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「表現の不自由」騒動、20年前には裁判も…「昭和天皇コラージュ事件」を振り返る
2019年08月05日 15時32分

愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」(津田大介芸術監督)で、慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」などの作品が物議を醸して、企画展「表現の不自由展・その後」が、開幕から3日で中止に追い込まれた。

この企画展では、全国の公立美術館などで公開中止や撤去された作品をあつめて、8月1日から展示していたが、抗議の電話やメールが事務局に殺到していた。さらに、脅迫ファックスが届いたことから、芸術祭の実行委員会は開幕から3日で展示中止を決定した。

問題となったのは、「平和の少女像」のほかに、昭和天皇をモチーフとした展示「焼かれるべき絵」がある。昭和天皇を描いた版画の一部を焼いた作品のほか、版画を焼いて灰にするまでの経過を撮った短い映像作品があったという。

愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」(津田大介芸術監督)で、慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」などの作品が物議を醸して、企画展「表現の不自由展・その後」が、開幕から3日で中止に追い込まれた。

この企画展では、全国の公立美術館などで公開中止や撤去された作品をあつめて、8月1日から展示していたが、抗議の電話やメールが事務局に殺到していた。さらに、脅迫ファックスが届いたことから、芸術祭の実行委員会は開幕から3日で展示中止を決定した。

問題となったのは、「平和の少女像」のほかに、昭和天皇をモチーフとした展示「焼かれるべき絵」がある。昭和天皇を描いた版画の一部を焼いた作品のほか、版画を焼いて灰にするまでの経過を撮った短い映像作品があったという。

●右翼団体の抗議があった「天皇コラージュ事件」

展示中止を受けて、「表現の不自由展・その後」の実行委員会は8月3日、「歴史的暴挙と言わざるを得ません」「一方的な中止決定に対しては、法的対抗手段も検討している」という声明を発表した。

企画展には、ほかにも昭和天皇をモチーフとした作品が展示されていた。富山県出身の芸術家、大浦信行さんの『遠近を抱えて』だ。この作品も過去に、右翼団体から抗議にあって、非公開とされるなどして、「昭和天皇コラージュ事件」という有名な裁判となっている。

●富山県立近代美術館を舞台にした事件だった

判決文によると、「昭和天皇コラージュ事件」は次のようなものだ。

大浦さんは1986年3月、昭和天皇の写真と女性のヌード写真などを組み合わせたコラージュ版画『遠近を抱えて』(14点)を富山県立近代美術館(当時)の展覧会に出品した。展覧会中は「何事もなく公開されていた」という。

県立美術館は同年3月、大浦さんの作品のうち4点を購入して、所蔵することにした。また、6点の寄贈を受けた。

ところが、同年6月、複数の県議会議員が県議会で「不快感を覚えた」と表明したことが大きく報道されたことがきっかけで、問題化した。右翼団体が県立美術館に対して、作品の非公開や廃棄処分を強くもとめる事態に発展した。

こうした状況を受けて、県教育委員会は1993年1月、作品と図録(カタログ)を非公開としたうえで、図録は非売品とした。さらに1993年4月、管理運営上の障害と、昭和天皇のプライバシー侵害のおそれを理由として、作品と図録の売却処分を決定した。

この間、特別閲覧許可の申請があったが、県は不許可処分としていた。

●芸術家「天皇というのは、相当タブーなんだよ」

作者の大浦さんと、作品の鑑賞・図録の閲覧・購入をもとめる住民たちは1994年、「表現の自由」や「知る権利」を侵害されたとして、県を相手取り、損害賠償や、不許可処分の無効確認、作品の買い戻しなどをもとめて提訴した。

1審の富山地裁は1998年12月、(1)天皇のプライバシー権保障は制約を受ける、(2)作品の公開によって、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されたものではない−−として、特別閲覧許可の不許可や、図録の閲覧拒否などの処分は「知る権利」の侵害と判断。原告の請求を一部みとめた。

しかし、2審の名古屋高裁富山支部は2000年2月、不許可処分は、右翼団体による街宣活動などがおこなわれて、「(県立美術館の)管理運営上の支障を生じる蓋然性が認められる」として、「正当な理由」があると判断し、原告の請求を退けた。

大浦さんたちは上告したが、最高裁は2000年10月、作者側の上告を棄却して、判決が確定した。だが、このような司法の判断については批判も少なくなく、今回の企画展になった作品も、「昭和コラージュ事件」を風刺する内容だったという指摘もある。

なお、大浦さんはデジタルメディア『VICE Japan』(2013年4月公開)で「結局、天皇というのは、相当タブーなんだよね」と述べている。

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