弁護士ドットコムニュースが「地域の独自ルール」について情報を募集したところ、自治会やPTA、賃貸契約にまつわる"理不尽なエピソード"が数多く寄せられました。
本来は任意のはずの組織への「事実上の強制加入」や、不透明な集金ルール、参加を断りにくい風習など、どれも思わず「うちの地域も…」と共感してしまうような内容ばかり。
寄せられた体験談の一部を紹介します。
●「協力金という名の寄付」自治会を辞めても続く"半強制"の集金
「もう怖いので、そろそろ限界です」
長野県上伊那郡に住む50代の女性は、こう声を震わせます。
自治会をすでに退会したにもかかわらず、毎年秋になると数名の役員が自宅を訪ね、「協力金」と称して寄付を求めてくるといいます。
「『道路使ってるでしょ?街灯ついてるよね?』と、振込先を書いた紙を置いていくんです。断っても、夜に何度も何度も『ピンポン』とインターホンを鳴らされます。『まだお支払い頂いていませんが』と男性が一人暮らしの私の家に来るんですよ」
女性は、ゴミ収集場所の維持費として3000円だけ振り込んだところ、「一部しか振り込まれていませんが」と再び訪問を受けたといいます。
現在は居留守を使ってやり過ごしているものの、「いよいよ払わざるを得ないのかもしれません」と追い詰められています。
●「会費の半分が神社へ」「戸建ては高い」…不透明な会費の運用
自治会の存在意義に疑問を抱く声も少なくありません。
大分県別府市の60代女性は、8年ほど前、建て売り住宅を購入した際、「自治会への加入」が必須だとされて、仕方なく加入しました。
しかし、目立った行事などはなく、組長が順番に回ってくるだけの現実に「もう自治会をやめてもよいのでは?と思っています。何のための自治会?って感じです」。
集められた会費の用途にも不満が多く聞かれます。東海地方の40代男性は、町内会の予算の半分以上が神社への奉納や行事に使われているとして、こう指摘します。
「神社はあくまで一宗教法人なので、町内会という公的性格のある組織ではなく、神社の奉賛会や氏子会などに任意で協力を求めるべきだと思います。地域は大事にしたいけど、宗教的な協力はしたくない。頭を悩ませています」
また、静岡県熱海市に住む60代女性は、約20年前に戸建てに引っ越してきた際、町内会の会費がアパートより100円ほど高かったといいます。
理由を尋ねると「戸建ての人はお金があるから」と言われ、「『そんなバカな』と思って入りませんでした」と証言しました。
写真はイメージ(ワンセブン / PIXTA)
●もはや現代の"ムラ社会"? 時代錯誤な行事への強制参加
「何かにつけて祖先が誰だったかが重視される"封建制度"のような空気が残っています」
新潟県下越地方に実家があるという50代女性は、地域に根強く残る「ムラ社会」的な雰囲気に嫌悪感を抱いています。
自治会長には"ムラの有力者"が就き、祭りや伝統行事への参加は"当然"とされる。側溝掃除や草取り、ゴミ収集所の掃除ならまだしも、消防団の活動、小学校や保育園の運動会、さらには神社の祭り、七夕行事、サイの神行事と、参加義務が際限なく続くといいます。
女性は、こうしたことが原因で人口流出が加速しているとみています。
●PTA役員決めで"脅迫"まがいの圧力
PTAをめぐるエピソードにも、驚くような声が届きました。
愛知県の50代女性によると、PTA役員選出の際、子どもを通じて名簿が配られ、推薦する人の名前に「◯」をつけるよう指示されたといいます。
名簿の上のほうにある名前が「◯」を集めやすい傾向にあります。女性の名前はいつも上部にあって、毎年候補になるといいます。
仕事の都合で引き受けるのは難しいと学校に相談したところ、「断ると、お子さんに影響しますよ」と"脅迫"めいた言葉を投げかけられたといいます。
やむなく職場の上司に事情を説明し、仕事を調整して役員を務めましたが、「親がPTA役員だったら子どもに何かメリットがあるのでしょうか?そんなこともあってはならないでしょう。強制PTA、訴えることできますか?」と、今も怒りは収まりません。
イラストはイメージ(タカス / PIXTA)
●敷金返還なし?ゴミ袋に記名? 続々と寄せられる"謎ルール"
地域ごとに独自の慣習があるのは事実ですが、「これはおかしいのでは?」という声も少なくありません。
「静岡県西部の風習だと聞きましたが、賃貸の部屋を退去した際、敷金が返ってきません。数カ所を転居しましたが、どこも返ってきませんでした」(静岡県・40代男性)
「町指定のゴミ袋があるのですが、名前を記入しなければなりません。なぜ名前を記入するように決まったのか知りませんが、かえって危険なことがあるのに気がつかないのかな?」(和歌山県・70代女性)
「LPガスの購入先が業者同士で話がついているらしく、自分で選んで電話しても届けてくれませんでした」(静岡県・60代女性)
「地域社会」や「助け合い」の名のもとに、暗黙の強制や不透明なルールがまかり通る現状。こうした声に、地域や行政はどう応えるべきなのでしょうか。