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DJが作る「ミックスCD」 さまざまな楽曲の「無断利用」は法的に問題ないの?
2014年02月06日 11時02分

DJがいろんな曲をつなぎあわせて、ノンストップで聴けるようにした「ミックスCD」。欧米発祥で、もともとは路上などで販売されていたものだが、最近は日本のメジャーレーベルが発売したミックスCDが十万枚以上の売上を記録するなど、国内にもかなり浸透してきたようだ。

一方、インターネット上で大量に公開されているミックスCDは、多くの場合『元の楽曲』の権利者の許可を得ないで作成されているとして、以前から論争の的となっている。

ミックスCDを作っているDJの側からは、「原曲そのままではないからOK」「楽曲の宣伝の効果もある」といった声も聞こえてくるが……。他人の楽曲を無断利用してミックスCDを作り、それをネットで公開しても、法的には問題とならないのだろうか。著作権にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

DJがいろんな曲をつなぎあわせて、ノンストップで聴けるようにした「ミックスCD」。欧米発祥で、もともとは路上などで販売されていたものだが、最近は日本のメジャーレーベルが発売したミックスCDが十万枚以上の売上を記録するなど、国内にもかなり浸透してきたようだ。

一方、インターネット上で大量に公開されているミックスCDは、多くの場合『元の楽曲』の権利者の許可を得ないで作成されているとして、以前から論争の的となっている。

ミックスCDを作っているDJの側からは、「原曲そのままではないからOK」「楽曲の宣伝の効果もある」といった声も聞こえてくるが……。他人の楽曲を無断利用してミックスCDを作り、それをネットで公開しても、法的には問題とならないのだろうか。著作権にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●「作詞者・作曲者」の権利を侵害することになる

「ミックスCDの音源をネットで無断公開することは、素材となっているそれぞれの原曲の著作者や、レコード会社などがもつ権利を侵害するため、違法となります」

高木弁護士はこのように切り出した。どうしてそうなるのか、理由をくわしく教えてもらおう。

「ミックスCDには、素材となる原曲があります。原曲については、それぞれの作詞者・作曲者が著作権をもっています。

著作権は『公衆送信権』という権利を含んでいます。これは、『著作物を、放送・有線放送、インターネットなどで公開する権利』として、著作権者だけに認められているものです。

したがって、著作権者に無断でミックスCDの音源をネット公開することは、著作権を侵害することになります。

なお、実務上は、作詞・作曲者のもつ著作権は、音楽出版社に譲渡され、さらに、JASRACなどの著作権管理事業者に信託譲渡されていることが一般的です」

●「レコード会社」の権利侵害にもなる

「また、それぞれの原曲の音源を制作したレコード会社などは、原曲の音源について、『レコード製作者の著作隣接権』という権利をもっています。これは、レコード(音源)の製作に多額の費用をかけた製作者の利益を保護するため、認められている権利です

なじみのない言葉が続くかもしれませんが、この『レコード製作者の著作隣接権』は、『送信可能化権』という権利を含んでいます。これは簡単に言うと、『聴衆に届けるために、音源をネットのサーバーなどに置く権利』のことで、無断でミックスCDの音源をネット公開することは、レコード会社が持っているこの権利も侵害することになってしまいます」

●クラブ文化はどうなるのか?

DJが作ったミックスCDは、「著作物」とは認められないのだろうか?

「たしかにミックスCDも、楽曲のセレクトやミックスの方法などに創作性が認められれば、『編集著作物』として新たに著作権が発生する可能性はあります。

しかし、原曲の著作権・レコード製作者の著作隣接権を侵害していることには変わりありません。

ミックスCDは、原曲の宣伝効果があったためか、権利者に黙認されていた側面もあります。クラブミュージック自体、既存の音源を利用することにより発展してきたという経緯も、黙認されていた理由かもしれません」

こうした点は、法律や権利とは別に発展してきた「クラブ文化」といってよさそうだ。今後もこうした文化は続いていくのだろうか?

「そこはいま、まさに注目されているポイントです。

現段階では、著作権や著作隣接権の侵害は、権利者の告訴がなければ起訴されない『親告罪』です。これまで『違法』と説明してきましたが、権利者が黙認しさえすれば、刑事事件にはなりません。

しかし最近、この著作権法違反を『非親告罪化』しようとする動きが出てきています。非親告罪化されるということは、権利者が告訴しなくても、刑事事件になる可能性が出てくるということです。もしそうなれば、クラブ文化にどんな影響があるのか、大きな注目を浴びているのです」

(弁護士ドットコムニュース)

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