494.jpg
花火大会が雨で直前中止に…返金してもらえる? 「あだちの花火」では有料観覧席に払い戻し措置
2024年07月27日 08時44分
#返金 #花火大会

7月20日、東京・足立区の荒川の河川敷で開催予定だった「足立の花火」が荒天に伴い直前で中止が決まった。報道によれば、主催者の足立区と一般財団法人足立区観光交流協会には有料観覧席の払い戻し等のために約3000万円の損失が生じたという。

「足立の花火」に限らず、荒天により花火大会が中止となるケースは過去にもあった。このような場合に主催者側は観客に対してチケット代を払い戻さなければいけないのだろうか。荒天中止の場合にチケット代を一切返金しないというルールを設けることはできるのか。観光ビジネスに詳しい浅井耀介弁護士に聞いた。

7月20日、東京・足立区の荒川の河川敷で開催予定だった「足立の花火」が荒天に伴い直前で中止が決まった。報道によれば、主催者の足立区と一般財団法人足立区観光交流協会には有料観覧席の払い戻し等のために約3000万円の損失が生じたという。

「足立の花火」に限らず、荒天により花火大会が中止となるケースは過去にもあった。このような場合に主催者側は観客に対してチケット代を払い戻さなければいけないのだろうか。荒天中止の場合にチケット代を一切返金しないというルールを設けることはできるのか。観光ビジネスに詳しい浅井耀介弁護士に聞いた。

●規約がなくとも主催者は払戻義務を負う

——中止する場合、主催者側は観客に対してチケット代を払い戻さなければいけないのでしょうか

今回の「足立の花火」など、有料観覧席を設ける多くの花火大会では、「開催中止の際はチケット代を返金する」という規約を設けていることがほとんどです。そのため、当該規約に基づきチケット代が返金されることが原則となります。

そのような規約がなかったとしても、民法の「危険負担」の原則に基づき、主催者には観客に対するチケット代金返金義務が生じ得ます。

民法536条1項には、荒天など、主催者(債務者)及び観客(債権者)の双方の責めに帰することができない事由によってイベントを中止せざるを得なくなった場合、観客(債権者)がチケット代金の支払を拒むことができるということが定められています。

この法律に基づき上記のような規約がなかったとしても主催者は観客にチケット代を返金しなければならないのです。

●「返金不可ルール」は消費者契約法に注意が必要

——規約がなければ「危険負担」の原則に基づき主催者がチケット代返金義務を負うとのことですが、規約で「中止に伴う返金は一切不可」というルールを定めることができるのでしょうか

「返金不可ルール」は、前述した民法上のルール(=「危険負担」の原則)よりも観客(=消費者)にとって不利なルールとなりますので、消費者契約法に反して無効となる可能性があります。

もっとも、協賛金へのお礼やふるさと納税の返礼品として有料観覧席を贈呈する場合、その人たちはあくまで「花火大会を応援するために」お金を支出したこととなり、「有料観覧席を購入するために」お金を支出したわけではなくなり(=消費者ではなくなる)、消費者契約法が適用されません。

したがって、協賛金やふるさと納税については「返金不可ルール」を定めたとしても問題となり難く、実際にそのようなルールを定めているケースも多いです。今回の「足立の花火」でもふるさと納税枠のみ払戻しされませんでした。

●協賛金等について「返金不可ルール」を定めることのメリット

——今回は安全のために中止となりましたが、主催する側にとって返金の負担は大きいですね

今回、足立区が中止という判断をしたおかげで荒天による大きな事故は防げました。しかし、「雨天中止の場合は主催者側がチケット代を負担する」というルールがある以上、チケット代返金に伴う多額の損失を嫌がって、荒天の中無理やり花火大会を開催し、結果人命に関わるような大事故につながってしまうおそれも存在します。

この点、協賛金という形でお金を集め、そこに「返金不可ルール」を定めることができれば、主催者側もより人命を優先した中止の判断がしやすくなる、というメリットがあります。

「雨天中止の場合にチケット代払い戻してもらえないのならわざわざ有料観覧席は買わないよ。」と、出資者がなかなか集まらないというデメリットも存在するので、慎重な判断が必要ではあると思いますが、人命優先という主催者側の姿勢は評価されてしかるべきではないかと思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る