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隣家の「もみじの枝」が自宅の屋根に接触した! 勝手に切っても問題ない?
2025年11月22日 09時11分
#隣家トラブル #無断伐採 #内容証明

隣家の庭の木の枝が伸びて、自宅の屋根に接触して困っている、どうにかできないのかーー。そうした相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者によると、隣の家から伸びてきた紅葉の木の枝が、相談者の自宅の屋根の雨どいにかかり、風が吹くたびに音や振動が生じている、虫が屋根に来るなどの状況だそうです。

隣の木の枝が自分の敷地や建物にまで越境してくると、たしかにいろいろな生活上の困りごとが出てきそうです。相談者は、隣家の所有者に枝を切ることを断られた場合、枝を勝手に切ってもよいのでしょうか。

隣家の庭の木の枝が伸びて、自宅の屋根に接触して困っている、どうにかできないのかーー。そうした相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者によると、隣の家から伸びてきた紅葉の木の枝が、相談者の自宅の屋根の雨どいにかかり、風が吹くたびに音や振動が生じている、虫が屋根に来るなどの状況だそうです。

隣の木の枝が自分の敷地や建物にまで越境してくると、たしかにいろいろな生活上の困りごとが出てきそうです。相談者は、隣家の所有者に枝を切ることを断られた場合、枝を勝手に切ってもよいのでしょうか。

●越境した木の枝は「勝手に切れない」のが原則

まず、相談者が心配されている「隣家の了解なしに、はみ出ている部分だけを勝手に切ってしまっても問題ないのか」という点から見ていきましょう。

結論からいうと、隣の木の枝が自分の敷地に越境してきても、原則として勝手に切ることはできません。

民法233条1項では、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」となっています。つまり、枝を切るのは「木の所有者」、この場合は隣家であり、相談者ではないのです。

相談者がはみ出した木をいきなり切ってしまうと、民法上の不法行為責任を問われる可能性もあります。こちらが迷惑しているから切ったのに、逆に損害賠償を請求されてしまうおそれがあるというのは納得がいかないとは思うのですが、避けるべきです。

●所有者が切除に応じない場合の新しい対応方法

そこで、まずは相談者は、隣家の所有者に、伸びた枝を切るように依頼するというステップを踏む必要があります。

では、隣家に頼んでも断られてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

この場合、越境された側が自分で枝を切り取ることができます。

具体的には、隣家(木の所有者)に枝を切るよう催告したのに、相当の期間内に切ってくれないときは、越境された土地の所有者(相談者)がその枝を切り取ることができます(233条3項)。

なお、「相当の期間」とは、基本的には2週間程度は必要と解されています(令和3年4月20日付け参議院法務委員会〔小出邦夫(法務省民事局長)政府参考人発言〕)

ですから、まずは内容証明郵便など、催告した事実と日付がはっきり残る方法で、隣家にもう一度切除を求めることが大切です。

なお、切除にかかった費用については、隣家に請求できる可能性があります。

●こんな対応を考えてみましょう

隣家とのトラブルは、どうしても感情的な対立になりやすく、こじれると関係の修復が難しくなることもあります。ですから、法律的に正しいことを主張する以外の工夫が必要になることもあります。

隣家トラブルで一番良い方法は、「仲良くなること」であるといわれることもあります。これは、仲の良い人なら角が立たないように困りごとを伝えられるということでもありますし、よく分からない人からされると腹の立つことでも、仲の良い人からされると腹も立ちにくいということでもあります。

法的に切除を要求したい場合には、木がどういうふうに境を越えているのか、その状況を記録し、証拠を揃えましょう。枝が屋根や雨樋にかかっている様子、音がする状況、虫の被害などがわかるように、写真や動画を撮影して、日時とともに記録しておくことが重要です。

次に、法的に切除を要求したい場合、相手に対して口頭ではなく、形の残る方法、たとえば内容証明郵便によって催告するべきです。「いつまでに切ってほしい」という期限を明確にして、催告をしたという事実と日付が証拠として残る方法を選ぶことで、その後の対応(民法233条3項の適用など)がしやすくなります。

当事者同士での話し合いが難しい場合は、弁護士に相談することも考えられます。ただ、お金もかかりますし、隣家としても弁護士を立てられればますます感情的になるでしょうから、当事者同士の話し合いで済むならその方が良いでしょう。

最終的な手段として裁判で切除を求めることもできますが、隣家の場合にはこの後も関わっていくことが多いでしょうし、まずは催告に応じてもらうための努力を尽くして、対立を深めずに解決できる道を探ることが大切です。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

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