4650.jpg
「働き方改革」残業上限規制、医師は「5年の猶予期間」…どんな事情があるのか?
2017年04月08日 09時15分

政府は3月28日、繁忙月に例外として認める残業の上限を「100時間未満」とすることなどを盛り込んだ働き方改革の実行計画をまとめた。一方で、医師の残業時間の上限については猶予を設ける。

医師についても時間外労働の規制の対象とするが、特殊性を踏まえた対応が必要として、2019年度の導入開始から、医師では5年間猶予される。2年後をめどに、医師の労働時間の上限規制を規制の在り方を検討する。

そもそも医師について残業時間の規制は一般の労働者と異なるのだろうか。残業時間の規制について猶予を設けることにはどのような背景が考えられるのか。鈴木沙良夢弁護士に聞いた。

政府は3月28日、繁忙月に例外として認める残業の上限を「100時間未満」とすることなどを盛り込んだ働き方改革の実行計画をまとめた。一方で、医師の残業時間の上限については猶予を設ける。

医師についても時間外労働の規制の対象とするが、特殊性を踏まえた対応が必要として、2019年度の導入開始から、医師では5年間猶予される。2年後をめどに、医師の労働時間の上限規制を規制の在り方を検討する。

そもそも医師について残業時間の規制は一般の労働者と異なるのだろうか。残業時間の規制について猶予を設けることにはどのような背景が考えられるのか。鈴木沙良夢弁護士に聞いた。

●「医療現場は、個々の医師の長時間労働によって維持されている」

「医師についても、雇用されて賃金が支払われているのであれば労働者にあたるので、労働基準法が適用されます。

労働基準法では、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働者を働かせてはならないことになっています(法定労働時間)。

ただし、現在は労使間で労使協定を結び、行政官庁に届け出ることによって、使用者は法定労働時間を超えた時間外・休日労働を労働者にさせることができるようになっています。いわゆる『36(さぶろく)協定』とよばれるものです。

この『36協定』による時間外・休日労働に対しても、厚生労働省による「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」という制限があるのですが、例外規定があったり、罰則がないことから基準を守らない事業所があったりするなどして長時間の残業が常態化していました。

この度の『働き方改革』はこのような時間外・休日労働に法律で制限を加えようとするものですが、医師についてはこの制限を5年間猶予することが検討されています」

医師についてなぜ別個に考える必要があるのか。

「猶予の理由としては医師に『診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』(医師法19条)という応召義務があり、これとの兼ね合いを検討する必要があるとのことです。

医療現場は、個々の医師の長時間労働によって維持されているという現状があります。

医療機関としては時間外・休日労働の制限をされたとしても、現実問題として直ちに対応できないという実情があることも影響していると考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る