PTAにまつわるトラブルに関して、弁護士ドットコムニュースが読者に体験談をLINEで募ったところ、現役の保護者や経験者から多くの反応が寄せられました。
半強制的に加入させられたり、会費の使い道に納得できなかったり──。寄せられた声の数々は、今のPTA活動にさまざまな問題があることを示しています。
これらのエピソードをもとにPTAの問題点や課題を整理しました。
●「会費はどこへ?」会計のブラックボックス化と公費混同の疑念
PTAについて、多くの保護者が抱く不信感の一つが、会費の使い道に対する不透明さです。
「学校の周年行事費として毎年徴収されている。その金額で、校庭に鉄棒を設置したり、ステージの緞帳(どんちょう)を購入している。校長が自由にそのお金を使っている感じがします」(東北地方の50代男性)
公費とPTA会費の混同も疑問を持たれやすいようです。
千葉県佐倉市の40代女性は、学校と保護者の連絡用に導入されている「マチコミ」というメール配信システムについて、教育委員会の予算で導入されているにも関わらず「PTAからのお知らせや役員募集、PTAイベントの案内など、PTA活動に関する内容も学校からの『メール』として一斉配信されている」と指摘。
「PTAは任意加入の独立した団体であるにもかかわらず、公費で運用されているシステムをPTAが便乗的に利用している現状に強い違和感があります」とうったえます。
同様に「PTA会費から学校の先生の家庭訪問交通費(本来は公費のはず)が支払われている」「学校の備品購入費がPTA会費から支出されている」といった声も複数寄せられました。
兵庫県姫路市の40代女性からは「学校行事の来賓祝儀をPTAが受け取ったことにして領収書をつくり、祝儀の中身の金は学校の裏金へ」という衝撃の告白がありました。
●「子どもが人質」「免除の裁判」“強制加入”と恐怖の役員決め
「任意であることの説明がなく、入会届もなく退会について周知もされておらず、役員決めで勝手に役員にされて辞退及び退会を申し出たら代わりを探せと強要された」(九州地方の30代女性)
「PTAは任意団体」という原則は、現場ではしばしば無視されているようです。
東京都練馬区の40代男性は、「入会したい人が手を上げるのが任意ということでは?」「入会届はないのか?」と質問しましたが、なしのつぶて。
周囲からは「参加を協力しない人がいるのはどうか⁉︎」と「参加しない人=悪」であるかのようなチラシを配布された経験を語ります。
保護者が警戒するのが、役員を決める際の話し合いです。
福岡県の50代女性は「役員決めは『根回し』と『強制』が凄まじかった」と振り返ります。
東北地方の40代女性は「入学式終了後、親がクラスごとに分けられ、役員が決まるまで入学式の集合写真が撮れないという状態でした。地獄の時間でした」。
大阪府茨木市の30代男性は、役員選出の場で「できない理由を皆の前で説明してください」と求められ、その光景を「免除の裁判」と表現します。
東京都内の50代女性は「子どもという人質がいる以上、親のせいでいじめにあってはいけないと我慢の一言につきます」と断れない保護者の苦しい胸の内を明かしました。
このほか、PTAを退会したり非会員になったりした家庭の子どもが学校で配布物をもらえなかったり、登校する際に複数の子どもたちで作る班でいじめのターゲットになったりするといった報告もありました。
写真はイメージです(みんみんみん / PIXTA)
●「なぜ私の情報がPTAに?」個人情報の扱いに不信感
PTA活動における個人情報の取り扱いにも、大きな疑問符がついています。
「入学前に、登校班を編成する地区委員の役員が自宅を訪れ集団登校について説明した。その際、役員は『登校班名簿』を持参しており、そこには私の子どもだけでなく同じ班の子どもの学年、性別、氏名、住所、マンション番号、連絡先が記載されていた」(大阪府茨木市・30代男性)
こんな体験談を寄せた男性によると、学校にしか提供していないはずの個人情報が同意なくPTAの地区委員に渡っていました。学校の校長からは「例年のこと」と説明されたといいます。
●「陰口」「パワハラ」…PTAで疲弊する保護者たちの叫び
PTAを舞台にした人間関係も敬遠される理由のようです。
千葉県の50代女性は、学校祭の準備でコンニャクの切り方を注意された若い母親をかばったところ、無視されたり、陰口を言われたりするようになったといいます。
また、大阪府の50代男性は、PTAの事務局長に就任したものの、引き継ぎが不十分で、そのうえ古参役員から細々したことを指摘され、他のメンバーは見て見ぬふりという孤立無援の状況に置かれました。
横浜市の40代前半女性は、運動会の撮影でPTA役員から「長時間にわたり、中腰もしくは座りながらの撮影」を強要され、足を痛めて通院する羽目に。
「(PTA役員が)ここぞとばかりに権力をふりかざしてPTA委員をこき使い、高圧的に命令するばかりです」と憤りを隠しません。
●「もうPTAいらない」教師からも苦言
「組織はいらない。もしくは見直すべきです」。新潟市の70代男性はそう強調します。
京都の30代男性からは「共稼ぎでないと生活できない下流層が大半なのでもうPTA活動は無理です」という声が寄せられました。
今よりも専業主婦が多かった過去の仕組みを現代に合わせようとする部分にもミスマッチが生じているのかもしれません。
東京都足立区の30代女性は、会長として「PTAの任意加入」を徹底したところ、参加世帯が100世帯から3世帯に激減。その結果、参加している世帯の保護者から文句を言われたといいます。
学校の先生からも苦言が。大阪の50代教師は「PTAは誰もやりたがらず、罰ゲームになっている」と打ち明けます。
「引き受けてくれる親はたいていモンスターペアレントに近い人が多い。教員も保護者も疲れているので、なくせばいいと思う。金銭の管理がずさんであるし、なんのために存在しているかわからない」
●デメリットを指摘する声も「親として育つ機会がない」
否定的な意見が多くを占める中、PTAがないことのデメリットを指摘する声もありました。
東日本大震災の被災地に住むという40代女性は次のような悩みを打ち明けます。
「PТA連絡協議会がないために、学校や教育委員会へ家庭から意見を言うのは個人ごとになってしまう。公務員の家庭とそれ以外の家庭の情報格差がまったく縮まらず、保護者として親が育つ機会がない」
今回寄せられた声は氷山の一角かもしれませんが、PTAのあり方に疑問を持つ人が多いのはたしかなようです。
今一度立ち止まって、時代に合わせた形を模索するときかもしれません。