4672.jpg
男性受刑者、歯科検診なしで歯にトラブルも…「これほどの医療初めて」「また来ます」
2019年12月17日 09時42分

男性受刑者が抱える健康に関する悩みでは、腰痛、歯の症状、頭痛が多いことが、民間NPOの調査でわかった。刑務所の受刑者や出所者を支援するNPO「マザーハウス」が12月15日、東京都内でイベントを開き、受刑者の健康実態と健康意識に関するアンケート調査の結果を発表した。

全国56カ所の矯正施設で生活する成人受刑者725人にアンケートを送り、有効回答者数は275人(20〜80代の男性:調査期間は2017年10月から2018年9月)。

「マザーハウス」理事長の五十嵐弘志さんは「受刑者の健康のためには心と身体、両方のケアが必要」とし、自覚症状として挙げられた歯や腰痛の問題をケアするための体制やカウンセリングなどをおこなう必要性を訴えた。

男性受刑者が抱える健康に関する悩みでは、腰痛、歯の症状、頭痛が多いことが、民間NPOの調査でわかった。刑務所の受刑者や出所者を支援するNPO「マザーハウス」が12月15日、東京都内でイベントを開き、受刑者の健康実態と健康意識に関するアンケート調査の結果を発表した。

全国56カ所の矯正施設で生活する成人受刑者725人にアンケートを送り、有効回答者数は275人(20〜80代の男性:調査期間は2017年10月から2018年9月)。

「マザーハウス」理事長の五十嵐弘志さんは「受刑者の健康のためには心と身体、両方のケアが必要」とし、自覚症状として挙げられた歯や腰痛の問題をケアするための体制やカウンセリングなどをおこなう必要性を訴えた。

●自覚症状「腰痛」がもっとも多く、つぎに「歯の症状」

調査研究の責任者を務めた中谷こずえさん(岐阜保健大学看護学部)の報告によると、受刑者にあらわれている自覚症状としては「腰痛」、「歯の症状」、「頭痛」の順に多かった。

また、一般者(一般社会で生活する人)と比較すると、中でも歯の悩みを抱える受刑者が少なくないことも分かった。受刑者は年に1回は健康診断を受けるが、その中に歯科検診は含まれていないという。

受刑者の義歯などを除いた歯の数(現在歯数)は、一般者と比較すると、「20歳代」を除いたすべての年代において低値だった。

歯磨きを2回以上おこなう者も一般者(77.1%)よりも受刑者(60%)が少なかった。日中作業をしている人に対し、昼休みに歯ブラシを持って出かけることが許されなかったり、歯磨きの時間を設けられていなかったりすることなどが理由として考えられるという。

喫煙歴を有する受刑者は8割以上。喫煙は歯の血管の血流を悪くしたり、歯周病を悪化させたりなど歯の症状に影響を及ぼすとされている。

刑務所や少年院などに収容された人に治療(矯正医療)をおこなう場合、医療保険を使用することはできず、すべて国費負担となる。しかし、義歯には適用されないため、手持ちのお金がなければ義歯をつくることはできないという。

●刑務所の中で初めて適切な医療を受けられたという声も

看護師でもある中谷さんは、調査結果を受け、一部の施設で同意を得られた受刑者に対し、通信教育や対面などの方式で、口腔ケアの指導やリラクゼーションなどをおこなっているという。「今後は支援の成果を示したい」とし、「社会復帰をするためには、職業訓練だけではなく、現実的にはその人の健康を支える必要がある」と語った。

イベントには元受刑者や研究者なども参加。留置場や矯正施設で多量の精神安定剤や睡眠薬などが処方される現状があること、工場に行きたくないなどの理由で詐病(仮病)を使う受刑者も少なくないことなどのエピソードが挙がった。

また、矯正医官(刑務所や少年院などの矯正施設で勤務する医師)の小林誠さんによると、受刑者から「これほどの医療を受けたことはない。ここに来て良かった。また来ます」などという声を聞くこともあるという。

小林さんは、受刑者が刑務所に入る前から歯の治療など適切な医療を受けられなかった可能性もあることを指摘し、「社会で彼らがどのような扱いを受けてきたのかも考えるべき。刑務所の中だけの話ではない」とした。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る