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米国法人のブログサービス「FC2」への発信者情報開示請求はいかにして実現したか
2013年02月26日 21時44分

日本国内のユーザー向けにブログや動画などのウェブサービスを展開する「FC2」。非常に多くの利用者を抱え、ネットの中での知名度も高い。その事業内容から、日本人が経営に関わっているとみられているが、本社が米国のネバダ州ラスベガスにあり、事業所も海外にあるとされているため、その実態はよく分かっていない。

サービスを利用するだけならば、それでも問題はない。しかし誰かのブログで事実無根のことを書かれて名誉毀損の被害にあった場合に、裁判所を通じた解決を図ろうとすると 途端に困難が生じる。米国の会社に対して米国で裁判を起こすのは、普通の人にとってとても難しいことだからだ。

●新制度によって、外国法人にも日本で裁判を起こせるようになった

そこで、被害者としては日本国内で裁判を起こしたいと考えるわけだが、これまでは国内に事業所や営業所をもたない外国法人に対しては、それが非常に困難だった 。ところが、2011年に民事訴訟法が改正され、そのような外国法人であっても、日本において事業を行っていると認められれば、日本国内で裁判を起こすことが可能になった。

そして2013年2月6日、一般に知られている限りでは、新制度の「初適用」とみられる決定が、東京地裁からFC2に対して発せられた。米国法人であるFC2に対する裁判を日本国内で起こすことが認められ、FC2ブログで名誉毀損行為を行ったとみられるユーザーの「発信者情報」を開示するように命ずる仮処分決定が下されたのだ。

FC2に対する発信者情報開示請求はいかにして実現したのか。原告の代理人である弁護士法人港国際グループ最所義一弁護士に話を聞いた。

●FC2は当初、削除要求に応じていたが、途中から無視するようになった

――今回のFC2に対する請求のもとになった事案はどのようなものですか?

開示の対象となったのは、ある個人が「FC2ブログ」を利用して開設しているブログです。このブログで、依頼者に対する誹謗中傷行為が重ねられていました。

まず警察に対して刑事告訴を行い、捜査もされたのですが、FC2が途中から情報提供を行わなくなったと聞いています。

一方、FC2は当初、ブログ記事の削除要請に応じていたのですが、投稿者が確信犯的に同様の内容のブログの掲載を続けていたところ、途中からFC2は「権利侵害が明らかでない」として、削除要求を無視するようになりました。

そこでやむなく、発信者情報開示の仮処分命令の申立を行うことになったのです。

今回の発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法4条に基づく請求です。請求が認められるためには「権利侵害が明らかであること」が必要ですが、仮処分の決定が出たということは、「名誉毀損表現があったという疎明がなされた」と裁判所が認定したわけです。

――FC2のような米国法人に対する裁判はこれまで難しかったのでしょうか?

日本国内で裁判を起こすためには、日本国内の裁判所 に裁判管轄が認められなければなりません。裁判所の管轄については民事訴訟法4条で定められています。外国法人でも、日本に主たる事務所か営業所がある場合や、代表者や主たる業務担当者の住所が日本にある場合であれば、日本国内の裁判所に管轄があることになるのですが、そのいずれでもなければ、日本国内で裁判を起こすこと が非常に困難だったのです。

ところが、日本で事業を展開しているとみられるのに、その業務に関する裁判を拒絶できるのは公平でないとして、民事訴訟法が改正され、同法の中に「3条の3第5号」という条文が新設されたのです。そして、2012年に施行されました。

今回は、この民事訴訟法3条の3第5号及び10条の2 のほか、民事保全法11条などにもとづいて、東京地裁に管轄を取得することができ、その結果、FC2に対して発信者情報開示の仮処分命令が発令されました。

●名誉毀損が明らかな場合は、発信者情報の開示請求に応じるべき

――裁判を起こしたあと、FC2の対応はどのようなものでしたか?

今回は前例のないケースで、裁判所としても慎重な対応をする必要があったうえ、アメリカの会社ではあるものの日本人弁護士を選任する可能性があることから、東京地裁は、ネバダ州にあるとされるFC2の本店所在地へ呼び出しを行いました。呼び出しと準備のために、3週間の期間が設けられました。

しかし、FC2からは誰も出席することはなく、当方の言い分がそのまま認められることになりました。そして、仮処分命令発令後、FC2は発信者情報を開示いたしました。

――今後、FC2にはどのような対応を取ることを望みますか?

