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深夜、土日も飛び交う日報、「自主的にやってるから問題ない」では済まされないリスク
2017年05月10日 10時02分

会社員が労働基準法に則った環境で働くことは当然だが、中には「もっともっと働きたい」とエスカレートする社員に、会社側がどうブレーキをかければいいのかと悩まされるケースもある。例えば、東京都内のIT系企業の営業部門では、平日の深夜、休日にも営業報告の日報が飛び交い、社内では、この状況に首を傾げている人もいるそうだ。

その1人、ある社員は「転職当初、驚きました。連日、平日は深夜1時ごろまで、休日も日報が飛び交っていますからね」と証言する。当然、営業部門の管理職たちはこの状況を認識しているが、特に手をうつ様子もないのだという。

また別の社員は「営業部員は、ただでさえノルマがあるので、体力があるかぎり、となってしまう。他の社員が猛烈に働く姿を見れば、自分もやらなくてはいけないと強迫観念にかられ、歯止めがきかなくなるのではないか」と懸念している。実際、この社では管理職から「上司の命令ではなく、本人の意思でやっているから問題ない」といった声も聞かれるそうだ。

大手企業などでは、終業時間後の作業を強制的に禁じるような取り組みを始めている。本来、社員のやる気がエスカレートしすぎないよう会社側が対策をとる必要があるのではないだろうか。古屋文和弁護士に聞いた。

会社員が労働基準法に則った環境で働くことは当然だが、中には「もっともっと働きたい」とエスカレートする社員に、会社側がどうブレーキをかければいいのかと悩まされるケースもある。例えば、東京都内のIT系企業の営業部門では、平日の深夜、休日にも営業報告の日報が飛び交い、社内では、この状況に首を傾げている人もいるそうだ。

その1人、ある社員は「転職当初、驚きました。連日、平日は深夜1時ごろまで、休日も日報が飛び交っていますからね」と証言する。当然、営業部門の管理職たちはこの状況を認識しているが、特に手をうつ様子もないのだという。

また別の社員は「営業部員は、ただでさえノルマがあるので、体力があるかぎり、となってしまう。他の社員が猛烈に働く姿を見れば、自分もやらなくてはいけないと強迫観念にかられ、歯止めがきかなくなるのではないか」と懸念している。実際、この社では管理職から「上司の命令ではなく、本人の意思でやっているから問題ない」といった声も聞かれるそうだ。

大手企業などでは、終業時間後の作業を強制的に禁じるような取り組みを始めている。本来、社員のやる気がエスカレートしすぎないよう会社側が対策をとる必要があるのではないだろうか。古屋文和弁護士に聞いた。

●「働きすぎ社員」がもたらす2つのリスクとは?

「今回のケースでは、主に2つのリスクが考えられます。

1つ目のリスクは、長時間労働の負担により、社員に健康上の問題が発生することです。この点についての会社のリスクとしては、社員から安全配慮義務違反等に基づく損害賠償請求を受けたり、労働基準監督署の調査を受けたりすることが考えられます。

2つ目のリスクは、割増賃金の問題です。

労働基準法上、法定労働時間外、深夜及び休日の労働については、会社に割増賃金の支払義務が生じますので、人件費が増加することになります。

なお、今回は詳述しませんが、通達により、会社には社員の労働時間を適正に把握・管理する義務が課せられていますので、会社が残業時間の把握を怠った場合、この義務に反することになり、会社に不利益が生じることがあります。

このような問題点があることから、今回のケースについて、法的な観点からは、『上司の命令ではなく、本人の意思でやっているから問題ない』とはいえないということになります」

それでも社員が「もっと働きたい」として、深夜や休日労働をやめない場合、会社はどのように対応したらよいのだろうか。

「以上のリスクを避けるために、会社としては、社員の残業を減らす工夫をする必要があります。もっとも、その方法については配慮が必要です。

会社としては、仮に社員が残業したいと思ったとしても、そもそも時間外労働が行えない体制を作ることが考えられます。実際に、深夜22時以降は社内のPC端末等が使用できなくするなどの仕組みを導入している会社は増えています。

また、就業規則を整備して、『原則として残業を禁止し、残業をする場合には事前に会社の許可をとる』という許可制を導入する方法もあります」

古屋弁護士は続けて、「しかし、このような方法を採用するだけでは必ずしも十分ではありません」とも指摘する。

「社員からすれば、業務の内容や量は変わらないのに、残業を(原則)禁止されてしまうと、所定労働時間内に業務が処理できず、未処理業務が残ってしまう場合があります。

実際の裁判例でも、会社が残業しないように指示をしていた状況で社員が残業を行った場合に、割増賃金が請求されたケースで、裁判所は、割増賃金の支払を認めるか否かを判断する際に、業務の内容や量を考慮しています。

このような裁判例の考え方からしても、会社としては、残業を禁止した場合に社員が実際に残業をしなくても業務が処理できるように、業務の内容や量を見直す必要があります。

会社と社員、両者にとっての理想の形は、残業をすることなく、所定労働時間内で効率よく業務を処理できることです。そうなれば、休息した上で翌日の勤務に臨める環境が整えられ、社員のモチベーションは維持されやすいでしょうし、会社としても前述の様々なリスクを避けることができます」

(弁護士ドットコムニュース)

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