをどうしたらいいのか、自分がどういう状況におかれているのかすら「わからない」。もっと司法教育とか、消費者教育とか、司法制度の広報などが必要です。

裁判所は土日も開いたらどうかと思います。自治体は夜間や休日でも、いろいろなことをしています。人も増やさなければいけませんが、そうしたことも含めて、いろいろなことを議論していければいいと考えています。

当座、われわれの努力や工夫でできることでは、たとえば、司法教育や司法の広報は、自治体と連携することでかなり進むと思います。ただ、裁判官の数を増やすとか、労働審判の窓口を増やすとかというのは、現場の創意工夫だけではできません。予算を増やすなど、国策としてキチンとしてほしいです。

安倍内閣による規制緩和で、競争が今まで以上に起こるようになると、必ずトラブルや弱い立場の人が出てきます。弱い立場の人が泣き寝入りする不公正な社会ではいけません。競争原理を導入し、規制を緩和するというような政治であればこそ、ベーシックな部分として、利用しやすい司法制度の仕組みを整えるのが、政権の義務ではないかと考えています。

(弁護士ドットコムニュース)

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