ブログでの名誉毀損が問題となった場合には、大きく言って、「削除」と「発信者情報開示」という2つの請求をブログ運営会社に行うことが考えられますが、「削除」については、表現の自由との兼ね合いがあり、書かれた側が削除を要求したからと言って、無条件に削除すべきとまでは考えていません。

しかし、名誉毀損が明らかな場合、FC2などのブログサービスの運営会社は、「発信者情報の開示」には応じるべきだと思います。無責任な表現行為を防止し、発信者に責任と自覚を持たせるためにも、相応の根拠と証拠を提出した場合には、少なくとも一時的には 送信防止措置を講じた上で、発信者情報の開示を行うべきだと考えています。

匿名を傘にして一方的に誹謗中傷行為を行うことは、フェアではありませんから。

(弁護士ドットコムニュース)

日本国内のユーザー向けにブログや動画などのウェブサービスを展開する「FC2」。非常に多くの利用者を抱え、ネットの中での知名度も高い。その事業内容から、日本人が経営に関わっているとみられているが、本社が米国のネバダ州ラスベガスにあり、事業所も海外にあるとされているため、その実態はよく分かっていない。

サービスを利用するだけならば、それでも問題はない。しかし誰かのブログで事実無根のことを書かれて名誉毀損の被害にあった場合に、裁判所を通じた解決を図ろうとすると 途端に困難が生じる。米国の会社に対して米国で裁判を起こすのは、普通の人にとってとても難しいことだからだ。

●新制度によって、外国法人にも日本で裁判を起こせるようになった

そこで、被害者としては日本国内で裁判を起こしたいと考えるわけだが、これまでは国内に事業所や営業所をもたない外国法人に対しては、それが非常に困難だった 。ところが、2011年に民事訴訟法が改正され、そのような外国法人であっても、日本において事業を行っていると認められれば、日本国内で裁判を起こすことが可能になった。

そして2013年2月6日、一般に知られている限りでは、新制度の「初適用」とみられる決定が、東京地裁からFC2に対して発せられた。米国法人であるFC2に対する裁判を日本国内で起こすことが認められ、FC2ブログで名誉毀損行為を行ったとみられるユーザーの「発信者情報」を開示するように命ずる仮処分決定が下されたのだ。

FC2に対する発信者情報開示請求はいかにして実現したのか。原告の代理人である弁護士法人港国際グループ最所義一弁護士に話を聞いた。

●FC2は当初、削除要求に応じていたが、途中から無視するようになった

――今回のFC2に対する請求のもとになった事案はどのようなものですか?

開示の対象となったのは、ある個人が「FC2ブログ」を利用して開設しているブログです。このブログで、依頼者に対する誹謗中傷行為が重ねられていました。

まず警察に対して刑事告訴を行い、捜査もされたのですが、FC2が途中から情報提供を行わなくなったと聞いています。

一方、FC2は当初、ブログ記事の削除要請に応じていたのですが、投稿者が確信犯的に同様の内容のブログの掲載を続けていたところ、途中からFC2は「権利侵害が明らかでない」として、削除要求を無視するようになりました。

そこでやむなく、発信者情報開示の仮処分命令の申立を行うことになったのです。

今回の発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法4条に基づく請求です。請求が認められるためには「権利侵害が明らかであること」が必要ですが、仮処分の決定が出たということは、「名誉毀損表現があったという疎明がなされた」と裁判所が認定したわけです。

――FC2のような米国法人に対する裁判はこれまで難しかったのでしょうか?

日本国内で裁判を起こすためには、日本国内の裁判所 に裁判管轄が認められなければなりません。裁判所の管轄については民事訴訟法4条で定められています。外国法人でも、日本に主たる事務所か営業所がある場合や、代表者や主たる業務担当者の住所が日本にある場合であれば、日本国内の裁判所に管轄があることになるのですが、そのいずれでもなければ、日本国内で裁判を起こすこと が非常に困難だったのです。

ところが、日本で事業を展開しているとみられるのに、その業務に関する裁判を拒絶できるのは公平でないとして、民事訴訟法が改正され、同法の中に「3条の3第5号」という条文が新設されたのです。そして、2012年に施行されました。

今回は、この民事訴訟法3条の3第5号及び10条の2 のほか、民事保全法11条などにもとづいて、東京地裁に管轄を取得することができ、その結果、FC2に対して発信者情報開示の仮処分命令が発令されました。

●名誉毀損が明らかな場合は、発信者情報の開示請求に応じるべき

――裁判を起こしたあと、FC2の対応はどのようなものでしたか?

今回は前例のないケースで、裁判所としても慎重な対応をする必要があったうえ、アメリカの会社ではあるものの日本人弁護士を選任する可能性があることから、東京地裁は、ネバダ州にあるとされるFC2の本店所在地へ呼び出しを行いました。呼び出しと準備のために、3週間の期間が設けられました。

しかし、FC2からは誰も出席することはなく、当方の言い分がそのまま認められることになりました。そして、仮処分命令発令後、FC2は発信者情報を開示いたしました。

――今後、FC2にはどのような対応を取ることを望みますか?

ブログでの名誉毀損が問題となった場合には、大きく言って、「削除」と「発信者情報開示」という2つの請求をブログ運営会社に行うことが考えられますが、「削除」については、表現の自由との兼ね合いがあり、書かれた側が削除を要求したからと言って、無条件に削除すべきとまでは考えていません。

しかし、名誉毀損が明らかな場合、FC2などのブログサービスの運営会社は、「発信者情報の開示」には応じるべきだと思います。無責任な表現行為を防止し、発信者に責任と自覚を持たせるためにも、相応の根拠と証拠を提出した場合には、少なくとも一時的には 送信防止措置を講じた上で、発信者情報の開示を行うべきだと考えています。

匿名を傘にして一方的に誹謗中傷行為を行うことは、フェアではありませんから。

(弁護士ドットコムニュース)

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